84 / 123
84 満足の朝
しおりを挟む
*微妙に背後注意です
翌朝痛む体で昼を迎えた春輝は、起き上がろうとしたところで違和感に気が付いた。がっしりと背後からガベルトゥスに抱き込まれているのはいつものことだが、それ以上に感じる違和感。
その正体はなんだと眉間に皺を作りながら探せば、ピタリとくっついた下半身同士に気が付いた。
霞んでいた頭がさっと冴えていく。ガベルトゥスの質量を持ったそれが、未だ春輝の中に入り込んでいたのだ。
僅かにでも体を動かせば、明け方まで散々嬲られ後孔が微かな刺激にも快楽を拾おうとして震えてしまう。
ぐっと眉を寄せ抜け出そうと試みるが、やはり抜け出せはしなかった。諦めたように春輝は力を抜きベッドに沈み込む。
体中に付けられた歯形はガベルトゥスの所有欲の表れなのだろうが、血が出る程に噛まれあちこちが痛くて仕方がない。
だが、と春輝は思う。春輝の嫉妬を感じ取り、それを塗りつぶさんほどに求められれば溜飲も下がると言う物だった。
情事の最中ギラつくガベルトゥスの目が、ただただ春輝自身に注がれるのが堪らない。歪んだものをぶつけても返ってくると言うのは奇跡に近い。
純粋無垢な妹には決して向けられはしない物を、遠慮なくぶつけられる安心感は春輝には心地が良すぎる。まるで親に甘える子供のようだと思わなくはないが。
「おい、いい加減起きろ」
「なんだ、もう起きたのか?」
くぐもった色気のある声にぞくりとし、思わず腰が重たくなる感覚が駆けた。
「早くそれを抜け」
「んん? わからせるためにはまだ足りないんじゃないのか?」
「んっんあ、っとに早く抜けって」
硬度を増したそれで中をぐりっと突かれ、思わず甘い声が漏れた。抗議するように振り返り睨みつけるが、ガベルトゥスはどこ吹く風だ。
そのまま弱い所を緩慢な動きで擦られてしまえば、寝て冷めた熱はすぐにぶり返した。耳元で聞こえる気怠く熱い吐息が更に春輝を高め、あっけなく果てる。
とんだ寝起きに春輝の機嫌は急降下したが、対照的にガベルトゥスは上機嫌だ。呆れを多分に含んだ溜息を漏らしながら、春輝は早々にベッドから抜け出しシャワーを浴び着替えた。
部屋に戻れば、既にトビアスとトゥーラが控え昼食の準備が終わっていた。ガベルトゥスはと言えば、ガウンをゆるく羽織った姿で寛いでいる。
「ハルキ、さっそくアイツがこれを持ってきたぞ」
ことりとテーブルに置かれた小さな箱に、春輝はなんとはなしに手に取ることを躊躇ってしまいガベルトゥスに問いかける。
「中身は?」
「王女が産んだ虫だとさ」
春輝は思わず伸ばした手を引っ込め、トビアスに視線を向ければその箱はすぐに回収され、目の届かない場所へとしまわれた。
「危うく飯の前に見るところだっただろうが」
「凄かったぞ、新しい妖精は。なぁトビアス」
「えぇそうですね、前のより大きさも形も気持ちの悪さが増してましたね」
「あれが増えてると思うと怖いですね。それでなくとも領地に居たような妖精は沢山いるでしょうし」
止めようにも繰り広げられる会話に、春輝は諦めたように目の前の食事に手を付けた。
トゥーラは王都に来てから度々偵察で居なくなる。今日珍しく昼食の場に居るのは諸々の報告を兼ねてなのだろうから会話を止めることはできない。
教会はやはり表向きおかしい所はまるでないようだ。出入りしている人間を注意深く観察しても、やはり精霊族とただの人間との見分けがつかない。
しかし王宮の人間をよくよく見ていれば、オーバンのように妖精の粉を吸っている者達が居るようだった。
みな一様に国の中枢に関わる文官や、中には高位貴族も含まれているようだった。洗脳され使われているのだろう。
精霊族に支配されているのだろうこの国は、やはり全てを消した方が良いと春輝は決意を更に深めた。
「ハルキ殿、あの箱はどうしますか」
春輝達が食べ終えれば、トビアスが元々離宮で用意されていた昼食を暖炉で燃やしている所だった。サイモンから齎された妖精を一緒に燃やそうとしてくれているのだろう。
しかし春輝はそんなトビアスを止め、虫が死なないように瓶に移させた。箱のままでもいいのだが、アルバロは瓶に入れ保管していたようだったので、それが適切なのかもしれないと思ったが故の指示だ。
「そんな物どうするんだ。まさか飼うのか?」
「まぁ、結果的にそうなるか? できるだけその虫を集めておいたら後で使えそうだと思ったんだよ。あぁトビアス、瓶に布でもかけて見えない所に保管しておいて」
怪訝そうな顔をする三人に、春輝は意味深に笑みを向け食後の紅茶を飲むばかりだった。
翌朝痛む体で昼を迎えた春輝は、起き上がろうとしたところで違和感に気が付いた。がっしりと背後からガベルトゥスに抱き込まれているのはいつものことだが、それ以上に感じる違和感。
その正体はなんだと眉間に皺を作りながら探せば、ピタリとくっついた下半身同士に気が付いた。
霞んでいた頭がさっと冴えていく。ガベルトゥスの質量を持ったそれが、未だ春輝の中に入り込んでいたのだ。
僅かにでも体を動かせば、明け方まで散々嬲られ後孔が微かな刺激にも快楽を拾おうとして震えてしまう。
ぐっと眉を寄せ抜け出そうと試みるが、やはり抜け出せはしなかった。諦めたように春輝は力を抜きベッドに沈み込む。
体中に付けられた歯形はガベルトゥスの所有欲の表れなのだろうが、血が出る程に噛まれあちこちが痛くて仕方がない。
だが、と春輝は思う。春輝の嫉妬を感じ取り、それを塗りつぶさんほどに求められれば溜飲も下がると言う物だった。
情事の最中ギラつくガベルトゥスの目が、ただただ春輝自身に注がれるのが堪らない。歪んだものをぶつけても返ってくると言うのは奇跡に近い。
純粋無垢な妹には決して向けられはしない物を、遠慮なくぶつけられる安心感は春輝には心地が良すぎる。まるで親に甘える子供のようだと思わなくはないが。
「おい、いい加減起きろ」
「なんだ、もう起きたのか?」
くぐもった色気のある声にぞくりとし、思わず腰が重たくなる感覚が駆けた。
「早くそれを抜け」
「んん? わからせるためにはまだ足りないんじゃないのか?」
「んっんあ、っとに早く抜けって」
硬度を増したそれで中をぐりっと突かれ、思わず甘い声が漏れた。抗議するように振り返り睨みつけるが、ガベルトゥスはどこ吹く風だ。
そのまま弱い所を緩慢な動きで擦られてしまえば、寝て冷めた熱はすぐにぶり返した。耳元で聞こえる気怠く熱い吐息が更に春輝を高め、あっけなく果てる。
とんだ寝起きに春輝の機嫌は急降下したが、対照的にガベルトゥスは上機嫌だ。呆れを多分に含んだ溜息を漏らしながら、春輝は早々にベッドから抜け出しシャワーを浴び着替えた。
部屋に戻れば、既にトビアスとトゥーラが控え昼食の準備が終わっていた。ガベルトゥスはと言えば、ガウンをゆるく羽織った姿で寛いでいる。
「ハルキ、さっそくアイツがこれを持ってきたぞ」
ことりとテーブルに置かれた小さな箱に、春輝はなんとはなしに手に取ることを躊躇ってしまいガベルトゥスに問いかける。
「中身は?」
「王女が産んだ虫だとさ」
春輝は思わず伸ばした手を引っ込め、トビアスに視線を向ければその箱はすぐに回収され、目の届かない場所へとしまわれた。
「危うく飯の前に見るところだっただろうが」
「凄かったぞ、新しい妖精は。なぁトビアス」
「えぇそうですね、前のより大きさも形も気持ちの悪さが増してましたね」
「あれが増えてると思うと怖いですね。それでなくとも領地に居たような妖精は沢山いるでしょうし」
止めようにも繰り広げられる会話に、春輝は諦めたように目の前の食事に手を付けた。
トゥーラは王都に来てから度々偵察で居なくなる。今日珍しく昼食の場に居るのは諸々の報告を兼ねてなのだろうから会話を止めることはできない。
教会はやはり表向きおかしい所はまるでないようだ。出入りしている人間を注意深く観察しても、やはり精霊族とただの人間との見分けがつかない。
しかし王宮の人間をよくよく見ていれば、オーバンのように妖精の粉を吸っている者達が居るようだった。
みな一様に国の中枢に関わる文官や、中には高位貴族も含まれているようだった。洗脳され使われているのだろう。
精霊族に支配されているのだろうこの国は、やはり全てを消した方が良いと春輝は決意を更に深めた。
「ハルキ殿、あの箱はどうしますか」
春輝達が食べ終えれば、トビアスが元々離宮で用意されていた昼食を暖炉で燃やしている所だった。サイモンから齎された妖精を一緒に燃やそうとしてくれているのだろう。
しかし春輝はそんなトビアスを止め、虫が死なないように瓶に移させた。箱のままでもいいのだが、アルバロは瓶に入れ保管していたようだったので、それが適切なのかもしれないと思ったが故の指示だ。
「そんな物どうするんだ。まさか飼うのか?」
「まぁ、結果的にそうなるか? できるだけその虫を集めておいたら後で使えそうだと思ったんだよ。あぁトビアス、瓶に布でもかけて見えない所に保管しておいて」
怪訝そうな顔をする三人に、春輝は意味深に笑みを向け食後の紅茶を飲むばかりだった。
11
お気に入りに追加
366
あなたにおすすめの小説
魔王様が子供化したので勇者の俺が責任持って育てたらいつの間にか溺愛されてるみたい
カミヤルイ
BL
顔だけが取り柄の勇者の血を引くジェイミーは、民衆を苦しめていると噂の魔王の討伐を指示され、嫌々家を出た。
ジェイミーの住む村には実害が無い為、噂だけだろうと思っていた魔王は実在し、ジェイミーは為すすべなく倒れそうになる。しかし絶体絶命の瞬間、雷が魔王の身体を貫き、目の前で倒れた。
それでも剣でとどめを刺せない気弱なジェイミーは、魔王の森に来る途中に買った怪しい薬を魔王に使う。
……あれ?小さくなっちゃった!このまま放っておけないよ!
そんなわけで、魔王様が子供化したので子育てスキル0の勇者が連れて帰って育てることになりました。
でも、いろいろありながらも成長していく魔王はなんだかジェイミーへの態度がおかしくて……。
時々シリアスですが、ふわふわんなご都合設定のお話です。
こちらは2021年に創作したものを掲載しています。
初めてのファンタジーで右往左往していたので、設定が甘いですが、ご容赦ください
素敵な表紙は漫画家さんのミミさんにお願いしました。
@Nd1KsPcwB6l90ko
アンチに悩んでいた高校生インフルエンサーのおれ、どうやらヤバい奴に相談してしまったようです
大圃(おおはた)
BL
高校生ながら動画で有名になっているふたりのインフルエンサーのお話。
執着攻めの短編。キスまでのゆるーいBLです。
【あらすじ】
歌やダンスが得意で小さな事務所に所属している高校生インフルエンサーの相野陽向(16)は急に増えたアンチコメントと誹謗中傷に頭を悩ませている。幼馴染から「ほかのクラスに個人でやってる弾き語り系の配信者がいる」と聞いた陽向は5組の南海斗(16)のもとを訪れ、アンチについて相談。しっかり対応してくれた彼といっしょにコラボ動画を撮るなど、次第に仲良くなっていくふたりだが、ある日、陽向は屋上で海斗に関する衝撃の事実を知ってしまい――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
[完結]嫁に出される俺、政略結婚ですがなんかイイ感じに収まりそうです。
BBやっこ
BL
実家は商家。
3男坊の実家の手伝いもほどほど、のんべんだらりと暮らしていた。
趣味の料理、読書と交友関係も少ない。独り身を満喫していた。
そのうち、結婚するかもしれないが大した理由もないんだろうなあ。
そんなおれに両親が持ってきた結婚話。というか、政略結婚だろ?!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる