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75 居住区2
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緑色の大きな繭が部屋の中で、ひしめくようにぶら下がる様は気味が悪い。異様な光景に皆が口を閉ざした。
「気色悪い」
「中に入っているんでしょうか」
「そうだと思うけど……あぁアレみたいじゃないかガイル」
「ハルキもそう思うか? まさか異世界で見るとは思わなかった。アレだろう?」
「「エイリアン」」
見事に声が合わさった二人を、トビアスとトゥーラが訝し気に見てくる。春輝とガベルトゥス顔を見合わせ、くすくすと緊張感なく笑い合った。
「お二人が元居た世界にもあったんですか?」
「いいや? 想像上の物であったな」
「異世界からじゃなくて、他の星から生命体が攻めてくるんだよ。それの卵が大体こんな気持ち悪いやつなんだ。なぁガイル、これが卵だと思うか?」
「エイリアンだったらそう考えるのが妥当だろうが……」
春輝は自分で言ったことを想像し、急に胃液がせり上がってきた。胚を体の中に作られている身としては、もしかしたら目の前の物を産まされる可能性があるのだ。
急に顔色を悪くし、口元を抑える春輝の肩を抱き寄せてきたガベルトゥスにの温かさに少しだけホッとする。
「トビアス、これは卵だと思うか?」
「いえ、これは精霊族が眠るための繭です。中を開けばわかりますよ、普段働いている使用人が出てくるはずです」
トビアスの言葉に一瞬安心した春輝だったが、しかしすぐに顔色を元に戻した。
エイリアンと似たようなものであるならば海外の映画でよくあるように、生まれる時は腹を食い破って出てくると言う可能性もある。それを想像してしまった春輝は、ギリッと胃が縮こまり痛みを与えてきた。
「腹を食い破って出てくる方か……?」
「あぁ、そのパターンもあったな。どうだトビアス」
「……ハルキ殿らの世界はとんでもなく恐ろしいですね。普通に生まれてくるはずですよ、ドラゴンの知識が正しくあれば。出てくるのは卵のようですが」
「あぁそっちか……」
「気持ち悪い……」
そこまで映画に詳しくない二人だが、地球外生命体のそういったシーンは少なくないぐらいには知っていた。
恐怖を求めて作られるバリエーションに富んだ設定にぞわりとしたものだが、いざ自分の身に現実となって降りかかってくるとなればその恐怖はひとしおだ。
いつの間にかガベルトゥスに抱き込まれていた春輝だが、早まる鼓動と冷や汗を何度も深呼吸をして納める。
なんとか沸き上がる嫌悪感と恐怖を押し込め顔を上げれば、心配そうに春輝を見るトビアスとトゥーラの姿があった。
「大丈夫だ、そうならないようにこいつらを殺すんだろう?」
「そうだな、早くやろう」
トゥーラが部屋に足を踏み入れれば、粘着質な液体が靴の裏に張り付いた。ねちゃりねちゃりと進む度に聞こえる音に、足元から鳥肌がざわざわと這い上がる。
確認のためにとトゥーラが短剣を懐から取り出し、近くの繭に突き立てる。そのまま下へと引いていけば、中から床に広がる液体と同じであろう半透明の緑の液体が溢れ出しバタバタと落ちていく。
「……うっ、ガイル、もうこいつら本当にエイリアンなんじゃないか?」
「ここまでくるとそう考えた方がしっくりくるなぁ……血もこの液体も緑だしな」
切り口からは裸のままの女が目を瞑ったまま入っているのが見えた。流石のガベルトゥスも気持ちが悪いのか、無意識に腕を擦っていた。
トゥーラはそのまま何個かの繭を切り開き中身を確認していく。どれもこれも中に入っているのは当然の如く、この屋敷で働く使用人達だ。
他の部屋も同じように確認していく。アルバロはこの使用人達のトップと言うこともあり、部屋は一人部屋のようだった。
トビアスとトゥーラが書斎であろう部屋を隅々までひっくり返し、重要な物が無いかと探す。
レターケースの中には大量の手紙が入っており、送り主は全てジェンツからだった。内容は春輝の洗脳の進み具合や、どのように過ごしているかといったを聞いてくるもの。
側に置かれているアルバロが書いているであろう分厚い本の中には、春輝が来てからの様子が克明に書かれていた。
本棚には歴代の勇者の名前が背表紙に書かれた本が並ぶ。中を開けばどれも同じように観察され、洗脳具合が掛かれていた。まるで観察日記だ。
「なにを見てるんだ」
「お前の観察日記」
春輝はずらりと並ぶ本の中から、すぐにガベルトゥスの物を見つけていた。ぺらりと捲れば、本の分厚さとは対照的に中の記述は数十ページで終わってしまう。
「ほとんど書かれてない」
「言っただろう、ここからすぐに出たんだ」
「あぁそうだった」
「お二人とも、これを」
二人が観察日記気を取られている間、真面目に家探しをしていたトビアスから声がかかる。
ごとんと机の上に置かれたのは巨大な瓶。その中には大量の透明な羽が生えた生き物がひしめき合っていた。
「気色悪い」
「中に入っているんでしょうか」
「そうだと思うけど……あぁアレみたいじゃないかガイル」
「ハルキもそう思うか? まさか異世界で見るとは思わなかった。アレだろう?」
「「エイリアン」」
見事に声が合わさった二人を、トビアスとトゥーラが訝し気に見てくる。春輝とガベルトゥス顔を見合わせ、くすくすと緊張感なく笑い合った。
「お二人が元居た世界にもあったんですか?」
「いいや? 想像上の物であったな」
「異世界からじゃなくて、他の星から生命体が攻めてくるんだよ。それの卵が大体こんな気持ち悪いやつなんだ。なぁガイル、これが卵だと思うか?」
「エイリアンだったらそう考えるのが妥当だろうが……」
春輝は自分で言ったことを想像し、急に胃液がせり上がってきた。胚を体の中に作られている身としては、もしかしたら目の前の物を産まされる可能性があるのだ。
急に顔色を悪くし、口元を抑える春輝の肩を抱き寄せてきたガベルトゥスにの温かさに少しだけホッとする。
「トビアス、これは卵だと思うか?」
「いえ、これは精霊族が眠るための繭です。中を開けばわかりますよ、普段働いている使用人が出てくるはずです」
トビアスの言葉に一瞬安心した春輝だったが、しかしすぐに顔色を元に戻した。
エイリアンと似たようなものであるならば海外の映画でよくあるように、生まれる時は腹を食い破って出てくると言う可能性もある。それを想像してしまった春輝は、ギリッと胃が縮こまり痛みを与えてきた。
「腹を食い破って出てくる方か……?」
「あぁ、そのパターンもあったな。どうだトビアス」
「……ハルキ殿らの世界はとんでもなく恐ろしいですね。普通に生まれてくるはずですよ、ドラゴンの知識が正しくあれば。出てくるのは卵のようですが」
「あぁそっちか……」
「気持ち悪い……」
そこまで映画に詳しくない二人だが、地球外生命体のそういったシーンは少なくないぐらいには知っていた。
恐怖を求めて作られるバリエーションに富んだ設定にぞわりとしたものだが、いざ自分の身に現実となって降りかかってくるとなればその恐怖はひとしおだ。
いつの間にかガベルトゥスに抱き込まれていた春輝だが、早まる鼓動と冷や汗を何度も深呼吸をして納める。
なんとか沸き上がる嫌悪感と恐怖を押し込め顔を上げれば、心配そうに春輝を見るトビアスとトゥーラの姿があった。
「大丈夫だ、そうならないようにこいつらを殺すんだろう?」
「そうだな、早くやろう」
トゥーラが部屋に足を踏み入れれば、粘着質な液体が靴の裏に張り付いた。ねちゃりねちゃりと進む度に聞こえる音に、足元から鳥肌がざわざわと這い上がる。
確認のためにとトゥーラが短剣を懐から取り出し、近くの繭に突き立てる。そのまま下へと引いていけば、中から床に広がる液体と同じであろう半透明の緑の液体が溢れ出しバタバタと落ちていく。
「……うっ、ガイル、もうこいつら本当にエイリアンなんじゃないか?」
「ここまでくるとそう考えた方がしっくりくるなぁ……血もこの液体も緑だしな」
切り口からは裸のままの女が目を瞑ったまま入っているのが見えた。流石のガベルトゥスも気持ちが悪いのか、無意識に腕を擦っていた。
トゥーラはそのまま何個かの繭を切り開き中身を確認していく。どれもこれも中に入っているのは当然の如く、この屋敷で働く使用人達だ。
他の部屋も同じように確認していく。アルバロはこの使用人達のトップと言うこともあり、部屋は一人部屋のようだった。
トビアスとトゥーラが書斎であろう部屋を隅々までひっくり返し、重要な物が無いかと探す。
レターケースの中には大量の手紙が入っており、送り主は全てジェンツからだった。内容は春輝の洗脳の進み具合や、どのように過ごしているかといったを聞いてくるもの。
側に置かれているアルバロが書いているであろう分厚い本の中には、春輝が来てからの様子が克明に書かれていた。
本棚には歴代の勇者の名前が背表紙に書かれた本が並ぶ。中を開けばどれも同じように観察され、洗脳具合が掛かれていた。まるで観察日記だ。
「なにを見てるんだ」
「お前の観察日記」
春輝はずらりと並ぶ本の中から、すぐにガベルトゥスの物を見つけていた。ぺらりと捲れば、本の分厚さとは対照的に中の記述は数十ページで終わってしまう。
「ほとんど書かれてない」
「言っただろう、ここからすぐに出たんだ」
「あぁそうだった」
「お二人とも、これを」
二人が観察日記気を取られている間、真面目に家探しをしていたトビアスから声がかかる。
ごとんと机の上に置かれたのは巨大な瓶。その中には大量の透明な羽が生えた生き物がひしめき合っていた。
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