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92 暗闇の中2
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アガットの部屋から抜け出したフェリチアーノは、周囲を警戒しながら屋敷の中をさ迷い歩いていた。
マティアスを警戒しながらの移動は思いの他辛く、なかなか出口まで辿り着く事が出来ない。頭も痛み、体も痛み、そして恐怖に震え、フェリチアーノの精神は限界だった。
それでも尚諦めずに歩き続けるのは、テオドールに会いたいその一心だった。こんな悪夢のような現実から、早くあの温かい腕の中に戻りたくて堪らなかった。
既に無い刺青の場所を撫でながら、フェリチアーノは必死で出口へと向かおうと歩みを進めた。
なかなかフェリチアーノが見つからない事に、最初は楽しんでいたマティアスだったが次第に苛立ち始める。
何かいい方法は無いかと考え、辺りに視線を巡らすとランプが目につきにたりと笑んだ。
上機嫌に鼻歌を歌いながら、ランプの中にある液体をまき散らし始める。カシュッとマッチに火をつけたマティアスは、ちらちらと燃える小さな火をうっとりする様に見た後、液体の上へとぽとりと落とす。
途端に燃え広がった炎は勢いを増していく。それを見たマティアスはランプを見つけては手当たり壊し液体をばら撒くと、躊躇いも無く火をつけて行った。
暗闇に包まれていた屋敷は、マティアスの行動により火と煙に包まれていく。
漸く出口に辿り着けると思ったフェリチアーノは、行く先から火の手が上がっているのを目にし愕然とした。
元来た道を戻ろうにも、マティアスの声がそちらの方から聞こえてくる為戻る事も出来ず、火とマティアスに挟み撃ちにされた状態になってしまった。
煙は酷くなる一方で、次第に呼吸がし辛くなって来る。再び朦朧とし始める意識の中で、ふとマティアスの声が近くにある事に気が付いた。
振り向くとその距離は思った程開いてはおらず、心臓が痛いくらいに鼓動を早め脳は警告音を発する。
じりじりと見つめあっている中で、先に動いたのはマティアスだった。走り込んでくるその姿に我に返ったフェリチアーノは、近くの扉を開け中に急いで入り鍵を掛ける。
その直後にガチャガチャとドアノブが動かされ、間一髪と言ったところだった。
しかしマティアスはそれでは諦めず、近くにあった椅子を手に持つと、勢いよく扉にぶつけ、破壊しようとしだすのだ。
ガンガンと叩き付けられる音に、フェリチアーノは震えあがる。どこかに逃げ場所は無いだろうかと視線を彷徨わせるが、部屋の中には他に扉は無い。あるのは窓だけだった。
カーテンをゆっくりと開き外を確認する。フェリチアーノが今居る場所は二階だった。ごくりと唾を飲み込み、窓に手を掛ける。
下に上手く飛び降りられるだろうかと迷いが生じるが、すぐに扉をこじ開けようとする音が聞こえ、恐怖心を押さえつけながら窓枠に足を掛け、土砂降りの雨の中外へと身を投げた。
ぬかるんだ土で上手く着地が出来ずに、足を挫いてしまい痛みに蹲っていると、部屋の方から扉が壊された音が聞こえて来た。
雨に打ちつけられながら上を見やれば、丁度マティアスが窓際に立ちこちらを見ていた。
逃げなければと、痛む足を引きずり何度も土に足を取られながらも、庭を進み始めた。
後ろを振り返らずにひたすら歩き続けるフェリチアーノは、痛みに顔を歪ませ涙なのか雨なのか分からないもので濡れている。
どんどんと上がる息に、痛みも加わり、一体どこへ向かって歩けばいいのかもわからなくなっていた。
とにかく逃げなければと言う思いだけが先行し、足をただただ動かすばかり。激しい雨に体温も奪われ始め、体の震えも止まらなくなってきた。
「テオ、テオっ」
震える声で小さくテオドールの名を呟きながら歩いていれば、背後から急に腕を掴まれ、口を塞がれた。
マティアスを警戒しながらの移動は思いの他辛く、なかなか出口まで辿り着く事が出来ない。頭も痛み、体も痛み、そして恐怖に震え、フェリチアーノの精神は限界だった。
それでも尚諦めずに歩き続けるのは、テオドールに会いたいその一心だった。こんな悪夢のような現実から、早くあの温かい腕の中に戻りたくて堪らなかった。
既に無い刺青の場所を撫でながら、フェリチアーノは必死で出口へと向かおうと歩みを進めた。
なかなかフェリチアーノが見つからない事に、最初は楽しんでいたマティアスだったが次第に苛立ち始める。
何かいい方法は無いかと考え、辺りに視線を巡らすとランプが目につきにたりと笑んだ。
上機嫌に鼻歌を歌いながら、ランプの中にある液体をまき散らし始める。カシュッとマッチに火をつけたマティアスは、ちらちらと燃える小さな火をうっとりする様に見た後、液体の上へとぽとりと落とす。
途端に燃え広がった炎は勢いを増していく。それを見たマティアスはランプを見つけては手当たり壊し液体をばら撒くと、躊躇いも無く火をつけて行った。
暗闇に包まれていた屋敷は、マティアスの行動により火と煙に包まれていく。
漸く出口に辿り着けると思ったフェリチアーノは、行く先から火の手が上がっているのを目にし愕然とした。
元来た道を戻ろうにも、マティアスの声がそちらの方から聞こえてくる為戻る事も出来ず、火とマティアスに挟み撃ちにされた状態になってしまった。
煙は酷くなる一方で、次第に呼吸がし辛くなって来る。再び朦朧とし始める意識の中で、ふとマティアスの声が近くにある事に気が付いた。
振り向くとその距離は思った程開いてはおらず、心臓が痛いくらいに鼓動を早め脳は警告音を発する。
じりじりと見つめあっている中で、先に動いたのはマティアスだった。走り込んでくるその姿に我に返ったフェリチアーノは、近くの扉を開け中に急いで入り鍵を掛ける。
その直後にガチャガチャとドアノブが動かされ、間一髪と言ったところだった。
しかしマティアスはそれでは諦めず、近くにあった椅子を手に持つと、勢いよく扉にぶつけ、破壊しようとしだすのだ。
ガンガンと叩き付けられる音に、フェリチアーノは震えあがる。どこかに逃げ場所は無いだろうかと視線を彷徨わせるが、部屋の中には他に扉は無い。あるのは窓だけだった。
カーテンをゆっくりと開き外を確認する。フェリチアーノが今居る場所は二階だった。ごくりと唾を飲み込み、窓に手を掛ける。
下に上手く飛び降りられるだろうかと迷いが生じるが、すぐに扉をこじ開けようとする音が聞こえ、恐怖心を押さえつけながら窓枠に足を掛け、土砂降りの雨の中外へと身を投げた。
ぬかるんだ土で上手く着地が出来ずに、足を挫いてしまい痛みに蹲っていると、部屋の方から扉が壊された音が聞こえて来た。
雨に打ちつけられながら上を見やれば、丁度マティアスが窓際に立ちこちらを見ていた。
逃げなければと、痛む足を引きずり何度も土に足を取られながらも、庭を進み始めた。
後ろを振り返らずにひたすら歩き続けるフェリチアーノは、痛みに顔を歪ませ涙なのか雨なのか分からないもので濡れている。
どんどんと上がる息に、痛みも加わり、一体どこへ向かって歩けばいいのかもわからなくなっていた。
とにかく逃げなければと言う思いだけが先行し、足をただただ動かすばかり。激しい雨に体温も奪われ始め、体の震えも止まらなくなってきた。
「テオ、テオっ」
震える声で小さくテオドールの名を呟きながら歩いていれば、背後から急に腕を掴まれ、口を塞がれた。
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