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67.金鉱山を狙うんじゃないの?!
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アベニウス王国が狙うのは、宮廷占い師と王家直轄の金鉱山。王宮を狙うのは地理的条件で難しい上、警護も厳しい。となれば、まず襲われるのは――。
「なんでこっちに来るのかなぁ、もう!!」
ある程度予想の範囲内とはいえ、普通は距離の近い子爵領の金鉱山を狙うはず。プルシアイネン侯爵領は遠いし、何より私を攫っても殺しても、金鉱山ほどの旨みはない。なのにこちらへ突撃してきた。
複数の暗殺者が送り込まれた屋敷内は大混乱、私はハンナに手を引かれて走っていた。
「お嬢様、うるさいです。黙ってください」
「ごめん」
エルヴィ様はヘンリと共に、一階の隠し部屋にいる。というのも、執事が教えてくれたのよ。全員で隠れるには狭いので、私達は別の部屋に移動し始めたところ、襲撃の一報が入った。
抜いた剣を握る副団長は、まずハンナの手を握った。そのハンナが私と手を繋ぐ。これは……あれだ。ハンナが手を離したら、私が犠牲になるパターンに違いない。悲鳴や剣戟の音が聞こえる方角を避けて、屋敷の中心へ向かった。
ちなみに階下にお姫様を隠しているので、私達は二階を走り回っている。途中で見つけた階段は、切り捨てられた暗殺者の死体が転がる。染み抜きの心配をしながら、小部屋の中に押し込まれた。二人で転がるように座った床は暗い。
「この部屋……」
「しぃ」
ハンナに口を押さえられ、慌てて声を殺した。この部屋が暗いのは、窓がないからだ。今夜は月が明るく、照明がなくても物の判別がつくほどだった。明るい廊下から入ったせいで、いまは何も見えない。目が慣れるのを待って、ようやく状況を把握した。
物置かと思ったが、どうやら違うらしい。小さなソファーをぼんやり確認し、手探りで近づいた。手を繋ぐハンナと二人で座る。高位貴族の屋敷には、緊急時に避難する部屋があると聞いた。ここがそうなのかも。頑丈そうな扉だけど、小さな割れ目がある。
割れ目から入る光は眩しい。壁の棚にある袋に触れれば、金属の音がした。ぼんやりと見える長細い物は、武器かも。きょろきょろと見回す私の隣で、ハンナは大きく息を吐いた。窓から襲撃犯が飛び込むことはないので、ひとまず安心だ。
おそらく扉の近くで、エサイアス様が守っているだろう。襲撃の一報で、援軍も来る。プルシアイネン侯爵家は衛兵や騎士を抱えているから、今頃は撃退したかも。
「私です」
エサイアス様の声に、ハンナが扉の隙間から外を確認する。割れ目に人影がかかったのか、室内が一層暗くなった。細く開いた扉の先で、エサイアス様が何かを告げた。聞いたハンナが振り返る。
「お嬢様、援軍です。もう大丈夫ですね」
「よかったぁ」
安堵の息を吐いて、扉に向かう。細く開いた隙間から見える光が、ゆらりと動いた。
「後ろ!」
誰かがいる! 叫んだ私は咄嗟にハンナを突き飛ばし、その勢いで扉を閉めた。エサイアス様は騎士だし、武器があるから平気よね?
「なんでこっちに来るのかなぁ、もう!!」
ある程度予想の範囲内とはいえ、普通は距離の近い子爵領の金鉱山を狙うはず。プルシアイネン侯爵領は遠いし、何より私を攫っても殺しても、金鉱山ほどの旨みはない。なのにこちらへ突撃してきた。
複数の暗殺者が送り込まれた屋敷内は大混乱、私はハンナに手を引かれて走っていた。
「お嬢様、うるさいです。黙ってください」
「ごめん」
エルヴィ様はヘンリと共に、一階の隠し部屋にいる。というのも、執事が教えてくれたのよ。全員で隠れるには狭いので、私達は別の部屋に移動し始めたところ、襲撃の一報が入った。
抜いた剣を握る副団長は、まずハンナの手を握った。そのハンナが私と手を繋ぐ。これは……あれだ。ハンナが手を離したら、私が犠牲になるパターンに違いない。悲鳴や剣戟の音が聞こえる方角を避けて、屋敷の中心へ向かった。
ちなみに階下にお姫様を隠しているので、私達は二階を走り回っている。途中で見つけた階段は、切り捨てられた暗殺者の死体が転がる。染み抜きの心配をしながら、小部屋の中に押し込まれた。二人で転がるように座った床は暗い。
「この部屋……」
「しぃ」
ハンナに口を押さえられ、慌てて声を殺した。この部屋が暗いのは、窓がないからだ。今夜は月が明るく、照明がなくても物の判別がつくほどだった。明るい廊下から入ったせいで、いまは何も見えない。目が慣れるのを待って、ようやく状況を把握した。
物置かと思ったが、どうやら違うらしい。小さなソファーをぼんやり確認し、手探りで近づいた。手を繋ぐハンナと二人で座る。高位貴族の屋敷には、緊急時に避難する部屋があると聞いた。ここがそうなのかも。頑丈そうな扉だけど、小さな割れ目がある。
割れ目から入る光は眩しい。壁の棚にある袋に触れれば、金属の音がした。ぼんやりと見える長細い物は、武器かも。きょろきょろと見回す私の隣で、ハンナは大きく息を吐いた。窓から襲撃犯が飛び込むことはないので、ひとまず安心だ。
おそらく扉の近くで、エサイアス様が守っているだろう。襲撃の一報で、援軍も来る。プルシアイネン侯爵家は衛兵や騎士を抱えているから、今頃は撃退したかも。
「私です」
エサイアス様の声に、ハンナが扉の隙間から外を確認する。割れ目に人影がかかったのか、室内が一層暗くなった。細く開いた扉の先で、エサイアス様が何かを告げた。聞いたハンナが振り返る。
「お嬢様、援軍です。もう大丈夫ですね」
「よかったぁ」
安堵の息を吐いて、扉に向かう。細く開いた隙間から見える光が、ゆらりと動いた。
「後ろ!」
誰かがいる! 叫んだ私は咄嗟にハンナを突き飛ばし、その勢いで扉を閉めた。エサイアス様は騎士だし、武器があるから平気よね?
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