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246.全然平気じゃなかった
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朝はゆっくり起きた。昨日のお肉や鍋が残ってるから、狩りをしなくていいしご飯も温めるだけなの。起きてテントから出たら、フェル達が顔を舐めてくれた。まだ顔を洗ってないからダメなんだよ。そういって押しのけたけど、子狼がしがみ付いて舐められちゃった。この子は今年生まれた子なんだって。ボリスと同じ年ってことかな。
みんなと挨拶して、僕はフェルに尋ねた。
「昨日の夜は、どこに行ってたの?」
お呪いを始めるぞ、ってセティが僕を抱っこしたら何処かに出掛けてた。ちらっとセティを見て、フェルが鼻を鳴らす。僕には分からないけど、セティは通じたみたい。上を向いたり下を見たり忙しくした後、ぼそっと教えてくれた。
「川に血を洗いに行ってたらしいぞ」
ふーん、そんなの隠さなくてもいいのにね。変なセティ、フェルに似たぬいぐるみを横に置いて、僕は鍋の火を見守る。これは狼さんが苦手な仕事だから、僕の担当なの。フォンが転がり落ちないように、きちんと石でガードした。夜露で濡れた草が乾いてきた頃、鍋がぐつぐつと音を立てる。
「セティ、煮えた」
「おう! 危ないから触るなよ」
テントを畳むセティに頷き、僕は音と一緒に動く蓋が気になって手を伸ばした。触れる前に、がうっとフェルが僕の襟を噛んで引っ張る。ごろんと後ろに転がりながらフェルを見上げ、唸るフェルを見つめた。僕が火傷すると思ったの?
「ありがと、フェル。でも僕は大きくなったから、もう平気なんだよ」
「全然平気じゃない、よくやった、フェル」
セティが僕に拳をこつんと軽く当てて、火傷したら痛いんだと何度も言い聞かせた。分かってるし、気を付けるつもりだった。ゲリュオンがやるのを見てたから、僕も中を見るくらい出来る。そうしたら、セティが怖い顔で僕の手を掴んで鍋の上に持っていく。そっと蓋を開けるセティが見えなくなるくらい、白い湯気が広がった。
お風呂と同じ景色なのに、もっと熱い。びっくりして手を引っ込めようとしたら、その前にセティが僕を抱き締めた。
「わかったか? お前が思ってるより熱いんだ。フェルによく感謝しろ」
「うん……うん、ごめんなさい。フェルもありがとう」
驚いた。でも危ないのはよくわかったから、もう勝手に鍋の蓋に触らない。セティは僕を怒ってる? 嫌いになった? 不安になって顔を上げると、目のところや頬にキスが降ってきた。
「嫌いにならないが、心配はしてる。オレを殺せるのはお前くらいだぞ、イシス」
「僕、殺さないよ?」
なぜか額を押さえるセティが何かぶつぶつ言ってたけど、よく聞こえないの。その後ぎゅっとしてくれたから、僕は聞こえなくてもいいと思った。危ないことも怖いことも、セティが遠ざけてくれる。フェルもいるから、安心だね。
今日は夕方までにガイアの原始神殿に着くんだって。フェルの背中に乗って走る僕は、わくわくしながらセティの腕の中にいる。セティの胸のどきどきがいつもより早くて、僕のも同じに早くなった。久しぶりにトムやガイアと会える。
僕、ここでセティに食べられちゃうんだよね。ずっと一緒にいられるならいいや。
みんなと挨拶して、僕はフェルに尋ねた。
「昨日の夜は、どこに行ってたの?」
お呪いを始めるぞ、ってセティが僕を抱っこしたら何処かに出掛けてた。ちらっとセティを見て、フェルが鼻を鳴らす。僕には分からないけど、セティは通じたみたい。上を向いたり下を見たり忙しくした後、ぼそっと教えてくれた。
「川に血を洗いに行ってたらしいぞ」
ふーん、そんなの隠さなくてもいいのにね。変なセティ、フェルに似たぬいぐるみを横に置いて、僕は鍋の火を見守る。これは狼さんが苦手な仕事だから、僕の担当なの。フォンが転がり落ちないように、きちんと石でガードした。夜露で濡れた草が乾いてきた頃、鍋がぐつぐつと音を立てる。
「セティ、煮えた」
「おう! 危ないから触るなよ」
テントを畳むセティに頷き、僕は音と一緒に動く蓋が気になって手を伸ばした。触れる前に、がうっとフェルが僕の襟を噛んで引っ張る。ごろんと後ろに転がりながらフェルを見上げ、唸るフェルを見つめた。僕が火傷すると思ったの?
「ありがと、フェル。でも僕は大きくなったから、もう平気なんだよ」
「全然平気じゃない、よくやった、フェル」
セティが僕に拳をこつんと軽く当てて、火傷したら痛いんだと何度も言い聞かせた。分かってるし、気を付けるつもりだった。ゲリュオンがやるのを見てたから、僕も中を見るくらい出来る。そうしたら、セティが怖い顔で僕の手を掴んで鍋の上に持っていく。そっと蓋を開けるセティが見えなくなるくらい、白い湯気が広がった。
お風呂と同じ景色なのに、もっと熱い。びっくりして手を引っ込めようとしたら、その前にセティが僕を抱き締めた。
「わかったか? お前が思ってるより熱いんだ。フェルによく感謝しろ」
「うん……うん、ごめんなさい。フェルもありがとう」
驚いた。でも危ないのはよくわかったから、もう勝手に鍋の蓋に触らない。セティは僕を怒ってる? 嫌いになった? 不安になって顔を上げると、目のところや頬にキスが降ってきた。
「嫌いにならないが、心配はしてる。オレを殺せるのはお前くらいだぞ、イシス」
「僕、殺さないよ?」
なぜか額を押さえるセティが何かぶつぶつ言ってたけど、よく聞こえないの。その後ぎゅっとしてくれたから、僕は聞こえなくてもいいと思った。危ないことも怖いことも、セティが遠ざけてくれる。フェルもいるから、安心だね。
今日は夕方までにガイアの原始神殿に着くんだって。フェルの背中に乗って走る僕は、わくわくしながらセティの腕の中にいる。セティの胸のどきどきがいつもより早くて、僕のも同じに早くなった。久しぶりにトムやガイアと会える。
僕、ここでセティに食べられちゃうんだよね。ずっと一緒にいられるならいいや。
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