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247.トムに大好きを伝える
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前に来た時より、白い霧が多かった。前が見えない中腹で、フェルはお別れ。狼さん達の群れに戻るんだよね。皆によろしくね。抱き着いてそうお願いしたら、くーんと鼻を鳴らした。ちゃんと通じたみたい。またすぐに会えるし、お父さん達のところへ行くときは乗せて行ってと頼んだ。
振り返りながら山を下りるフェルを見送って、僕はセティと手を繋いだ。行方不明になるなよと笑うけど、前も手を繋いでたのにガイアに変わってた。今回もそんなことが起きるのかな? セティと離れたら怖いので、ぎゅっと腕にしがみ付く。本当は抱っこしてもらうと安心だけど、ここは山の上だから我慢だね。
前に見た神殿が出てきて、僕は迷わずに済んだみたい。ほっとしながらセティを振り返ったら、笑いながら頬を突かれる。
「安心しろ、ガイアじゃないぞ」
そんなの、今は思ってないもん。ちゃんと区別がつくんだから! ぽかっとセティの胸を叩いて頬を膨らませると、額にキスがもらえた。嬉しくて空気を抜いた頬にも、それから唇を重ねる。ちゅっと音がして、終わりの合図に目を開けた。
「……相変わらず、イシスが騙されてる」
「兄弟への久しぶりの挨拶がそれか?」
ガイアとセティの言葉は刺々しい響きなのに、なんだか優しい。僕はトムを探してきょろきょろと周囲を見回した。こんなに白い霧がある場所で、トムは迷わないのかな。
「トムは中にいるよ。まだ猫だから……そんな目で睨まないで」
教えてくれたガイアが途中からセティに文句を言う。セティ、睨んだの? 見上げるけど睨んでないよ? 僕の黒髪を撫でたセティと一緒に神殿に入った。よその神殿と違って、ここは白い服の神官が出て来ないから、怖くない。
「神殿を嫌う神様って……セティだけかと思ってたけど」
複雑そうな声を出すガイアを置いて、神殿の中に駆け込んだ。セティと手が離れたけど、僕はトムのお母さんだから抱っこしてあげたい。僕がお母さんに会ったら、最初に抱っこして欲しいと思うもの。頬ずりしたり、大好きって言って欲しいから。トムにも同じことをするの。
きょろきょろ探す僕の足に、金色の毛玉がしがみ付いた。両方の前足を使って、がしっと!
「トム!!」
しゃがんで抱っこする。スカートの服を着た僕の足に爪を立てないの、偉いよね。可愛い、前とあまり大きさが変わらないけど。ご飯ちゃんと食べてるのかな? いろいろ話しかけながら大好きと伝える。白い石の床にぺたんと座って、トムを膝に乗せた。
ぺろぺろと手を舐めたトムが前足を伸ばして立ち上がるから、僕はそのまま抱き上げる。頬や唇も舐められて、擽ったいよ。トムからの大好きが伝わったから「大好き、トム」と僕も言葉にした。いっぱい頬ずりして、撫でて、セティに襟を掴まれる。
「どうしたの?」
「トムとキスはダメだ」
「家族だよ」
「家族も口はだめ」
「僕はトムのお母さんなのに」
「トムはガイアとキスするからいいんだ」
僕がキスしないと、家族がいないトムは困ると思ったけど。ガイアが代わりにキスするの? じゃあ、トムとガイアは家族になるんだね。にこにこする僕の黒髪を撫でたガイアが、セティに声を上げた。
「うわぁ、嫉妬深い神って最悪。イシスを不幸にしたら許さないからね」
振り返りながら山を下りるフェルを見送って、僕はセティと手を繋いだ。行方不明になるなよと笑うけど、前も手を繋いでたのにガイアに変わってた。今回もそんなことが起きるのかな? セティと離れたら怖いので、ぎゅっと腕にしがみ付く。本当は抱っこしてもらうと安心だけど、ここは山の上だから我慢だね。
前に見た神殿が出てきて、僕は迷わずに済んだみたい。ほっとしながらセティを振り返ったら、笑いながら頬を突かれる。
「安心しろ、ガイアじゃないぞ」
そんなの、今は思ってないもん。ちゃんと区別がつくんだから! ぽかっとセティの胸を叩いて頬を膨らませると、額にキスがもらえた。嬉しくて空気を抜いた頬にも、それから唇を重ねる。ちゅっと音がして、終わりの合図に目を開けた。
「……相変わらず、イシスが騙されてる」
「兄弟への久しぶりの挨拶がそれか?」
ガイアとセティの言葉は刺々しい響きなのに、なんだか優しい。僕はトムを探してきょろきょろと周囲を見回した。こんなに白い霧がある場所で、トムは迷わないのかな。
「トムは中にいるよ。まだ猫だから……そんな目で睨まないで」
教えてくれたガイアが途中からセティに文句を言う。セティ、睨んだの? 見上げるけど睨んでないよ? 僕の黒髪を撫でたセティと一緒に神殿に入った。よその神殿と違って、ここは白い服の神官が出て来ないから、怖くない。
「神殿を嫌う神様って……セティだけかと思ってたけど」
複雑そうな声を出すガイアを置いて、神殿の中に駆け込んだ。セティと手が離れたけど、僕はトムのお母さんだから抱っこしてあげたい。僕がお母さんに会ったら、最初に抱っこして欲しいと思うもの。頬ずりしたり、大好きって言って欲しいから。トムにも同じことをするの。
きょろきょろ探す僕の足に、金色の毛玉がしがみ付いた。両方の前足を使って、がしっと!
「トム!!」
しゃがんで抱っこする。スカートの服を着た僕の足に爪を立てないの、偉いよね。可愛い、前とあまり大きさが変わらないけど。ご飯ちゃんと食べてるのかな? いろいろ話しかけながら大好きと伝える。白い石の床にぺたんと座って、トムを膝に乗せた。
ぺろぺろと手を舐めたトムが前足を伸ばして立ち上がるから、僕はそのまま抱き上げる。頬や唇も舐められて、擽ったいよ。トムからの大好きが伝わったから「大好き、トム」と僕も言葉にした。いっぱい頬ずりして、撫でて、セティに襟を掴まれる。
「どうしたの?」
「トムとキスはダメだ」
「家族だよ」
「家族も口はだめ」
「僕はトムのお母さんなのに」
「トムはガイアとキスするからいいんだ」
僕がキスしないと、家族がいないトムは困ると思ったけど。ガイアが代わりにキスするの? じゃあ、トムとガイアは家族になるんだね。にこにこする僕の黒髪を撫でたガイアが、セティに声を上げた。
「うわぁ、嫉妬深い神って最悪。イシスを不幸にしたら許さないからね」
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