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216.嫌われてなかった ※微?
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嫌われたと思った。もうセティに捨てられちゃう、要らない子だと思ったら声が出なくなった。喉の奥に詰まった声、胸が締め付けられるように痛くて、真っ白になる。息をするのも苦しいほど怖かった。でも僕は汚れてないと言ってもらえた。抱きしめてくれる、だから大丈夫だよね。
鼻を啜って尋ねる。
「名前、呼ぶ?」
セティが付けてくれた名前だから。セティが呼ばなくなったら、僕の名前は消えちゃう。
「呼ぶさ、いつでもイシスと一緒にいたい。愛してる、だからオレを呼べ」
僕が呼んだら、セティも呼んでくれるの? だったらいつでも呼ぶ。瞬きの間に移動して、セティはテントを用意した。当たり前みたいに僕の布団とセティの布団を用意する。火をつけて準備するセティの後ろをついて歩いて、ずっと裾を摘まんでいた。
セティが離れようとしたら指は外れちゃうくらいの強さ、でもセティは距離を見ながら近くにいてくれた。歩いて離れる時は、僕の手を握る。愛してるの意味は分からない。今の僕にとって、この手が離れないことが大切だった。
戻ってきたフェルが肉を転がす。大きな毛皮の付いた動物は4本脚で、頭が2つあって、角が生えていた。初めて見るけど、これ、何? しゃがんだ僕に、フェルがくーんと鼻を鳴らす。
大きいのに、トムみたいに甘えん坊だ。両手を伸ばしてフェルの頭を撫でた。届きやすいようにぺたんとしてくれる。たくさん撫でて振り返ると、セティが手の届く距離にいた。
「セティ、フェルも一緒でいい?」
「お呪いだけは2人だぞ。仲直りしてから寝ような」
「うん!」
一緒にご飯食べて、フェルも隣で寝ていい。フェルが手伝って、セティがナイフで肉から皮を剥がす。いつもはお父さんが簡単そうにやってたけど、見てると大変そう。時々汗を拭きながらセティは作業を終えた。汚れた手を浄化で綺麗にして、ついでにフェルも綺麗にしてもらう。一緒に寝るのに、血が付いてると汚れちゃうからだって。
フェルが獲ってきた鹿は頭が2つある。絵本で見た鹿は1つだった。珍しい種類みたいで、肉が美味しいんだと教えてもらう。並んでお肉を叩いて柔らかくしてから、セティが太い串に刺した。塊を焼きながら切って食べるのは初めてだ。
「熱いから気を付けろ」
そういうのに、ちゃんと冷ましてパンに挟んでくれる。お礼を言って齧る僕の横で、生の肉をフェルが勢いよく齧った。音をさせながら食べるフェルの口の周りはまた汚れている。後でちゃんと拭かないといけないね。ご飯が終わったら、フェルはふらりと立ち上がって走った。
「気の利く奴だな」
セティの言葉の意味が分からないけど、僕はセティの膝に座る。後ろから抱っこされると安心するし、暖かかった。テントに入って、たくさんキスをする。首や胸にも噛みつかれて、今日は足の付け根も噛まれた。ちょっと痛いのに、嫌じゃない。
「もっと……」
「煽るな、痛い思いするぞ」
セティが脅すみたいに言うけど、その目は優しくて口元は笑ってて……ちっとも怖くない。だから両手を伸ばして、僕はいっぱい好きだと繰り返した。そのたびにキスが返ってきて、嬉しくて涙が出る。疲れて動けなくなる頃、ようやくフェルが帰ってきた。テントの中に鼻先を入れて、くーんと甘える。
「外で寝るか」
セティの提案で、焚火の側でフェルと寝ることにした。セティに抱っこされて、その周りをフェルがぐるりと巻く。時々火がぱちんと音を立てる森は静かで……見上げたら葉っぱの間から空が見えた。覚えているのはその辺まで、いつの間にか眠ってたみたい。セティに嫌われなくて良かった。
鼻を啜って尋ねる。
「名前、呼ぶ?」
セティが付けてくれた名前だから。セティが呼ばなくなったら、僕の名前は消えちゃう。
「呼ぶさ、いつでもイシスと一緒にいたい。愛してる、だからオレを呼べ」
僕が呼んだら、セティも呼んでくれるの? だったらいつでも呼ぶ。瞬きの間に移動して、セティはテントを用意した。当たり前みたいに僕の布団とセティの布団を用意する。火をつけて準備するセティの後ろをついて歩いて、ずっと裾を摘まんでいた。
セティが離れようとしたら指は外れちゃうくらいの強さ、でもセティは距離を見ながら近くにいてくれた。歩いて離れる時は、僕の手を握る。愛してるの意味は分からない。今の僕にとって、この手が離れないことが大切だった。
戻ってきたフェルが肉を転がす。大きな毛皮の付いた動物は4本脚で、頭が2つあって、角が生えていた。初めて見るけど、これ、何? しゃがんだ僕に、フェルがくーんと鼻を鳴らす。
大きいのに、トムみたいに甘えん坊だ。両手を伸ばしてフェルの頭を撫でた。届きやすいようにぺたんとしてくれる。たくさん撫でて振り返ると、セティが手の届く距離にいた。
「セティ、フェルも一緒でいい?」
「お呪いだけは2人だぞ。仲直りしてから寝ような」
「うん!」
一緒にご飯食べて、フェルも隣で寝ていい。フェルが手伝って、セティがナイフで肉から皮を剥がす。いつもはお父さんが簡単そうにやってたけど、見てると大変そう。時々汗を拭きながらセティは作業を終えた。汚れた手を浄化で綺麗にして、ついでにフェルも綺麗にしてもらう。一緒に寝るのに、血が付いてると汚れちゃうからだって。
フェルが獲ってきた鹿は頭が2つある。絵本で見た鹿は1つだった。珍しい種類みたいで、肉が美味しいんだと教えてもらう。並んでお肉を叩いて柔らかくしてから、セティが太い串に刺した。塊を焼きながら切って食べるのは初めてだ。
「熱いから気を付けろ」
そういうのに、ちゃんと冷ましてパンに挟んでくれる。お礼を言って齧る僕の横で、生の肉をフェルが勢いよく齧った。音をさせながら食べるフェルの口の周りはまた汚れている。後でちゃんと拭かないといけないね。ご飯が終わったら、フェルはふらりと立ち上がって走った。
「気の利く奴だな」
セティの言葉の意味が分からないけど、僕はセティの膝に座る。後ろから抱っこされると安心するし、暖かかった。テントに入って、たくさんキスをする。首や胸にも噛みつかれて、今日は足の付け根も噛まれた。ちょっと痛いのに、嫌じゃない。
「もっと……」
「煽るな、痛い思いするぞ」
セティが脅すみたいに言うけど、その目は優しくて口元は笑ってて……ちっとも怖くない。だから両手を伸ばして、僕はいっぱい好きだと繰り返した。そのたびにキスが返ってきて、嬉しくて涙が出る。疲れて動けなくなる頃、ようやくフェルが帰ってきた。テントの中に鼻先を入れて、くーんと甘える。
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