167 / 321
166.シェリアと僕は好きな人が違う
しおりを挟む
再び飛んだお父さんは、あまりバサバサと動かなかった。風の上を滑るみたいに移動するの。凄いと褒めたら速く飛んでくれた。後ろのお母さんが唸ったらゆっくりになるのは、怒られちゃったのかな。あとでお父さんは悪くないって説明しなくちゃ。
大きな山を2つ超えたところで、お父さんが喉を鳴らした。ぐるるると聞こえる声に、返事が聞こえる。同じように喉を鳴らす声がして、僕はお母さんを振り返った。でも違うみたい。声は前から聞こえてきた。
『落ちるでないぞ』
お父さんの声にしっかりと捕まった僕は、トムとガイアが入った籠も抱きしめた。ぐっとお父さんの首が下を向いた途端、一気に降りていく。さっき川でお昼をしたときより、真っすぐに降りた。ひゅんってお腹が置いていかれた感じがして、後ろのセティに寄り掛かる。抱きしめる腕はいつもと同じで、ほっとした。
ぐぁあああ!! 足元でボリスが吠える。興奮したのかな。すごい大きな声だった。山の真ん中より上の場所に開いた穴に、お父さんは突っ込んでいく。あの穴、奥まで洞窟になってるのかな? もし小さい穴だったらどうしよう。お父さんがケガしちゃう。
「大丈夫、心配するな」
セティが言うなら平気? どきどきする僕達がぶつからないように、お父さんは洞窟の中で着地した。後ろから飛び込んだお母さんもくるっと回って床に足を付ける。ゲリュオンはいいけど、シェリアは気持ち悪くなったかも。滑ってお父さんから降りると、後ろで大きな音がして洞窟が暗くなる。
『洞窟の入り口を閉じたのだ。心配いらぬ』
お父さんの言葉通り、すぐに洞窟の中がぼんやりと明るくなった。壁全体が緑色に光ってるよ。ボリスが走り回れるくらい広くて、奥にも穴が続いていた。僕はセティと手を繋いで、籠を反対の手に持つ。セティが預かってくれると言ったけど、トムのお母さんは僕だからいいの。
さっきから動かないけど、トム平気かな。足を止めて中を覗くと、トムが飛び出してきた。追いかけてガイアも出て、はしゃぐトムの首を噛んで大人しくさせる。僕よりガイアがお母さんみたい。籠は邪魔だから、セティが収納のお部屋にしまった。
「ねえ、僕の枕潰れてない?」
「平気だぞ。上に肉を置いたりしてないからな」
笑いながら答えるセティに「意地悪」と頬を膨らませる。後ろから追いついたゲリュオンは、シェリアを抱っこしてた。少し前の僕みたい。今でも抱っこされることあるけど、僕はもうお兄さんになったから歩ける。でもシェリアは体が小さい子だから、抱っこなんだね。
「……この子、どうしたもんか」
セティは呆れたと笑って、ゲリュオンの頭を小突いた。
「抱き上げてる時点で、答えが出てるだろ。嫁もいないことだし、ちょうどいいじゃないか」
シェリアはゲリュオンのお嫁さんになるの? 僕と一緒だ。にこにこと笑いかけたら、シェリアも嬉しそうに手を振った。僕も振り返して、セティと歩く。なんだ、心配いらなかった。シェリアはゲリュオンが好きで、僕はセティが好き。どっちも叶うから、取られないんだね。
奥へ向かう僕の足取りは軽くて、少し浮かれていた。躓いて転びそうになり、慌てたセティに抱っこされちゃった。僕、まだ子どもで食べてもらえるのは先みたい。
大きな山を2つ超えたところで、お父さんが喉を鳴らした。ぐるるると聞こえる声に、返事が聞こえる。同じように喉を鳴らす声がして、僕はお母さんを振り返った。でも違うみたい。声は前から聞こえてきた。
『落ちるでないぞ』
お父さんの声にしっかりと捕まった僕は、トムとガイアが入った籠も抱きしめた。ぐっとお父さんの首が下を向いた途端、一気に降りていく。さっき川でお昼をしたときより、真っすぐに降りた。ひゅんってお腹が置いていかれた感じがして、後ろのセティに寄り掛かる。抱きしめる腕はいつもと同じで、ほっとした。
ぐぁあああ!! 足元でボリスが吠える。興奮したのかな。すごい大きな声だった。山の真ん中より上の場所に開いた穴に、お父さんは突っ込んでいく。あの穴、奥まで洞窟になってるのかな? もし小さい穴だったらどうしよう。お父さんがケガしちゃう。
「大丈夫、心配するな」
セティが言うなら平気? どきどきする僕達がぶつからないように、お父さんは洞窟の中で着地した。後ろから飛び込んだお母さんもくるっと回って床に足を付ける。ゲリュオンはいいけど、シェリアは気持ち悪くなったかも。滑ってお父さんから降りると、後ろで大きな音がして洞窟が暗くなる。
『洞窟の入り口を閉じたのだ。心配いらぬ』
お父さんの言葉通り、すぐに洞窟の中がぼんやりと明るくなった。壁全体が緑色に光ってるよ。ボリスが走り回れるくらい広くて、奥にも穴が続いていた。僕はセティと手を繋いで、籠を反対の手に持つ。セティが預かってくれると言ったけど、トムのお母さんは僕だからいいの。
さっきから動かないけど、トム平気かな。足を止めて中を覗くと、トムが飛び出してきた。追いかけてガイアも出て、はしゃぐトムの首を噛んで大人しくさせる。僕よりガイアがお母さんみたい。籠は邪魔だから、セティが収納のお部屋にしまった。
「ねえ、僕の枕潰れてない?」
「平気だぞ。上に肉を置いたりしてないからな」
笑いながら答えるセティに「意地悪」と頬を膨らませる。後ろから追いついたゲリュオンは、シェリアを抱っこしてた。少し前の僕みたい。今でも抱っこされることあるけど、僕はもうお兄さんになったから歩ける。でもシェリアは体が小さい子だから、抱っこなんだね。
「……この子、どうしたもんか」
セティは呆れたと笑って、ゲリュオンの頭を小突いた。
「抱き上げてる時点で、答えが出てるだろ。嫁もいないことだし、ちょうどいいじゃないか」
シェリアはゲリュオンのお嫁さんになるの? 僕と一緒だ。にこにこと笑いかけたら、シェリアも嬉しそうに手を振った。僕も振り返して、セティと歩く。なんだ、心配いらなかった。シェリアはゲリュオンが好きで、僕はセティが好き。どっちも叶うから、取られないんだね。
奥へ向かう僕の足取りは軽くて、少し浮かれていた。躓いて転びそうになり、慌てたセティに抱っこされちゃった。僕、まだ子どもで食べてもらえるのは先みたい。
177
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
処刑されたくない悪役宰相、破滅フラグ回避のため孤独なラスボス竜を懐柔したら番として溺愛される
水凪しおん
BL
激務で過労死した俺が転生したのは、前世でやり込んだBLゲームの悪役宰相クリストフ。
しかも、断頭台で処刑される破滅ルート確定済み!
生き残る唯一の方法は、物語のラスボスである最強の”魔竜公”ダリウスを懐柔すること。
ゲーム知識を頼りに、孤独で冷徹な彼に接触を試みるが、待っていたのは絶対零度の拒絶だった。
しかし、彼の好物や弱みを突き、少しずつ心の壁を溶かしていくうちに、彼の態度に変化が訪れる。
「――俺の番に、何か用か」
これは破滅を回避するためのただの計画。
のはずが、孤独な竜が見せる不器用な優しさと独占欲に、いつしか俺の心も揺さぶられていく…。
悪役宰相と最強ラスボスが運命に抗う、異世界転生ラブファンタジー!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる