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126.帰ってくる約束をして
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無事にボリスも生まれたし、一度街に行くことになった。大きな街で、枕を作ってもらうんだって。それから僕のお洋服と、トムの袋を新しくして……あと、お布団やテントも買うみたい。よくわからないけど、一緒に寝ると危険だとか。
僕はセティが決めたならいいけど。一緒にいるのに、何が危険なんだろうね。絵本も買ってもらう約束をした。大きな街にはすごい大きい本屋さんがあって、前のお店より本がたくさんある。そう聞いたからわくわくしていた。
「ボリス、お土産買ってくるね」
話しかけて撫でたら、避けないけどそっぽ向いてる。機嫌が悪いのかな? そう思ったけど、尻尾は僕に巻き付いていた。お母さん達をそのまま小さくした形だから、ボリスは4本脚で歩くの。それを折り曲げて長い首をよそに向けたら、僕からは顔が見えなかった。
背中の鱗を撫でながら、ちょっと寂しいと思った。僕、昨日何かしちゃったかな。もしかして食べたお肉の柔らかいところ、本当はボリスが食べたかった?
しょんぼりした僕を舐めたお母さんが、ボリスに唸った。びくっとしたボリスが何か唸り返す。この話し方、フェルみたい。
『まったく、この子ったらイシスがいなくなるのが寂しいんですって』
お母さんが教えてくれたのは、ボリスが僕と一緒にいたいと思ってること。なのに僕が街に行くから、離れ離れになるのが寂しくて拗ねてる。抱き着いて全身でボリスを包んだ。僕の弟は本当に可愛い。僕、可愛くて素敵な家族が出来て幸せだよ。
「僕はボリスのお兄ちゃんだもん。約束して帰ってくるよ」
ぐるる? 鳴いたボリスの喉も撫でて、潤んだ目の下も撫でて、それから鼻先をぎゅっとした。いっぱい撫でて、約束する。僕、ちゃんと戻ってくるから。
『危なくなったら呼べ、いや……これを渡しておこう』
お父さんが僕に綺麗な腕輪をくれた。前にも首飾りと指輪をもらったけど、今回は少し違うみたい。光る輪っかで、僕の左手首にぴたっと貼りついた。その後、見えなくなっちゃう。撫でると付いてるのが分かるけど……見えないのに飾りなの?
「悪いな、だが助かる。すぐに攫われるからな」
セティがお父さんにお礼を言った。僕も慌ててお礼したら、ぺろっと舐められる。
『イシスが危険になったら、大きな声で呼べ。必ず駆け付けてやる』
「お父さん、忙しいのにいいの?」
帝様って、王様と同じで忙しいと思う。なのに僕が呼んだら来てくれるの? すごいけど、大変じゃないかな。不思議に思っていると、セティが教えてくれた。普段じゃなくて、本当に危ない時や怖い時に呼ぶんだって。そうすると腕輪が光って、お父さんに居場所を連絡する。
『親が子供の危機に駆け付けるのは当然だ』
よく分かんない。そういう親は僕にいなかったから。セティも前に同じようなことを言ってた。絶対に助けてやるから、心の中で神様に祈れって。みんなが助けてくれるなら、僕は何も怖くないね。ふふっと笑ったら、お母さんに舐められた。
駆け寄ってお母さんに抱き着いたら、後ろからボリスがしがみついた。お父さんもボリスごと僕を抱える。お父さんとお母さんに潰されちゃうよ。凄く幸せで、笑いながら見た先でトムを捕まえたセティが手を振る。
僕、セティと一緒に神殿を出て良かったよ。すごく幸せ。これ以上がないと思えるくらい、本当に幸せ。絵本のお姫様より嬉しいと思う。
「さて、いくぞ」
セティに助け出され、僕は抱っこされた。転移して街の近くの森に行くんだと聞く。鳴くボリスの声に「また帰ってくる」と叫んだ。お母さんがしっかり抱き締めたボリスは、ぼろぼろ涙を零してる。ごめんね、でも帰るから待ってて。
僕はセティが決めたならいいけど。一緒にいるのに、何が危険なんだろうね。絵本も買ってもらう約束をした。大きな街にはすごい大きい本屋さんがあって、前のお店より本がたくさんある。そう聞いたからわくわくしていた。
「ボリス、お土産買ってくるね」
話しかけて撫でたら、避けないけどそっぽ向いてる。機嫌が悪いのかな? そう思ったけど、尻尾は僕に巻き付いていた。お母さん達をそのまま小さくした形だから、ボリスは4本脚で歩くの。それを折り曲げて長い首をよそに向けたら、僕からは顔が見えなかった。
背中の鱗を撫でながら、ちょっと寂しいと思った。僕、昨日何かしちゃったかな。もしかして食べたお肉の柔らかいところ、本当はボリスが食べたかった?
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お母さんが教えてくれたのは、ボリスが僕と一緒にいたいと思ってること。なのに僕が街に行くから、離れ離れになるのが寂しくて拗ねてる。抱き着いて全身でボリスを包んだ。僕の弟は本当に可愛い。僕、可愛くて素敵な家族が出来て幸せだよ。
「僕はボリスのお兄ちゃんだもん。約束して帰ってくるよ」
ぐるる? 鳴いたボリスの喉も撫でて、潤んだ目の下も撫でて、それから鼻先をぎゅっとした。いっぱい撫でて、約束する。僕、ちゃんと戻ってくるから。
『危なくなったら呼べ、いや……これを渡しておこう』
お父さんが僕に綺麗な腕輪をくれた。前にも首飾りと指輪をもらったけど、今回は少し違うみたい。光る輪っかで、僕の左手首にぴたっと貼りついた。その後、見えなくなっちゃう。撫でると付いてるのが分かるけど……見えないのに飾りなの?
「悪いな、だが助かる。すぐに攫われるからな」
セティがお父さんにお礼を言った。僕も慌ててお礼したら、ぺろっと舐められる。
『イシスが危険になったら、大きな声で呼べ。必ず駆け付けてやる』
「お父さん、忙しいのにいいの?」
帝様って、王様と同じで忙しいと思う。なのに僕が呼んだら来てくれるの? すごいけど、大変じゃないかな。不思議に思っていると、セティが教えてくれた。普段じゃなくて、本当に危ない時や怖い時に呼ぶんだって。そうすると腕輪が光って、お父さんに居場所を連絡する。
『親が子供の危機に駆け付けるのは当然だ』
よく分かんない。そういう親は僕にいなかったから。セティも前に同じようなことを言ってた。絶対に助けてやるから、心の中で神様に祈れって。みんなが助けてくれるなら、僕は何も怖くないね。ふふっと笑ったら、お母さんに舐められた。
駆け寄ってお母さんに抱き着いたら、後ろからボリスがしがみついた。お父さんもボリスごと僕を抱える。お父さんとお母さんに潰されちゃうよ。凄く幸せで、笑いながら見た先でトムを捕まえたセティが手を振る。
僕、セティと一緒に神殿を出て良かったよ。すごく幸せ。これ以上がないと思えるくらい、本当に幸せ。絵本のお姫様より嬉しいと思う。
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