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106.欲しがるのは悪いこと
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寝る前のお呪いを多めに頼んでみた。困ったような、でも迷惑そうじゃない。セティが何とも言えない顔で尋ねた。
「いいのか?」
「昨日の分が足りないから」
お呪いとは全体量の問題ではないと説明しながらも、丁寧にキスが降ってきた。前より仲良くなってるといいな、僕はセティをどんどん好きになってる。キスも気持ちいし、セティの手も好き。もちろん本人はもっと好きだし、こうして触ってくれるの嬉しい。
最近セティに触っても、キスしても、抱っこしてもらっても、足りない気がするんだ。これって神様の神殿で教わった「欲」なのかな。欲しいと思う気持ちが欲だと聞いた。だから欲しがってはいけないとお爺ちゃんは教えてくれたけど、僕がセティを足りないと思うのも欲しいのと同じかもしれない。悪い気持ちかも知れないから、セティには言えない。
大好きと示しながら抱き着いたら、抱っこしたままごろんと寝転んだ。僕が上になったり下になったり、どっちもドキドキした。舌を吸われるとジンとして、腰の辺りがじわじわする。変な感じだけど嫌じゃない。真似して僕も舌を吸ってみた。
「ん……これ以上は危ない」
危ないの? よくわからないけど、セティが「ここで終わり」と僕を抱いて座り直した。セティの耳が赤くなってる。手を伸ばして触れると温かくて、首に手をまわして抱き着いた。どうしよう、すごく言いたい。
「僕、セティのこと大好き」
僕が知ってる中で一番の「大好き」を使うけど、足りない気がした。もっと特別な好きを伝える言葉があればいいのに。
「ありがとう、オレもイシスが大好きだよ」
囁くセティの声が、腰の奥に溜まる感じだ。ふわふわして気持ちいい。一緒に横になって、このまま眠るみたい。ご飯もしたし……ぬいぐるみのフォンを抱っこしたところで、トムがいないことに気づいた。
「トム?」
「ああ、籠の中だな」
さっき用意した籠を開けて見せてくれる。中にいたトムが「びにゃ」と変な声を出して出てきた。不満そうな顔だけど、どうしたんだろう? じとっとセティを睨みつけてから、僕とフォンの隙間に潜り込んだ。すぐに寝てしまう。子猫って温かいね。
トムとフォンを抱きしめて横になると、正面からセティが抱っこしてくれた。でも触れている部分が少なくて寂しいから、ごろんと向きを直した。転がったら、セティのお腹と僕の背中がぴったり。温かいし凄くいっぱいくっつける。
「こっちのがいっぱいだね」
「あ、ああ。そうだな」
セティもそう思う? 良かった。安心したら眠くなって欠伸をして目を閉じる。背中にセティの心臓の音がして、僕はゆっくり数える。夢の中でいろんな色の人が出てきて何か言ったけど、何も聞こえなかった。ただ……セティの心臓の音がずっと伝わってくる。
安心できた。セティがいれば何も怖くないし、僕はすごく幸せ。一緒にお腹いっぱいご飯を食べて、温かいところで寝て、触れ合ってお呪いも出来る。これ以上何かを求めたら罰が当たりそうだった。だから、僕は欲しがらないと決めた。でも今の状態をこのままにしてくださいって、お願いしてもいいかな。
大好き、セティ。僕とずっと一緒にいてね。
「いいのか?」
「昨日の分が足りないから」
お呪いとは全体量の問題ではないと説明しながらも、丁寧にキスが降ってきた。前より仲良くなってるといいな、僕はセティをどんどん好きになってる。キスも気持ちいし、セティの手も好き。もちろん本人はもっと好きだし、こうして触ってくれるの嬉しい。
最近セティに触っても、キスしても、抱っこしてもらっても、足りない気がするんだ。これって神様の神殿で教わった「欲」なのかな。欲しいと思う気持ちが欲だと聞いた。だから欲しがってはいけないとお爺ちゃんは教えてくれたけど、僕がセティを足りないと思うのも欲しいのと同じかもしれない。悪い気持ちかも知れないから、セティには言えない。
大好きと示しながら抱き着いたら、抱っこしたままごろんと寝転んだ。僕が上になったり下になったり、どっちもドキドキした。舌を吸われるとジンとして、腰の辺りがじわじわする。変な感じだけど嫌じゃない。真似して僕も舌を吸ってみた。
「ん……これ以上は危ない」
危ないの? よくわからないけど、セティが「ここで終わり」と僕を抱いて座り直した。セティの耳が赤くなってる。手を伸ばして触れると温かくて、首に手をまわして抱き着いた。どうしよう、すごく言いたい。
「僕、セティのこと大好き」
僕が知ってる中で一番の「大好き」を使うけど、足りない気がした。もっと特別な好きを伝える言葉があればいいのに。
「ありがとう、オレもイシスが大好きだよ」
囁くセティの声が、腰の奥に溜まる感じだ。ふわふわして気持ちいい。一緒に横になって、このまま眠るみたい。ご飯もしたし……ぬいぐるみのフォンを抱っこしたところで、トムがいないことに気づいた。
「トム?」
「ああ、籠の中だな」
さっき用意した籠を開けて見せてくれる。中にいたトムが「びにゃ」と変な声を出して出てきた。不満そうな顔だけど、どうしたんだろう? じとっとセティを睨みつけてから、僕とフォンの隙間に潜り込んだ。すぐに寝てしまう。子猫って温かいね。
トムとフォンを抱きしめて横になると、正面からセティが抱っこしてくれた。でも触れている部分が少なくて寂しいから、ごろんと向きを直した。転がったら、セティのお腹と僕の背中がぴったり。温かいし凄くいっぱいくっつける。
「こっちのがいっぱいだね」
「あ、ああ。そうだな」
セティもそう思う? 良かった。安心したら眠くなって欠伸をして目を閉じる。背中にセティの心臓の音がして、僕はゆっくり数える。夢の中でいろんな色の人が出てきて何か言ったけど、何も聞こえなかった。ただ……セティの心臓の音がずっと伝わってくる。
安心できた。セティがいれば何も怖くないし、僕はすごく幸せ。一緒にお腹いっぱいご飯を食べて、温かいところで寝て、触れ合ってお呪いも出来る。これ以上何かを求めたら罰が当たりそうだった。だから、僕は欲しがらないと決めた。でも今の状態をこのままにしてくださいって、お願いしてもいいかな。
大好き、セティ。僕とずっと一緒にいてね。
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