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100.土産話を拾いに行こう

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 セティが差し出したパンを、もぐもぐと食べる。見ると、お母さんもお父さんと肉を食べていた。毛がふわふわした生き物が空中から出てくる。セティが持ってる収納のお部屋と同じ仕組みみたい。お母さんの前にたくさん積み上げたお父さんは、鋭い爪と牙であっという間にばらばらにしてしまった。

 お母さんは用意された肉を卵を抱いたまま食べ始める。時々口移しで食べてるけど、仲良しなのはいいよね。僕達もお父さん達みたいに仲良しだもん。机の小さな果物を手にして、セティの唇に運ぶ。食べてくれるのが凄く嬉しい。セティが僕に食べさせるのも、嬉しいからかな。

 魚の入ったパンも果物も食べ終えた足元で、トムが肉を齧っていた。どこから持ってきたの? 首をかしげると、お父さんが小さくした肉をトムに投げてくれる。

「ありがと、お父さん」

 お礼を言って「よかったね、トム」と金の子猫の頭を撫でた。満足げに喉を鳴らすけど、トムの毛皮は汚れて赤くなってる。ポケットに入れた布を出して拭いてあげた。これ、ハンカチって呼ぶんだって。縦と横が同じ長さなんだよ。

『よく面倒をみておる。きっと末っ子も可愛がる、良い兄になるであろうな』

 お父さんの言葉に、わくわくしながら卵に駆け寄る。いつ生まれるんだろう。2人の様子を見てると、今日ではなさそう。

「弟はいつ出てくるの?」

『あと1ヵ月はかかるよ』

 お母さんが教えてくれた。僕、セティと勉強したからわかる。1ヵ月は月が丸くなって消えて、また丸くなるまで……。あれ? いっぱいかかるんだね。

「その間、外で別の種族を見て回るか? その卵の子にも土産話が出来るぞ」

 たくさん見て聞いたことを、弟に教えてあげられるの? 興奮して何度も頷く。そんな僕に、お母さん達もセティも笑ってくれた。お昼寝を始めたトムを籠に入れて、僕は出かける準備を始める。お気に入りの毛布もフォンも、セティが片付けてくれた。

 トムも入れるのかと思ったら、生きてる物はダメなんだって。トムが冷たくなっちゃうと聞いたら怖くて、籠を抱っこして移動した。卵の近くでようやく籠を置いて、全身で卵に抱き着く。

「僕、少しだけ出掛けるけど、君が生まれたら戻ってくるよ。元気でね」

 すりすりと頬を擦りつける僕に、何かが触った。閉じた目を開くと、卵の中の弟の目がこっちを見てる。僕と同じくらいある手がぺたりと僕と合わさった。重なった指の数、お母さんと一緒で1本多いね。目の色も……よく見えないけど金色なのかな。

 見つめあっていると、お父さんが喉を鳴らす。

『ふむ、すでに外界の様子を吸収しておる。もう少し早く生まれるかも知れぬな』

「生まれそうなら連絡くれ」

『承知した』

 お父さんとセティが約束してる。卵にヒビが入ったら、すぐ連絡くれるみたい。良かった、安心して出かけられる。トムの入った籠を持ち上げると、お父さんが爪の先でぽんぽんと籠を叩いた。

『別の入れ物はないのか。両手が塞がって歩きづらいであろう』

 そうか。転んだ時危ないね。すると思い出したと呟きながら、セティが以前使っていたバッグを出してくれる。布で、肩にかけるとお腹の辺りに荷物が来るやつだ。寝てるトムには悪いけど、起こして移動してもらった。僕の古いシャツごと移動したら、すぐだったよ。

 新しいシャツの方がいいと思うんだけど……そう言ったら、猫は違うんだよとセティが教えてくれた。猫って、匂いが好きなんだね。知らなかった。
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