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83.神が鳴る(SIDEセティ)
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*****SIDE セティ
お昼を食べる前に眠った子供を抱き上げた。無理やり体を作り替え、種族を変更する負担は眠りによって解消される。今はただ眠り、心身のバランスを整える時期だった。抱き上げたイシスの胸元にしがみ付く子猫が、心配そうに頬を舐める。
「寝てる間に片付けるか」
「いいんじゃねえか?」
無駄に肥大した選民意識を叩き潰してやろう。黒き破壊神を祀ったのは、恐怖からだった。巻き込まれたくない保身が高じて、神を私物化して操ろうと考えたのは人間の愚かさだ。寿命が短い彼らは、己の物差しで他種族をはかる。
破壊神タイフォンを祀ることで、都は大きく栄えた。そこに神の恩恵を感じるのは彼らの勝手だ。タイフォンが興味を持たず放置した国が、たまたま繁栄しただけの話――神には関係ない。偶然の産物だった。
勝手に「我が国は破壊神に愛されている」と勘違いした輩が現れる。神殿の関係者は徐々に権力や財力を蓄え、王侯貴族の婚姻や政策に口出しを始めた。興味がないタイフォンは放置する。神罰が下らないことを、彼らは都合よく受け止めた。曰く「我ら神官は神の代弁者である」と。
単にオレは本当に興味がなかった。勝手に名を騙られようと、信仰を捧げる連中が生きようが死のうが……まったく気にしなかっただけだ。だから放置した。国が滅びて信仰が減ろうと、あいつらが繁栄して捧げものをしようと、オレには関係ない。そのはずだった。
まさか生け贄をあの最初の神殿に捧げ、放置するなど……考えもしなかったのだ。
オレと同じ色を持つ子供を蔑ろにし、軽んじた。それはオレを軽んじるのと同じ行為だ。ましてや贄として奉じた存在を虐待するなど……神でなくても許さぬ愚行だった。
「ティターンは滅びるべきだ」
「破壊神がそう決めたら、誰も邪魔しねえよ」
手伝う気のゲリュオンを従え、愛し子を抱き抱えて黒き神は笑みを浮かべた。しがみつく子猫は、ついていこうと必死だ。好きにすればいい。子猫を連れたまま、オレは転移した。
繁栄する都……それは人間から見たら神の加護を得た証拠なのか。信仰を捧げられた神にしたら、肥大した魔物の心臓と大差なかった。捧げた贄を神が気に入ったことが予想外だったとして、奪おうと考えるのは傲慢に過ぎる。人間であっても捧げられ受け入れられた瞬間から、神の所有物だった。
元の種族は関係ない。神は己の手元にある所有物を愛で、食らい、処理する。加護もない神職が口出しする領分ではなかった。彼らは、神々の領域に土足で踏み入って、荒らそうとしたのだ。
呪文など不要だ。魔法を行使するのに魔法陣すらいらない。魔力ではなく、神力を高めて叩きつけた。雷が走り、神殿を直撃する。数人死んだか? 騒ぎ立てる姿は、突いた蟻の巣のようだ。
雷は本来、神が鳴ると書く。それは神罰の証であった。雲ひとつない空を見上げ、何か怒鳴り散らす姿に信仰は感じられない。彼らは神の名を使い、自らの欲望を満たしただけのクズだった。
****************
『彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ』というタイトルで、ヤンデレ系の溺愛ハッピーエンド新作を書き始めました。一緒にお楽しみください(=´∇`=)にゃん
お昼を食べる前に眠った子供を抱き上げた。無理やり体を作り替え、種族を変更する負担は眠りによって解消される。今はただ眠り、心身のバランスを整える時期だった。抱き上げたイシスの胸元にしがみ付く子猫が、心配そうに頬を舐める。
「寝てる間に片付けるか」
「いいんじゃねえか?」
無駄に肥大した選民意識を叩き潰してやろう。黒き破壊神を祀ったのは、恐怖からだった。巻き込まれたくない保身が高じて、神を私物化して操ろうと考えたのは人間の愚かさだ。寿命が短い彼らは、己の物差しで他種族をはかる。
破壊神タイフォンを祀ることで、都は大きく栄えた。そこに神の恩恵を感じるのは彼らの勝手だ。タイフォンが興味を持たず放置した国が、たまたま繁栄しただけの話――神には関係ない。偶然の産物だった。
勝手に「我が国は破壊神に愛されている」と勘違いした輩が現れる。神殿の関係者は徐々に権力や財力を蓄え、王侯貴族の婚姻や政策に口出しを始めた。興味がないタイフォンは放置する。神罰が下らないことを、彼らは都合よく受け止めた。曰く「我ら神官は神の代弁者である」と。
単にオレは本当に興味がなかった。勝手に名を騙られようと、信仰を捧げる連中が生きようが死のうが……まったく気にしなかっただけだ。だから放置した。国が滅びて信仰が減ろうと、あいつらが繁栄して捧げものをしようと、オレには関係ない。そのはずだった。
まさか生け贄をあの最初の神殿に捧げ、放置するなど……考えもしなかったのだ。
オレと同じ色を持つ子供を蔑ろにし、軽んじた。それはオレを軽んじるのと同じ行為だ。ましてや贄として奉じた存在を虐待するなど……神でなくても許さぬ愚行だった。
「ティターンは滅びるべきだ」
「破壊神がそう決めたら、誰も邪魔しねえよ」
手伝う気のゲリュオンを従え、愛し子を抱き抱えて黒き神は笑みを浮かべた。しがみつく子猫は、ついていこうと必死だ。好きにすればいい。子猫を連れたまま、オレは転移した。
繁栄する都……それは人間から見たら神の加護を得た証拠なのか。信仰を捧げられた神にしたら、肥大した魔物の心臓と大差なかった。捧げた贄を神が気に入ったことが予想外だったとして、奪おうと考えるのは傲慢に過ぎる。人間であっても捧げられ受け入れられた瞬間から、神の所有物だった。
元の種族は関係ない。神は己の手元にある所有物を愛で、食らい、処理する。加護もない神職が口出しする領分ではなかった。彼らは、神々の領域に土足で踏み入って、荒らそうとしたのだ。
呪文など不要だ。魔法を行使するのに魔法陣すらいらない。魔力ではなく、神力を高めて叩きつけた。雷が走り、神殿を直撃する。数人死んだか? 騒ぎ立てる姿は、突いた蟻の巣のようだ。
雷は本来、神が鳴ると書く。それは神罰の証であった。雲ひとつない空を見上げ、何か怒鳴り散らす姿に信仰は感じられない。彼らは神の名を使い、自らの欲望を満たしただけのクズだった。
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