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74.手ぇ出されたのか?
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うとうとする僕の胸に擦り寄る子猫を、無意識に抱き締める。温かくて、小さくて、壊れそう。大切にしないと、すぐに死んじゃうかも知れない。柔らかくした魚が入った器を持ったセティが近づいた。
子猫は起き上がって、よたよた歩く。足がすごく短いんだ、この子。器の中のご飯を匂い嗅いで、すぐに食べ始めた。小さい牙と舌で食べる姿を見ていると、目蓋がとろんと落ちてくる。
あ、寝ちゃう。
起きてたい気分と、眠い身体がケンカしてるみたい。僕はお母さんになるんだから、寝てばかりじゃダメだと思う。何度も閉じる目蓋を押し上げた。ずずっと鼻が鳴る。少し息が苦しい。
「ん? イシス……熱がないか?」
首を横に振る。すると額に手のひらが押し当てられた。ひんやりする。折角開いた目蓋がまた閉じちゃいそう。なんか気持ちいい。ふらっと傾いた体が、そのままベッドに倒れちゃいそう。
「具合悪くないのか」
確認する声にまた横に首を振った。具合も気分も悪くないよ。ただ眠いだけ。ご飯を食べ終わった子猫が、僕の手に擦り寄った。
くにゃくにゃして、柔らかくて温かい。僕がしてもらったみたいに撫でていると、セティが溜め息をついた。顔をあげた僕に困ったように笑いかける。
「オレも寝るから、一緒に休もう」
よく分からないけど、セティは眠いの? なら、僕も付き合ってあげる。
「一緒に、寝る」
「いい子だ。おいで」
窓にくっついた方へセティが乗った。真ん中が僕、抱っこしたフォンの隙間に子猫が入ってくる。みんな一緒に寝るのは初めてだね。
「にぃ」
子猫は器用に体を舐めていたけど、ひと鳴きすると僕の顔の横で丸くなった。体が柔らかいんだな。僕には真似できそうにない。背中に当たるセティの体が温かくて、抱き締める腕が嬉しくて……目を閉じた。
セティが大好き、子猫も好きだけど……もっとずっと好き。僕はセティのお嫁さんになるから、ちゃんとお母さんもしなくちゃ。でも今だけ少し休んでもいいかな。起きたらちゃんとするね。
神様にごめんなさいして、そこから覚えていない。夢を見た気がする。金の髪の綺麗な人が、何か言ってた。でも聞こえなくて、セティがいないから慌てる。どうしよう、この夢から出られなくなったらやだ。
そこで額に何かが触れた。最初はひんやりして、次は温かい。それが目の辺りを優しく覆った。気持ちいい。セティの手みたい。怖い夢が消えて、髪が金色の人もいなくなった。
「お、起きたか?」
がらがらした声、でも聞いたことがある。一度開いた目をもう一回瞬きした。僕がさっきご飯を食べた席に、ゲリュオンが座ってる。
「ゲリュオン?」
「そうだ。子猫は気に入ったか?」
言われて慌てて確認すると、子猫は床で飛び跳ねていた。ゲリュオンが持ったリボンの先を追いかけて、右へ左へすばしっこく動く。
「うん。僕がお母さんになるの」
「げっ、まさかこの幼さで手ぇ出されたのかよ……」
何のお話だろう。首をかしげる僕の後ろで、セティが低い声を出した。
「出入り禁止にされたいのか?」
「すまん、何も言わん」
謝るゲリュオンが肩を寄せて小さくなったのを見て、何だかおかしくなって笑ってしまった。
子猫は起き上がって、よたよた歩く。足がすごく短いんだ、この子。器の中のご飯を匂い嗅いで、すぐに食べ始めた。小さい牙と舌で食べる姿を見ていると、目蓋がとろんと落ちてくる。
あ、寝ちゃう。
起きてたい気分と、眠い身体がケンカしてるみたい。僕はお母さんになるんだから、寝てばかりじゃダメだと思う。何度も閉じる目蓋を押し上げた。ずずっと鼻が鳴る。少し息が苦しい。
「ん? イシス……熱がないか?」
首を横に振る。すると額に手のひらが押し当てられた。ひんやりする。折角開いた目蓋がまた閉じちゃいそう。なんか気持ちいい。ふらっと傾いた体が、そのままベッドに倒れちゃいそう。
「具合悪くないのか」
確認する声にまた横に首を振った。具合も気分も悪くないよ。ただ眠いだけ。ご飯を食べ終わった子猫が、僕の手に擦り寄った。
くにゃくにゃして、柔らかくて温かい。僕がしてもらったみたいに撫でていると、セティが溜め息をついた。顔をあげた僕に困ったように笑いかける。
「オレも寝るから、一緒に休もう」
よく分からないけど、セティは眠いの? なら、僕も付き合ってあげる。
「一緒に、寝る」
「いい子だ。おいで」
窓にくっついた方へセティが乗った。真ん中が僕、抱っこしたフォンの隙間に子猫が入ってくる。みんな一緒に寝るのは初めてだね。
「にぃ」
子猫は器用に体を舐めていたけど、ひと鳴きすると僕の顔の横で丸くなった。体が柔らかいんだな。僕には真似できそうにない。背中に当たるセティの体が温かくて、抱き締める腕が嬉しくて……目を閉じた。
セティが大好き、子猫も好きだけど……もっとずっと好き。僕はセティのお嫁さんになるから、ちゃんとお母さんもしなくちゃ。でも今だけ少し休んでもいいかな。起きたらちゃんとするね。
神様にごめんなさいして、そこから覚えていない。夢を見た気がする。金の髪の綺麗な人が、何か言ってた。でも聞こえなくて、セティがいないから慌てる。どうしよう、この夢から出られなくなったらやだ。
そこで額に何かが触れた。最初はひんやりして、次は温かい。それが目の辺りを優しく覆った。気持ちいい。セティの手みたい。怖い夢が消えて、髪が金色の人もいなくなった。
「お、起きたか?」
がらがらした声、でも聞いたことがある。一度開いた目をもう一回瞬きした。僕がさっきご飯を食べた席に、ゲリュオンが座ってる。
「ゲリュオン?」
「そうだ。子猫は気に入ったか?」
言われて慌てて確認すると、子猫は床で飛び跳ねていた。ゲリュオンが持ったリボンの先を追いかけて、右へ左へすばしっこく動く。
「うん。僕がお母さんになるの」
「げっ、まさかこの幼さで手ぇ出されたのかよ……」
何のお話だろう。首をかしげる僕の後ろで、セティが低い声を出した。
「出入り禁止にされたいのか?」
「すまん、何も言わん」
謝るゲリュオンが肩を寄せて小さくなったのを見て、何だかおかしくなって笑ってしまった。
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