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10.猫舌に、あーん ※微
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セティが段を歩いていくと、広い場所に出た。たくさん椅子と机があって、びっくりするくらい人間がいる。人間がたくさんだ。驚いて目を見開いていると、セティが僕をぎゅっとした。顔がセティの首にくっついて前が見えない。
すんと匂いを嗅ぐと、すごく安心した。セティは痛いことしないし、血の臭いもしないから怖くない。誰かと話した後、セティが座ったみたい。下に落ちる感じ、ぞわぞわ気持ち悪い。お腹より少し上あたりがぶわっとした。でも消えると何か物足りない。もう一回やってみたいけど。
セティに言おうか迷った僕は、セティの膝の上だ。頭の上でまだ話をしていて、頭を軽く押さえられていた。顔を上げちゃダメなんだね。大人しく動かないで待つ。
「もういいぞ」
さっき見た部屋の中なんだけど、人間がいない? きょろきょろしたら、後ろにいた。大声上げる怖い人は身体が大きくて、どんと机を叩く。その人の机ががしゃんと揺れたので、慌ててセティにしがみついた。
「平気だ。オレがいるだろ」
「うん」
声を出して返事する。またこっそり覗いたが、白い服はいなかった。違う色と白を着てる人間はいるけど、真っ白の人間はいない。僕に食べ物持ってきたのは、白い服の人間だけど。食べ物来ないのかな。セティを見ると、すごく嬉しそうな顔で僕を見ていた。
青い目がとろんとして、甘そう。服をしっかり掴んで伸びをする。届かないので手を伸ばしたが、目に触ると痛いから我慢。でもきっと甘いと思う。舌とどっちが甘いかな。唇を近づけて甘いのだけ……そう思ったところに、甲高い声の人間が近づいた。
早口で何か言って、いくつも平たい入れ物を置いていく。嗅いだことのない香りにくんと鼻を動かした。
「食べるぞ。ほら、こうやって座れ」
脇の下に手を入れ持ち上げられて、セティのお腹に僕の背中がくっついた。背中が温かくて寄り掛かる。さらに温かくなって上を見上げると、セティが笑顔になった。顔がかっと熱くなる。そこでぐぅとお腹が情けない音で鳴った。
「悪い、お腹空いちゃったな。食べよう」
平らな皿に乗った物を口元に運ばれる。くん……匂ってみた。食べ物かな? 口に入れても平気? オレンジ色の塊はいい匂い、だと思う。銀色の棒みたいなのに乗っていた。
「口を開けて、あーんだ」
「あーん?」
熱が出てお薬を飲むとき、お爺ちゃんが「あーん」してくれた。さっき顔が熱くなったから、僕は熱があるんだ。素直に口を開けると、銀の光る棒が入ってきた。乗っていた食べ物を中に置いていく。
「っ、! は、ふ……っ、う」
舌の上が痛い。どうしよう、吐いたら怒られる? 痛い、じわっと目に涙が滲む。吐かないように口を両手で押さえた。さっきの甲高い声の人が走ってきて、コップを差し出された。困った顔のセティがコップの水を飲んで、僕にキスする。
冷たいお水が入ってきて、舌の上の痛いのが楽になる。もっと欲しい。甘い、もっと。両手を伸ばして、体の向きを入れ替える。膝の上で伸びをして両手をセティの頬に当てた。もっと……。
「ごめんな。猫舌だったか」
ちゅっと音を立てて終わったキスが欲しくて、セティに「もっと」とお願いした。でも今はご飯の時間だから後にしようと言われて、大人しく座る。ご飯は食べ物のことで、後にするのは約束だと教えてもらった。
「約束は絶対に守る。だから今はご飯しような」
約束は守らないといけないらしい。後で……ご飯したらキスしてもらえる。でもご飯は痛かった。しょんぼり肩を落として待つ。甘いの欲しいから、痛くても我慢する。ぐっと拳を握って口を開けると、苦笑いしたセティが頭をぐりぐりした。
「冷ましてやるから待ってろ」
ふぅと息をかけてから、僕の空いた口に食べ物を入れる。今度は痛くない。もぐもぐと噛んでみた。柔らかいパンより硬くて、でも美味しい。食べたことない味に、飲み込んですぐ口を開ける。
「あーん」
嬉しそうな顔になったセティが、また食べ物を入れてくれた。
すんと匂いを嗅ぐと、すごく安心した。セティは痛いことしないし、血の臭いもしないから怖くない。誰かと話した後、セティが座ったみたい。下に落ちる感じ、ぞわぞわ気持ち悪い。お腹より少し上あたりがぶわっとした。でも消えると何か物足りない。もう一回やってみたいけど。
セティに言おうか迷った僕は、セティの膝の上だ。頭の上でまだ話をしていて、頭を軽く押さえられていた。顔を上げちゃダメなんだね。大人しく動かないで待つ。
「もういいぞ」
さっき見た部屋の中なんだけど、人間がいない? きょろきょろしたら、後ろにいた。大声上げる怖い人は身体が大きくて、どんと机を叩く。その人の机ががしゃんと揺れたので、慌ててセティにしがみついた。
「平気だ。オレがいるだろ」
「うん」
声を出して返事する。またこっそり覗いたが、白い服はいなかった。違う色と白を着てる人間はいるけど、真っ白の人間はいない。僕に食べ物持ってきたのは、白い服の人間だけど。食べ物来ないのかな。セティを見ると、すごく嬉しそうな顔で僕を見ていた。
青い目がとろんとして、甘そう。服をしっかり掴んで伸びをする。届かないので手を伸ばしたが、目に触ると痛いから我慢。でもきっと甘いと思う。舌とどっちが甘いかな。唇を近づけて甘いのだけ……そう思ったところに、甲高い声の人間が近づいた。
早口で何か言って、いくつも平たい入れ物を置いていく。嗅いだことのない香りにくんと鼻を動かした。
「食べるぞ。ほら、こうやって座れ」
脇の下に手を入れ持ち上げられて、セティのお腹に僕の背中がくっついた。背中が温かくて寄り掛かる。さらに温かくなって上を見上げると、セティが笑顔になった。顔がかっと熱くなる。そこでぐぅとお腹が情けない音で鳴った。
「悪い、お腹空いちゃったな。食べよう」
平らな皿に乗った物を口元に運ばれる。くん……匂ってみた。食べ物かな? 口に入れても平気? オレンジ色の塊はいい匂い、だと思う。銀色の棒みたいなのに乗っていた。
「口を開けて、あーんだ」
「あーん?」
熱が出てお薬を飲むとき、お爺ちゃんが「あーん」してくれた。さっき顔が熱くなったから、僕は熱があるんだ。素直に口を開けると、銀の光る棒が入ってきた。乗っていた食べ物を中に置いていく。
「っ、! は、ふ……っ、う」
舌の上が痛い。どうしよう、吐いたら怒られる? 痛い、じわっと目に涙が滲む。吐かないように口を両手で押さえた。さっきの甲高い声の人が走ってきて、コップを差し出された。困った顔のセティがコップの水を飲んで、僕にキスする。
冷たいお水が入ってきて、舌の上の痛いのが楽になる。もっと欲しい。甘い、もっと。両手を伸ばして、体の向きを入れ替える。膝の上で伸びをして両手をセティの頬に当てた。もっと……。
「ごめんな。猫舌だったか」
ちゅっと音を立てて終わったキスが欲しくて、セティに「もっと」とお願いした。でも今はご飯の時間だから後にしようと言われて、大人しく座る。ご飯は食べ物のことで、後にするのは約束だと教えてもらった。
「約束は絶対に守る。だから今はご飯しような」
約束は守らないといけないらしい。後で……ご飯したらキスしてもらえる。でもご飯は痛かった。しょんぼり肩を落として待つ。甘いの欲しいから、痛くても我慢する。ぐっと拳を握って口を開けると、苦笑いしたセティが頭をぐりぐりした。
「冷ましてやるから待ってろ」
ふぅと息をかけてから、僕の空いた口に食べ物を入れる。今度は痛くない。もぐもぐと噛んでみた。柔らかいパンより硬くて、でも美味しい。食べたことない味に、飲み込んですぐ口を開ける。
「あーん」
嬉しそうな顔になったセティが、また食べ物を入れてくれた。
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