11 / 321
10.猫舌に、あーん ※微
しおりを挟む
セティが段を歩いていくと、広い場所に出た。たくさん椅子と机があって、びっくりするくらい人間がいる。人間がたくさんだ。驚いて目を見開いていると、セティが僕をぎゅっとした。顔がセティの首にくっついて前が見えない。
すんと匂いを嗅ぐと、すごく安心した。セティは痛いことしないし、血の臭いもしないから怖くない。誰かと話した後、セティが座ったみたい。下に落ちる感じ、ぞわぞわ気持ち悪い。お腹より少し上あたりがぶわっとした。でも消えると何か物足りない。もう一回やってみたいけど。
セティに言おうか迷った僕は、セティの膝の上だ。頭の上でまだ話をしていて、頭を軽く押さえられていた。顔を上げちゃダメなんだね。大人しく動かないで待つ。
「もういいぞ」
さっき見た部屋の中なんだけど、人間がいない? きょろきょろしたら、後ろにいた。大声上げる怖い人は身体が大きくて、どんと机を叩く。その人の机ががしゃんと揺れたので、慌ててセティにしがみついた。
「平気だ。オレがいるだろ」
「うん」
声を出して返事する。またこっそり覗いたが、白い服はいなかった。違う色と白を着てる人間はいるけど、真っ白の人間はいない。僕に食べ物持ってきたのは、白い服の人間だけど。食べ物来ないのかな。セティを見ると、すごく嬉しそうな顔で僕を見ていた。
青い目がとろんとして、甘そう。服をしっかり掴んで伸びをする。届かないので手を伸ばしたが、目に触ると痛いから我慢。でもきっと甘いと思う。舌とどっちが甘いかな。唇を近づけて甘いのだけ……そう思ったところに、甲高い声の人間が近づいた。
早口で何か言って、いくつも平たい入れ物を置いていく。嗅いだことのない香りにくんと鼻を動かした。
「食べるぞ。ほら、こうやって座れ」
脇の下に手を入れ持ち上げられて、セティのお腹に僕の背中がくっついた。背中が温かくて寄り掛かる。さらに温かくなって上を見上げると、セティが笑顔になった。顔がかっと熱くなる。そこでぐぅとお腹が情けない音で鳴った。
「悪い、お腹空いちゃったな。食べよう」
平らな皿に乗った物を口元に運ばれる。くん……匂ってみた。食べ物かな? 口に入れても平気? オレンジ色の塊はいい匂い、だと思う。銀色の棒みたいなのに乗っていた。
「口を開けて、あーんだ」
「あーん?」
熱が出てお薬を飲むとき、お爺ちゃんが「あーん」してくれた。さっき顔が熱くなったから、僕は熱があるんだ。素直に口を開けると、銀の光る棒が入ってきた。乗っていた食べ物を中に置いていく。
「っ、! は、ふ……っ、う」
舌の上が痛い。どうしよう、吐いたら怒られる? 痛い、じわっと目に涙が滲む。吐かないように口を両手で押さえた。さっきの甲高い声の人が走ってきて、コップを差し出された。困った顔のセティがコップの水を飲んで、僕にキスする。
冷たいお水が入ってきて、舌の上の痛いのが楽になる。もっと欲しい。甘い、もっと。両手を伸ばして、体の向きを入れ替える。膝の上で伸びをして両手をセティの頬に当てた。もっと……。
「ごめんな。猫舌だったか」
ちゅっと音を立てて終わったキスが欲しくて、セティに「もっと」とお願いした。でも今はご飯の時間だから後にしようと言われて、大人しく座る。ご飯は食べ物のことで、後にするのは約束だと教えてもらった。
「約束は絶対に守る。だから今はご飯しような」
約束は守らないといけないらしい。後で……ご飯したらキスしてもらえる。でもご飯は痛かった。しょんぼり肩を落として待つ。甘いの欲しいから、痛くても我慢する。ぐっと拳を握って口を開けると、苦笑いしたセティが頭をぐりぐりした。
「冷ましてやるから待ってろ」
ふぅと息をかけてから、僕の空いた口に食べ物を入れる。今度は痛くない。もぐもぐと噛んでみた。柔らかいパンより硬くて、でも美味しい。食べたことない味に、飲み込んですぐ口を開ける。
「あーん」
嬉しそうな顔になったセティが、また食べ物を入れてくれた。
すんと匂いを嗅ぐと、すごく安心した。セティは痛いことしないし、血の臭いもしないから怖くない。誰かと話した後、セティが座ったみたい。下に落ちる感じ、ぞわぞわ気持ち悪い。お腹より少し上あたりがぶわっとした。でも消えると何か物足りない。もう一回やってみたいけど。
セティに言おうか迷った僕は、セティの膝の上だ。頭の上でまだ話をしていて、頭を軽く押さえられていた。顔を上げちゃダメなんだね。大人しく動かないで待つ。
「もういいぞ」
さっき見た部屋の中なんだけど、人間がいない? きょろきょろしたら、後ろにいた。大声上げる怖い人は身体が大きくて、どんと机を叩く。その人の机ががしゃんと揺れたので、慌ててセティにしがみついた。
「平気だ。オレがいるだろ」
「うん」
声を出して返事する。またこっそり覗いたが、白い服はいなかった。違う色と白を着てる人間はいるけど、真っ白の人間はいない。僕に食べ物持ってきたのは、白い服の人間だけど。食べ物来ないのかな。セティを見ると、すごく嬉しそうな顔で僕を見ていた。
青い目がとろんとして、甘そう。服をしっかり掴んで伸びをする。届かないので手を伸ばしたが、目に触ると痛いから我慢。でもきっと甘いと思う。舌とどっちが甘いかな。唇を近づけて甘いのだけ……そう思ったところに、甲高い声の人間が近づいた。
早口で何か言って、いくつも平たい入れ物を置いていく。嗅いだことのない香りにくんと鼻を動かした。
「食べるぞ。ほら、こうやって座れ」
脇の下に手を入れ持ち上げられて、セティのお腹に僕の背中がくっついた。背中が温かくて寄り掛かる。さらに温かくなって上を見上げると、セティが笑顔になった。顔がかっと熱くなる。そこでぐぅとお腹が情けない音で鳴った。
「悪い、お腹空いちゃったな。食べよう」
平らな皿に乗った物を口元に運ばれる。くん……匂ってみた。食べ物かな? 口に入れても平気? オレンジ色の塊はいい匂い、だと思う。銀色の棒みたいなのに乗っていた。
「口を開けて、あーんだ」
「あーん?」
熱が出てお薬を飲むとき、お爺ちゃんが「あーん」してくれた。さっき顔が熱くなったから、僕は熱があるんだ。素直に口を開けると、銀の光る棒が入ってきた。乗っていた食べ物を中に置いていく。
「っ、! は、ふ……っ、う」
舌の上が痛い。どうしよう、吐いたら怒られる? 痛い、じわっと目に涙が滲む。吐かないように口を両手で押さえた。さっきの甲高い声の人が走ってきて、コップを差し出された。困った顔のセティがコップの水を飲んで、僕にキスする。
冷たいお水が入ってきて、舌の上の痛いのが楽になる。もっと欲しい。甘い、もっと。両手を伸ばして、体の向きを入れ替える。膝の上で伸びをして両手をセティの頬に当てた。もっと……。
「ごめんな。猫舌だったか」
ちゅっと音を立てて終わったキスが欲しくて、セティに「もっと」とお願いした。でも今はご飯の時間だから後にしようと言われて、大人しく座る。ご飯は食べ物のことで、後にするのは約束だと教えてもらった。
「約束は絶対に守る。だから今はご飯しような」
約束は守らないといけないらしい。後で……ご飯したらキスしてもらえる。でもご飯は痛かった。しょんぼり肩を落として待つ。甘いの欲しいから、痛くても我慢する。ぐっと拳を握って口を開けると、苦笑いしたセティが頭をぐりぐりした。
「冷ましてやるから待ってろ」
ふぅと息をかけてから、僕の空いた口に食べ物を入れる。今度は痛くない。もぐもぐと噛んでみた。柔らかいパンより硬くて、でも美味しい。食べたことない味に、飲み込んですぐ口を開ける。
「あーん」
嬉しそうな顔になったセティが、また食べ物を入れてくれた。
105
お気に入りに追加
1,359
あなたにおすすめの小説
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
【完結】少年王が望むは…
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる