【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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05.このまま置いておけないな(2)(SIDEセティ)

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*****SIDE セティ



「これはお前のだろ」

 食事を差し出す子供は不思議そうにしながら、また箱ごと食事を押しやった。薄い塩味の冷めたスープと甘さの足りないばさばさのパン。それでもこの子供にとって大切な食事だろうに、初見の人間に差し出す。

「くれるのか?」

 首が折れるのではと心配になる勢いで縦に振り、にこにこと笑う。ありがとうと礼を口にすれば、ほんわりと表情が和らいだ。

 ああ、本当に可愛い子だな。これはこの子にとって最上級の持て成しだ。一緒に食べようとこっちに呼べば、手招きの動作に驚いた子供が丸くなった。震えながら頭を庇う痛々しい姿に、自然と声が優しくなる。

「怖くないぞ」

 そう告げて毛布を置いて立ち上がった。どうやら人との接触に興味はあるのに、怖いらしい。洞窟は外より暖かいが、どうしたって石造りの神殿は寒いはずだ。素足の子供を温めるため、ベッド脇の絨毯を敷いて、直接床に触れないよう胡坐の上に座らせた。

 オレの顔を見上げ、胡坐をかいた足を眺め慌てふためく。小動物みたいで可愛い。

「一緒に食べようぜ。お前、話せないの?」

「はな、せる」

 驚くほど耳に馴染む声は、子供特有の高い音だった。街で聞くと耳障りなのに、どこか心地よい。もっと聞いていたいと思った。この声を潰されてたら、神殿に出入りする奴を全員殺してたかも。物騒なことを考える。

 子供の振る舞いに手を付けなければ、悲しむだろう。粗末な食事の入った箱を確認して、思わず天を仰いだ。成長期の子供に、肉も野菜もほとんどない汁ものとパンだけ? 確かに軽すぎるし、腕や足も棒のように細い。

「んっと……嘘だろ、食器もないのかよ」

 どんな生活させてるんだ? この子は邪神への供物だから、生贄同然で教育は不要とでも思ったか? 口をつけて啜れと示す子供に頷いてやり、不安にさせないよう笑顔を浮かべる。

 ダメだ。この子をこのまま置いておけないな。

 子供服はすべて綿の生成り、それを数枚収納空間へ放り込んだ。毛布を大切そうに抱いているから持っていくのかと思えば、必死で掴んで抵抗する。爪をたてて抵抗する子猫を思い浮かべ、笑ってしまった。子供の身体をぐるぐる巻きにする。

 見回した先に靴がなくて、素足を鎖で繋がれていたから……この子は外を知らないだろう。いきなり歩かせると足を痛めてしまう。大して重くないので抱き上げて移動することにした。

「靴がないから、抱っこしてくか」

 意味が分からない様子で見上げる簀巻き状態の子供。彼の腕を毛布から出して首に回させ、腕に座らせるように縦抱っこした。
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