247 / 266
7-1 わたしはあなたの side A
5 詐欺師でもないけれど
しおりを挟む
◆
「おはよう、珠紀、ちょっといい?」
「いいけど、なあに? 和音ちゃん」
翌日の学校は、昨日の祐利奈の件にもかかわらず、余りにも普段通りだった。
まあ、昨日も生徒達の動揺があってこその異様な空気感が充満していただけで、先生は普段通りのカリキュラムをこなしていたけれど。
珠紀がいつも朝一番に登校している事を和音は知っていたから、いつもより少し早めに家を出て、いつもより早めに学校について、そして、いつもよりも少しだけ長い朝のホームルームまでの間に、珠紀に話しかけた。
「あの、ね、ちょっと、今日の放課後、付き合ってほしくて」
「わたしが? 和音ちゃんに?」
珠紀はそう言って、きょときょとと瞬きをしてから、どうしようかと迷うようにうーん、とわざとらしく小さく唸る。
「うん、珠紀は、友達だから」
そう、和音が少しの罪悪感を隠しながら言えば、珠紀は驚いたように一度目を見開いてから、どこか満足そうに微笑んだ。
「わかったわ。で、それって何の用?」
――おそらく、コレを引き合いに出せば、向こうは拒絶しない、と思う。
とは、昨日のロビンの言だ。
その通りに事が運んだ事に、恐怖未満の何かを感じながら、和音は同じく言われた通りの理由を口にした。
「昨日、帰り道の途中で、ちょっと具合が悪くなって……その時に助けてくれたおにいさんとおねえさんに、ハンカチ、返したくて……ここに返しに来てって場所は教えてもらったんだけど、一人で行くの、ちょっと怖くて」
――こういうのは、嘘と本当を混ぜ合わせた方がいい。
そう言ってたのもロビンだし、実際に織歌はこのためにハンカチを貸してくれた。
「珠紀がいたら、心強いなって」
和音の言葉に、重い黒髪を揺らして小首を傾げた珠紀は、その顔に刻んだ満足げな笑みを更に深めた。
「和音ちゃんがそこまで言うなら、いいわ」
そして、和音の依頼を了承した。
◆
「……ハンカチを返しに来る、というのはどうだろう」
しばしの沈黙の後に、ロビンがそう言った。
「その時に、付き添いとしてその子を連れて来ればいい」
「でも、どこに……」
「ボクらの家の方がいい。不測の事態にも備えられるし、実際、ボクとオリカだけじゃ手に負えない部分もある」
気を利かせた織歌が、自分の鞄からペンとメモ帳を取り出して、ロビンに手渡した。
受け取ったロビンは、ペンをメモ帳にさらさらと走らせて、ぴっと一枚切り放すと、和音の前にそれを差し出す。
和音が受け取ったその紙には、この辺りでも比較的高級めなはずの住宅街付近の住所が書きつけられていた。
「オリカ、この後、ウチに寄って、センセイとヒロへの説明、お願いしていい? ちょっとボクは準備をする必要があるから」
「え、あ、はい。わかりました。まあ、もともといつも通り、寄るつもりでしたし」
和音が住所を確認している内に、ロビンと織歌は何やら情報伝達の算段を立てている。
「あと、ハンカチ貸してあげて。こういうのは、嘘と本当を混ぜ合わせた方がいい」
「ああ、はい。なるほど、詐欺師のよくある手口と同じですね」
そう言って、織歌はごそごそとポケットからハンカチを取り出して、和音に差し出してくる。
その横でロビンが渋面を作っているのが、少しおかしくて、和音はなんとか、笑いを我慢しながらハンカチを受け取った。
「おはよう、珠紀、ちょっといい?」
「いいけど、なあに? 和音ちゃん」
翌日の学校は、昨日の祐利奈の件にもかかわらず、余りにも普段通りだった。
まあ、昨日も生徒達の動揺があってこその異様な空気感が充満していただけで、先生は普段通りのカリキュラムをこなしていたけれど。
珠紀がいつも朝一番に登校している事を和音は知っていたから、いつもより少し早めに家を出て、いつもより早めに学校について、そして、いつもよりも少しだけ長い朝のホームルームまでの間に、珠紀に話しかけた。
「あの、ね、ちょっと、今日の放課後、付き合ってほしくて」
「わたしが? 和音ちゃんに?」
珠紀はそう言って、きょときょとと瞬きをしてから、どうしようかと迷うようにうーん、とわざとらしく小さく唸る。
「うん、珠紀は、友達だから」
そう、和音が少しの罪悪感を隠しながら言えば、珠紀は驚いたように一度目を見開いてから、どこか満足そうに微笑んだ。
「わかったわ。で、それって何の用?」
――おそらく、コレを引き合いに出せば、向こうは拒絶しない、と思う。
とは、昨日のロビンの言だ。
その通りに事が運んだ事に、恐怖未満の何かを感じながら、和音は同じく言われた通りの理由を口にした。
「昨日、帰り道の途中で、ちょっと具合が悪くなって……その時に助けてくれたおにいさんとおねえさんに、ハンカチ、返したくて……ここに返しに来てって場所は教えてもらったんだけど、一人で行くの、ちょっと怖くて」
――こういうのは、嘘と本当を混ぜ合わせた方がいい。
そう言ってたのもロビンだし、実際に織歌はこのためにハンカチを貸してくれた。
「珠紀がいたら、心強いなって」
和音の言葉に、重い黒髪を揺らして小首を傾げた珠紀は、その顔に刻んだ満足げな笑みを更に深めた。
「和音ちゃんがそこまで言うなら、いいわ」
そして、和音の依頼を了承した。
◆
「……ハンカチを返しに来る、というのはどうだろう」
しばしの沈黙の後に、ロビンがそう言った。
「その時に、付き添いとしてその子を連れて来ればいい」
「でも、どこに……」
「ボクらの家の方がいい。不測の事態にも備えられるし、実際、ボクとオリカだけじゃ手に負えない部分もある」
気を利かせた織歌が、自分の鞄からペンとメモ帳を取り出して、ロビンに手渡した。
受け取ったロビンは、ペンをメモ帳にさらさらと走らせて、ぴっと一枚切り放すと、和音の前にそれを差し出す。
和音が受け取ったその紙には、この辺りでも比較的高級めなはずの住宅街付近の住所が書きつけられていた。
「オリカ、この後、ウチに寄って、センセイとヒロへの説明、お願いしていい? ちょっとボクは準備をする必要があるから」
「え、あ、はい。わかりました。まあ、もともといつも通り、寄るつもりでしたし」
和音が住所を確認している内に、ロビンと織歌は何やら情報伝達の算段を立てている。
「あと、ハンカチ貸してあげて。こういうのは、嘘と本当を混ぜ合わせた方がいい」
「ああ、はい。なるほど、詐欺師のよくある手口と同じですね」
そう言って、織歌はごそごそとポケットからハンカチを取り出して、和音に差し出してくる。
その横でロビンが渋面を作っているのが、少しおかしくて、和音はなんとか、笑いを我慢しながらハンカチを受け取った。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
「お前のカメラ、ずっと映ってるよ」〜ホラースポット配信者が気づいた時には、もう遅かった〜
まさき
ホラー
ホラースポット専門のYouTuber・桐島悠は、霊も怪異も一切信じない合理主義者だ。
ある廃病院での配信中、今まで感じたことのない「違和感」を覚えた。しかし撮影は無事終了。その後も普通に配信を続け、あの夜のことなど忘れかけていた頃——深夜、金縛りにあう。
疲れてるだけだ。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
記憶の空白。知らない足跡。動画に毎回映り込む、同じ女の姿。そして——「やっと、見つけた」という声。
カメラが映し続けていたのは、心霊スポットではなかった。もっとずっと、近いところにいるものだった。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する
青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。
両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。
母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。
リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。
マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。
すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。
修道院で聖女様に覚醒して……
大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが
マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない
完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく
今回も短編です
誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる