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7-1 わたしはあなたの side A
6 木星のⅥ
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「あとは……オリカ、青のペン、ある?」
借りたペンだけを返しながら、ロビンが織歌にそう尋ねた。
なんだろう、と和音は思うけれど、織歌も少し不思議そうな表情をしながら、鞄から取り出したペンケースに、返されたペンと入れ違うようにして、多色ボールペンを取り出してロビンに渡す。
「オリカと出くわしたのは幸いだったけど、それがいつまで保つか、保証できないしね」
そして、青のペン先を出した多色ボールペンで、ロビンはメモ帳にまず二重円を描くと、メモ帳を回転させながら、その円と円の間に何かの記号を迷いなく書いていく。
その記号を書き終わると、今度は内側の円の中央から四等分するような十字架を描き、さらにそのそれぞれの突き出たところにも、メモ帳を回転させながら、また記号を書いていった。
「Thus shalt thou never perish……うん、まあ、確実にないよりはマシだろう」
仕上げのように何かを呟いてから、ロビンはぴりぴりとメモ帳を切り放すと、はい、と和音に差し出してきた。
和音は恐る恐るで受け取って、その図をしげしげと眺めてみる。しかしまあ、よくもフリーハンドでこんな綺麗な円や直線を描けるものだ。
「それ、特に学校で、できる限り身につけておいて」
「それなら、生徒手帳カバーに挟んでおくのがいいですかね。折っても問題ないですよね?」
織歌の確認にロビンが頷いたので、和音はブラウスの胸ポケットから生徒手帳を出して、そのビニール製カバーのポケットに、もらったメモを折り畳んでから挟んで、また胸ポケットに戻す。
「ところで、今のは一体……?」
「The sixth pentacle of jupiter by The key of solomon the king」
織歌の質問へのロビンの答えは完全に英語だった。
辛うじて一部だけ聞き取れはしたが、それ以上、和音にはわからない。
説明してこないのであれば、和音が理解してなくてもよいもの、ということなんだろう、と英語に対して苦手意識が先行した和音は自己完結する。
「あの、ここまで、決まったところでなんですけど……」
唯一の懸念点を和音が口にし始めれば、織歌もロビンもすぐに和音に向き直る。
「付き添い、断られたら、どうすれば……」
「それは、確かに……」
「いや」
ロビンがコーヒーを口にしながら、懸念を否定する。
「キミがその子を友達として信用している、というようなことを口にしてみてほしい。勿論、相手を信用させるための見せかけで構わない。おそらく、コレを引き合いに出せば、向こうは拒絶しない、と思う」
「可能性として、どれぐらいですか?」
織歌の問いに、ロビンが眉間に皺を寄せて、何故かじっと和音を見つめること、しばし。
「……うーん、七、割?」
「ゲームでのかみなりの命中率と同じですか……」
「え、なんでそんなの覚えてて、出てくるの?」
ロビンがぎょっとした顔で織歌にそう言う。
ロビンの言う事は最もだ、と和音も思った。
少しして、気を取り直したように、ロビンは一気にコーヒーを呷ってそれから口を開く。
「まあ、そしたら、それはその時、にしよう。今の時点では杞憂以外に他ならないし、ボクらとしては情報がないから、それ以外に何も選択肢がない」
「七割なら、当たる時は割りと当たりますしね」
「……いや、だから、それ基準で考えるのはどうかと思う」
そう小声でツッコむ様子がなんとなく締まらなくて、和音は思わず声を上げて笑った。
借りたペンだけを返しながら、ロビンが織歌にそう尋ねた。
なんだろう、と和音は思うけれど、織歌も少し不思議そうな表情をしながら、鞄から取り出したペンケースに、返されたペンと入れ違うようにして、多色ボールペンを取り出してロビンに渡す。
「オリカと出くわしたのは幸いだったけど、それがいつまで保つか、保証できないしね」
そして、青のペン先を出した多色ボールペンで、ロビンはメモ帳にまず二重円を描くと、メモ帳を回転させながら、その円と円の間に何かの記号を迷いなく書いていく。
その記号を書き終わると、今度は内側の円の中央から四等分するような十字架を描き、さらにそのそれぞれの突き出たところにも、メモ帳を回転させながら、また記号を書いていった。
「Thus shalt thou never perish……うん、まあ、確実にないよりはマシだろう」
仕上げのように何かを呟いてから、ロビンはぴりぴりとメモ帳を切り放すと、はい、と和音に差し出してきた。
和音は恐る恐るで受け取って、その図をしげしげと眺めてみる。しかしまあ、よくもフリーハンドでこんな綺麗な円や直線を描けるものだ。
「それ、特に学校で、できる限り身につけておいて」
「それなら、生徒手帳カバーに挟んでおくのがいいですかね。折っても問題ないですよね?」
織歌の確認にロビンが頷いたので、和音はブラウスの胸ポケットから生徒手帳を出して、そのビニール製カバーのポケットに、もらったメモを折り畳んでから挟んで、また胸ポケットに戻す。
「ところで、今のは一体……?」
「The sixth pentacle of jupiter by The key of solomon the king」
織歌の質問へのロビンの答えは完全に英語だった。
辛うじて一部だけ聞き取れはしたが、それ以上、和音にはわからない。
説明してこないのであれば、和音が理解してなくてもよいもの、ということなんだろう、と英語に対して苦手意識が先行した和音は自己完結する。
「あの、ここまで、決まったところでなんですけど……」
唯一の懸念点を和音が口にし始めれば、織歌もロビンもすぐに和音に向き直る。
「付き添い、断られたら、どうすれば……」
「それは、確かに……」
「いや」
ロビンがコーヒーを口にしながら、懸念を否定する。
「キミがその子を友達として信用している、というようなことを口にしてみてほしい。勿論、相手を信用させるための見せかけで構わない。おそらく、コレを引き合いに出せば、向こうは拒絶しない、と思う」
「可能性として、どれぐらいですか?」
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「……うーん、七、割?」
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「え、なんでそんなの覚えてて、出てくるの?」
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ロビンの言う事は最もだ、と和音も思った。
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「まあ、そしたら、それはその時、にしよう。今の時点では杞憂以外に他ならないし、ボクらとしては情報がないから、それ以外に何も選択肢がない」
「七割なら、当たる時は割りと当たりますしね」
「……いや、だから、それ基準で考えるのはどうかと思う」
そう小声でツッコむ様子がなんとなく締まらなくて、和音は思わず声を上げて笑った。
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