上 下
128 / 266
4-1 うろを満たすは side A

1 見ている

しおりを挟む


いささ直截的ちょくせつてきな表現になりますが、まとめさせていただきますね」

流暢りゅうちょうに日本語をあやつる目の前の金髪の青年は、そのやたらとキツい目つきに反して、丁寧にそう言った。
随分ずいぶんと目つきで損をしてそうだ、なんて美佳みかは思った。

長閑のどかな昼下りの喫茶店。
その穏やかな空間と、外の明るさとは裏腹に、美佳みかは駆け込んだ寺から紹介された霊能力者らしい人たちに、まとめることも覚束おぼつかない経緯を説明していた。

指定された時間に現れたのは、カップルとも見紛みまがう、美佳みかよりも明らかに若い青年と少女とも呼べそうな女性の二人組だった。

ロビン・イングラムと名乗った青年は、ひょろりと背が高く、空の色と深さそのままの色の三白眼さんぱくがんにシンプルなメガネをかけて、そのあたりの大学生にまぎれるような、シンプルなTシャツに薄手のジャケットと細身の黒いジーンズにローファーという出で立ちをしている。
こうして話している感じも合わせて、ザ・知的スマート、と言った感じが強い。

一方、その助手といった体で動いている少女、唐国からくにひろの方は、ボーイッシュなウルフショートと、ボーダーの七分袖のプルオーバーに紺のスキニーパンツ、足元はスニーカーと、とても活動的なで立ちである。

そうしてロビンが会話の主導権をにぎった横で、ひろがノートを開いて、美佳みかの話のポイントを取りまとめている。
一通り説明を終えて、話を引き出すことにてっしていたロビンは、美佳みかおびえように配慮はいりょしめした上で話をまとめて行く。

「まず一つ、コシバミカさん、アナタは過去にひとりかくれんぼをおこなったことがある、と」
「はい」

ちらりとひろの反対側から見ても几帳面きちょうめんな文字が並んだノートに視線を向けつつ、ロビンが言う。

「その時には物理的におかしいことは発生せず、ただアナタはからみつくような視線を感じていた、と」
「そうです……当時は、大学生になったばかりで、ひとり暮らしを始めて、怖いもの知らず、でしたから」

しゃっとひろが書き留めた内容に三色ボールペンの赤で下線を引く。
その赤が美佳みかの心をひっかくような気がした。

「確かにめられたことではないですが、それなりの人が遊びとしてやっていることです。それに、過去はやんでもどうしようもないですから」

美佳みかの様子を見て、ロビンはドライにそう言い切る。
それはただめているのではなく、事実確認をしているだけ、ということを強調していた。

「そして、最近、その時と同じ視線を感じるようになった、と」
「はい……」
「その点についてですが、視線を感じるようになった頃、アナタ自身や周囲で変わったことはありましたか?」

そう言われて、美佳みかはそっと腹に手を当ててから、ロビン相手には言い出しにくく、ちらりとひろの方を見た。
すると、ロビンとひろたがいに目を見合わせて意思の疎通そつうはかってから、ひろが席を立って、美佳みかのすぐ横までやってくる。
そのままかがんでくれたひろに、こそこそと美佳みかは耳打ちをした。
ロビンはその様子を見ながら自分の頼んだホットコーヒーに口を付けている。

「……わあ、それはおめでとうございます!」

耳打ちの内容を聞いたひろは、少しばかり美佳みかをしげしげと見てから、そう口にした。
美佳みかあわてて付け加える。

「でも、でもね、その、彼氏にもまだ言ってないし、その安定、してからじゃないと」
「そうですよね、だからこそ、不安の種、取りたいですもんね」

不意に、げほっ、とロビンが横を向いてき込んだ。
そのまましばらく、げほごほとき込んでいる。
どうやら、この流暢りゅうちょうに日本語をあやつる外国人の青年は、ひろとの会話から内容をさっして、そしてその拍子ひょうしにコーヒーにむせる程度には日本人的感覚をゆうしているらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

池の主

ツヨシ
ホラー
その日、池に近づくなと言われた。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こちら聴霊能事務所

璃々丸
ホラー
 2XXXX年。地獄の釜の蓋が開いたと言われたあの日から十年以上たった。  幽霊や妖怪と呼ばれる不可視の存在が可視化され、ポルターガイストが日常的に日本中で起こるようになってしまった。  今や日本では霊能者は国家資格のひとつとなり、この資格と営業許可さえ下りればカフェやパン屋のように明日からでも商売を始められるようになった。  聴心霊事務所もそんな霊能関係の事務所のひとつであった。  そして今日も依頼人が事務所のドアを叩く────。  

処理中です...