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4-1 うろを満たすは side A
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◆
「些か直截的な表現になりますが、まとめさせていただきますね」
流暢に日本語を操る目の前の金髪の青年は、そのやたらとキツい目つきに反して、丁寧にそう言った。
随分と目つきで損をしてそうだ、なんて美佳は思った。
長閑な昼下りの喫茶店。
その穏やかな空間と、外の明るさとは裏腹に、美佳は駆け込んだ寺から紹介された霊能力者らしい人たちに、まとめることも覚束ない経緯を説明していた。
指定された時間に現れたのは、カップルとも見紛う、美佳よりも明らかに若い青年と少女とも呼べそうな女性の二人組だった。
ロビン・イングラムと名乗った青年は、ひょろりと背が高く、空の色と深さそのままの色の三白眼にシンプルなメガネをかけて、その辺りの大学生に紛れるような、シンプルなTシャツに薄手のジャケットと細身の黒いジーンズにローファーという出で立ちをしている。
こうして話している感じも合わせて、ザ・知的、と言った感じが強い。
一方、その助手といった体で動いている少女、唐国弘の方は、ボーイッシュなウルフショートと、ボーダーの七分袖のプルオーバーに紺のスキニーパンツ、足元はスニーカーと、とても活動的な出で立ちである。
そうしてロビンが会話の主導権を握った横で、弘がノートを開いて、美佳の話のポイントを取りまとめている。
一通り説明を終えて、話を引き出すことに徹していたロビンは、美佳の怯えように配慮を示した上で話をまとめて行く。
「まず一つ、コシバミカさん、アナタは過去にひとりかくれんぼを行ったことがある、と」
「はい」
ちらりと弘の反対側から見ても几帳面な文字が並んだノートに視線を向けつつ、ロビンが言う。
「その時には物理的におかしいことは発生せず、ただアナタは絡みつくような視線を感じていた、と」
「そうです……当時は、大学生になったばかりで、ひとり暮らしを始めて、怖いもの知らず、でしたから」
しゃっと弘が書き留めた内容に三色ボールペンの赤で下線を引く。
その赤が美佳の心をひっかくような気がした。
「確かに褒められたことではないですが、それなりの人が遊びとしてやっていることです。それに、過去は悔やんでもどうしようもないですから」
美佳の様子を見て、ロビンはドライにそう言い切る。
それはただ責めているのではなく、事実確認をしているだけ、ということを強調していた。
「そして、最近、その時と同じ視線を感じるようになった、と」
「はい……」
「その点についてですが、視線を感じるようになった頃、アナタ自身や周囲で変わったことはありましたか?」
そう言われて、美佳はそっと腹に手を当ててから、ロビン相手には言い出しにくく、ちらりと弘の方を見た。
すると、ロビンと弘は互いに目を見合わせて意思の疎通を図ってから、弘が席を立って、美佳のすぐ横までやってくる。
そのまま屈んでくれた弘に、こそこそと美佳は耳打ちをした。
ロビンはその様子を見ながら自分の頼んだホットコーヒーに口を付けている。
「……わあ、それはおめでとうございます!」
耳打ちの内容を聞いた弘は、少しばかり美佳をしげしげと見てから、そう口にした。
美佳は慌てて付け加える。
「でも、でもね、その、彼氏にもまだ言ってないし、その安定、してからじゃないと」
「そうですよね、だからこそ、不安の種、取りたいですもんね」
不意に、げほっ、とロビンが横を向いて咳き込んだ。
そのまま暫く、げほごほと咳き込んでいる。
どうやら、この流暢に日本語を操る外国人の青年は、弘との会話から内容を察して、そしてその拍子にコーヒーに咽る程度には日本人的感覚を有しているらしい。
「些か直截的な表現になりますが、まとめさせていただきますね」
流暢に日本語を操る目の前の金髪の青年は、そのやたらとキツい目つきに反して、丁寧にそう言った。
随分と目つきで損をしてそうだ、なんて美佳は思った。
長閑な昼下りの喫茶店。
その穏やかな空間と、外の明るさとは裏腹に、美佳は駆け込んだ寺から紹介された霊能力者らしい人たちに、まとめることも覚束ない経緯を説明していた。
指定された時間に現れたのは、カップルとも見紛う、美佳よりも明らかに若い青年と少女とも呼べそうな女性の二人組だった。
ロビン・イングラムと名乗った青年は、ひょろりと背が高く、空の色と深さそのままの色の三白眼にシンプルなメガネをかけて、その辺りの大学生に紛れるような、シンプルなTシャツに薄手のジャケットと細身の黒いジーンズにローファーという出で立ちをしている。
こうして話している感じも合わせて、ザ・知的、と言った感じが強い。
一方、その助手といった体で動いている少女、唐国弘の方は、ボーイッシュなウルフショートと、ボーダーの七分袖のプルオーバーに紺のスキニーパンツ、足元はスニーカーと、とても活動的な出で立ちである。
そうしてロビンが会話の主導権を握った横で、弘がノートを開いて、美佳の話のポイントを取りまとめている。
一通り説明を終えて、話を引き出すことに徹していたロビンは、美佳の怯えように配慮を示した上で話をまとめて行く。
「まず一つ、コシバミカさん、アナタは過去にひとりかくれんぼを行ったことがある、と」
「はい」
ちらりと弘の反対側から見ても几帳面な文字が並んだノートに視線を向けつつ、ロビンが言う。
「その時には物理的におかしいことは発生せず、ただアナタは絡みつくような視線を感じていた、と」
「そうです……当時は、大学生になったばかりで、ひとり暮らしを始めて、怖いもの知らず、でしたから」
しゃっと弘が書き留めた内容に三色ボールペンの赤で下線を引く。
その赤が美佳の心をひっかくような気がした。
「確かに褒められたことではないですが、それなりの人が遊びとしてやっていることです。それに、過去は悔やんでもどうしようもないですから」
美佳の様子を見て、ロビンはドライにそう言い切る。
それはただ責めているのではなく、事実確認をしているだけ、ということを強調していた。
「そして、最近、その時と同じ視線を感じるようになった、と」
「はい……」
「その点についてですが、視線を感じるようになった頃、アナタ自身や周囲で変わったことはありましたか?」
そう言われて、美佳はそっと腹に手を当ててから、ロビン相手には言い出しにくく、ちらりと弘の方を見た。
すると、ロビンと弘は互いに目を見合わせて意思の疎通を図ってから、弘が席を立って、美佳のすぐ横までやってくる。
そのまま屈んでくれた弘に、こそこそと美佳は耳打ちをした。
ロビンはその様子を見ながら自分の頼んだホットコーヒーに口を付けている。
「……わあ、それはおめでとうございます!」
耳打ちの内容を聞いた弘は、少しばかり美佳をしげしげと見てから、そう口にした。
美佳は慌てて付け加える。
「でも、でもね、その、彼氏にもまだ言ってないし、その安定、してからじゃないと」
「そうですよね、だからこそ、不安の種、取りたいですもんね」
不意に、げほっ、とロビンが横を向いて咳き込んだ。
そのまま暫く、げほごほと咳き込んでいる。
どうやら、この流暢に日本語を操る外国人の青年は、弘との会話から内容を察して、そしてその拍子にコーヒーに咽る程度には日本人的感覚を有しているらしい。
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