息抜き庭キャンプ

KUROGANE Tairo

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第10話_(木の)皮を剥いちゃいました

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 鏡開きという日本の習慣で、お供えしていた鏡餅を食べるという物がある。オレはその餅を小さく切ってぜんざいを作った。材料を初手からぶち込んだ使い捨てアルミ鍋を焚火で煮込んだ。

 まあ、今時の鏡餅は、プラスチックのそれっぽい形の中に、ミニサイズの餅が入っているのだが・・・・・・うちのもそうだった。

 煮込み終わったアツアツのぜんざいを食べながら、ニケにバトニング棒を作ろうと提案した。

「それって作るものなの?」

 適当に薪の中から選ぶ人も入れば、太い枝で叩く人もいる。ネットの動画や画像の印象だと、このパターンが多いだろう。実際、オレとニケもそうしてきた。ただ、お手軽な反面、欠点は毎回、勝手が変わるということと、都合のいい太さが見つからない場合もある。

 あらかじめバトニング用の棒をつっておくとその心配はない。1つ荷物が増えてしまう問題があるが、庭キャンプであれば薪置き場に一緒に置いておけばいい。形状を整えるので、間違って使うことはたぶん・・・・・・ないだろう。ガチキャンパーでも、自作のバトニング棒を持って行く人はいる。

 割っていない木が、薪ストック場の近くにまだあるので、その中から適当な長さと太さを選ぶ。このとき、皮の分を引いて選ぶのがコツだ。皮は衝撃で剥がれやすく、腐りやすいので、バトニング棒として作るときには剥いてしまったほうがよい。握り心地もよくなる。

「適切な大きさと言われても難しいわね。」

 木の種類にもよるけど・・・・・・目安としては、本人の留守中にオレが代理で受け取った宅配便・・・・・・先日ニケ宛てに【健康器具】の品名で届いた、振動する棒と同じくらいでも十分。

「待てや。プライベートな荷物の中身なぜ知ってる?」

 バケツに押し込んでいた薪の1つをサ〇ライズ立ちで構えていた。

 あ、やっぱり箱の大きさと重量的にそうだったんだ。しかも、そのリアクションは始めから【そっち目的】で設計されたやつだな。

「ポケモ〇の技と同じで、ポカン・・・・・・で記憶消しておこう。」

 それオレが石組み竈を作ろうと思って集めていた石!!サスペンスの鈍器みたいに振り上げるな!防音室のドア閉めて使えばいいだろ!配信だけは切り忘れるな!!

 それでも音が気になるなら静音設計のやつ貸すから。

「いや、あんたも持ってるんかい・・・・・・。」

 日本に持ってくるの忘れて、買い直しましたが何か?

 VTuberには特殊なジャンルもあるようで・・・・・・装着したまま配信するお姉さん方も・・・・・・

「マテマテ。私達の事務所でそんな配信したら、契約解除されなくてもマネージャーからストップと警告になるヤツ!」

 まだまだ耐性をつける修行が足りないニケは、持ち上げていた石を抱えて赤面しながら言った。健全な超大手箱に堂々とこの手の話をするコスプレ海賊のパイセンがいたきがするが・・・・・・しかもあの人、今持っているのが〇代目ですとか言いながら、先端が壊れても使い続ける猛者だしなあ(流石に使用目的については言及してないので、健全なマッサージ用だろう・・・・・・たぶん)。

 センシティブな例えが分からない少年達のために、別の例えをすると・・・・・・エナジードリンクのロングの缶、あれがオレ的にお勧めするちょうどいい大きさだ。アレに手で持つ分の長を追加すればいい。もっと太い方がいい方は個人の使い勝手と好みで。バトニングはナイフへの負荷を考えると重さと力業でガンガン叩くものではない。ほどほどの太さの木で叩いても割れない場合は、諦めよう。

 太さだけ考えればいいかな。短いのはどうにもならないけど、長い分にはノコギリで切って調整できる。

 木の皮の剥き方だが、これはちゃんと専用の道具が売っている。使用頻度もバトニング棒や、着火剤代わりに木の皮を剥くだけなら安いやつでいいと思う。

 そしてこちらが皮を剥いたものになります。

「3分間で放送するクッキング並みの速さ!」

 皮を剥くことで皮が腐ることを防ぎ、持ったときのフィット感が増す。

 ニケに皮剥きの道具を渡して、選んだ木の棒の皮を剥いでもらう。

 ・・・・・・ニケ君、先端だけ剥いて何の手術かね?

「違・・・・・・こ、これは微妙に残った節が邪魔で、この先から先に綺麗に剥こうと・・・・・・。」

 動揺して全体的に急いで剥こうとするから、刃が全然皮に引っ掛かってないぞ。その程度の節だったら、使うのに支障ないから落ち着いて。それじゃいつまでも【被ったままで不便】だ。

「言 い 方!」

 皮が厚いうちはけっこうガッツリ引っ掛けてから引っ張るような使い方でいい。浅く引っ掛けるのは仕上げで表面を綺麗にしたいときだ。

 ちなみに皮を剥いておくのは、ハンター型やロングファイヤー型用にとっておきたい木に対しても有効な場合がある。先ほど言ったように皮から腐りやすいのを防ぐのと、燃えやすい皮がないことで使用回数が増えるのだ。ただ、乾燥が進んだ木や油の多いヒノキだとそこまで効果がないのが個人的な体験なので、木のコンディションによって判断しよう。

 ズル剥けにしたら、木の皮剥きの道具で優しく摩るように表面を綺麗にする。

「だから 言 い 方!」

 手袋前提で使うなら、使用時に支障がない程度の仕上げでもいい。見た目レベルで拘るなら、サンドペーパーで仕上げよう。使っているうちに叩く箇所が傷ついてくるのは仕方ない。持ちやすいように、持ち手になる箇所を細めに削る人もいる。ゲームにでてくる木のこん棒をイメージしたような形状だ。どこかにかけられるように紐を通す人もいる。

 こうしてズル剥けにした木の棒から、バトニング棒が完成した。

 流石にこのサイズを受け入れられたら、相当な手練れだな。

「なんの話をしている?」

 汚いモノを見るその目は、キミも分かってツッコんでいるということだな?

 完成したバトニング棒は、薪と間違わないようにしまっておこう。見た目が薪よりも整っていると言っても、人間というのはボケをやらかす生き物だ。分けておくのに越したことはない。

 作るのが面倒な人はネットでも売られてはいるが・・・・・・値段を考えると作るか、バトニング毎に切った木の枝か薪を1本代用したほうがいいだろう。売られているものがよほど気に入ったなら別だけど。

 作るときに持ちやすい形状の木の枝がなく、薪しかない場合は、ホームセンターである程度形が整っている木材を買う方法もあるが・・・・・・バトニング棒1本を作る費用としてはお得とは言えない。作る分だけ投資するつもりで買うか、相性のいい木の枝に巡り合うまでは薪で代用するのがいいだろう。
 
 さて、ニケとオレの棒・・・・・・とう言うと薄い本業界が反応するかもしれないので、バトニング棒は倉庫にしまっておこう。
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