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第1話_とりあえず開拓だ
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ここで話すのは、オレたちがまだ庭キャンプを始めるための準備段階のころだ。
「さて・・・どこから手をつるかな。」
庭キャンプ場の開拓初日。アウトドア向けのハットの上から右手で頭を押さえ、目の前の草木がお生い茂る庭に向けてそう言っていた。
ばーちゃんの家の土地は元々昔ながらの農家だったらしく、家と土地が無駄に広い。オレはここをオフのときにキャンプ場にして、デジタルから離れた息抜きをしようと思っていたのだが、ここ数年、年取ったばーちゃん1人では手が回りきらず、キャンプどころか散歩も無理そうなレベルで荒れていた。
「マジで全部やるのこれ?」
同僚で同期のライバーのニケことニキータが、キャップのつばを両手でもってオレに行ってきた。
ばーちゃんの体力事情も考えると、最終的には全部整地したいが・・・・・・楽しみも並行したい。
とりあえずの目標は【2人用テントと焚火のスペース】を作るということにした。単純にこの2つだけ考えるなら、4平方メートルでもできるだろうが・・・開拓時の廃材や荷物置き場も考慮すると5~6平方メートルが欲しいだろう。切った枝や切り倒した木は、割って乾燥させたあと、薪として使いたい。
「なかなか立派な木もあるねえ。コレ、ノコギリでいける?」
ニケがハグできるサイズの木はヒノキで、たぶんばーちゃんより長生きだろう。そもそも庭の木を切っていいのかと言う疑問だが、これについてはばーちゃんから許可をもらっている。手入れが届かないと邪魔になるだけなので、好きに開拓していいそうだ。
しかもこのヒノキ、あちこち立ち枯れが目立ち始めているのだ。すぐに薪にしたい場合は嬉しい現地調達だが、このまま立ち枯れが侵食すれば、それ自体が予測不可能にたおれてくるだろう。・・・・・・とは言ったものの、これを切り倒すのは大変そうなので、とりあえず後回しでまた考えよう。
まずは最低限のキャンプ場エリアとなる範囲の草から処理していくことにした。
オレとニケは草削りを手に、地面から切り離した草を段ボールに集めていく。
「ちょっと、なんであんたの草削りだけ長いやつなのよ!腰痛いから交換して!」
これ、オレが自腹で買ってきたやつ。オマエの、ばーちゃんの家の倉庫にあった借り物。OK?
「ぜったい貸す気ないやつだ。」
もちろん。オレもしゃがみの負担を減らしたいからかってきたんだ。
まあでも、草を集めて段ボールに入れるときにはしゃがむから、言うほど恩恵はない。それでも、ないよりましだ。
そして草を一定範囲減らしたことで、新たな問題も見えてきた。ある意味、草より厄介なものだ。
「何このツタパラダイス・・・・・・。」
枝が伸び放題の木々にツタが、人間で言えばそういうプレイかのように巻き付いていた。切り倒して、視界を開きたいと思っていた対象の気が殆どそうだった。
「切るものある?モーラ(ナイフ)持ってこようか?」
ナイフはこの時点では初級編として買った、モーラナイフのコンパニオンしか2人とも持っていなかった。これでも切れなくはないけど・・・・・・たまに硬いとこあるんだよなあ。鉈か斧くらいパワーがあれば・・・・・・これもこの時はまだなかったんだな。
倉庫にあった死んだじーちゃんが使っていたらしい手斧は、錆がヒドすぎて使う気にならなかった。前にさび落とし挑戦して、1時間がんばったけど、オレの腕じゃ落ちている気がしなくて諦めた・・・・・・。
錆びててもかろうじてツタとまともにやり合えそうなウェポンが・・・・・・1本だけあったな。
そう考えて倉庫から持ってきたのが、かろうじて刃の部分だけが生きている錆びた枝切ばさみ。こんなのでも、ツタとの相性はいい。枝相手だと、ちょっと不安。
てかこの家の倉庫、錆びた道具ばっかりだ。これはいずれ本格的に錆び鷄するか、自分達の道具を買い直すか考えないといけない。
まあ、とりあえず今はツタだ。
「うわー。めり込んで巻き付いてるのあるよ。ハードなプレイだ。」
木がまだ一回り細いうちに巻き付いて、そのまま大きなったせいで食い込んだのだろう。ニケはその食い込んだツタを引っ張って見ようとするが、こうなると剥がすのもなかなか難しい。
一見高難易度クエストのように見えるが、ツタには1つ大きな弱点がある。
伸びているところのできるだけ下を切ればいい。
「それでいいんだ。」
そう。あとはこれで、放っておけば枯れる。この調子で1つ1つ邪魔なツタの下を切っていけば・・・まて、このツタ、どこにつながっている!?
「これはちょっとした爆弾解除?」
複数ゴッチャに絡みつくとそうなるわな・・・・・・よし、全部切っておこう。間違いの配線なんてないのだから。
「草系はこれで終わった?」
草でいっぱいになった段ボールは1では足りなかった。気づけば夜逃げの荷物のように増えていて、オレがツタを切っている間にニケが回収忘れの草を集めて、段ボールに押し込み、整理していた。
捨てるのも大変だなこりゃ。木ならまだ、早く処分したい場合は、焚火と言い訳して燃やせるけど。もちろん、キャンプの焚火としても使う。乾燥に2年くらいかかるのがね・・・・・・。ヒノキなら1年でもギリいけるらしい。
「でも草って、また生えるんでしょ?」
うん、だから草むしりや草刈りは定期的に庭の様子を見てやらないと、長くサボるとまた侵略される。これはデイリーミッションのようなもんだから、開拓自体は次のステップに進んだと思っていいよ。
今日はここまでにして、次は木を切れそうなやつから切って、周りをすっきりさせたいが・・・・・・木の本体に近づくまでに、伸び放題の枝がけっこう邪魔だなあ。
木よりも枝を効率的に処分できるかが問題だな。
手持ちの道具も制限があるから、いろいろ考えないと。
とりあえずオレたちは草の入った段ボールを倉庫の空きスペースに押し込むと、家に上がって休むことにした。
・・・・・・今夜、配信枠とってたんだった。先輩の記念ライブ出演の打ち合わせもあったのを思いだした。
これからが、オレの仕事の時間だった・・・・・・。
「さて・・・どこから手をつるかな。」
庭キャンプ場の開拓初日。アウトドア向けのハットの上から右手で頭を押さえ、目の前の草木がお生い茂る庭に向けてそう言っていた。
ばーちゃんの家の土地は元々昔ながらの農家だったらしく、家と土地が無駄に広い。オレはここをオフのときにキャンプ場にして、デジタルから離れた息抜きをしようと思っていたのだが、ここ数年、年取ったばーちゃん1人では手が回りきらず、キャンプどころか散歩も無理そうなレベルで荒れていた。
「マジで全部やるのこれ?」
同僚で同期のライバーのニケことニキータが、キャップのつばを両手でもってオレに行ってきた。
ばーちゃんの体力事情も考えると、最終的には全部整地したいが・・・・・・楽しみも並行したい。
とりあえずの目標は【2人用テントと焚火のスペース】を作るということにした。単純にこの2つだけ考えるなら、4平方メートルでもできるだろうが・・・開拓時の廃材や荷物置き場も考慮すると5~6平方メートルが欲しいだろう。切った枝や切り倒した木は、割って乾燥させたあと、薪として使いたい。
「なかなか立派な木もあるねえ。コレ、ノコギリでいける?」
ニケがハグできるサイズの木はヒノキで、たぶんばーちゃんより長生きだろう。そもそも庭の木を切っていいのかと言う疑問だが、これについてはばーちゃんから許可をもらっている。手入れが届かないと邪魔になるだけなので、好きに開拓していいそうだ。
しかもこのヒノキ、あちこち立ち枯れが目立ち始めているのだ。すぐに薪にしたい場合は嬉しい現地調達だが、このまま立ち枯れが侵食すれば、それ自体が予測不可能にたおれてくるだろう。・・・・・・とは言ったものの、これを切り倒すのは大変そうなので、とりあえず後回しでまた考えよう。
まずは最低限のキャンプ場エリアとなる範囲の草から処理していくことにした。
オレとニケは草削りを手に、地面から切り離した草を段ボールに集めていく。
「ちょっと、なんであんたの草削りだけ長いやつなのよ!腰痛いから交換して!」
これ、オレが自腹で買ってきたやつ。オマエの、ばーちゃんの家の倉庫にあった借り物。OK?
「ぜったい貸す気ないやつだ。」
もちろん。オレもしゃがみの負担を減らしたいからかってきたんだ。
まあでも、草を集めて段ボールに入れるときにはしゃがむから、言うほど恩恵はない。それでも、ないよりましだ。
そして草を一定範囲減らしたことで、新たな問題も見えてきた。ある意味、草より厄介なものだ。
「何このツタパラダイス・・・・・・。」
枝が伸び放題の木々にツタが、人間で言えばそういうプレイかのように巻き付いていた。切り倒して、視界を開きたいと思っていた対象の気が殆どそうだった。
「切るものある?モーラ(ナイフ)持ってこようか?」
ナイフはこの時点では初級編として買った、モーラナイフのコンパニオンしか2人とも持っていなかった。これでも切れなくはないけど・・・・・・たまに硬いとこあるんだよなあ。鉈か斧くらいパワーがあれば・・・・・・これもこの時はまだなかったんだな。
倉庫にあった死んだじーちゃんが使っていたらしい手斧は、錆がヒドすぎて使う気にならなかった。前にさび落とし挑戦して、1時間がんばったけど、オレの腕じゃ落ちている気がしなくて諦めた・・・・・・。
錆びててもかろうじてツタとまともにやり合えそうなウェポンが・・・・・・1本だけあったな。
そう考えて倉庫から持ってきたのが、かろうじて刃の部分だけが生きている錆びた枝切ばさみ。こんなのでも、ツタとの相性はいい。枝相手だと、ちょっと不安。
てかこの家の倉庫、錆びた道具ばっかりだ。これはいずれ本格的に錆び鷄するか、自分達の道具を買い直すか考えないといけない。
まあ、とりあえず今はツタだ。
「うわー。めり込んで巻き付いてるのあるよ。ハードなプレイだ。」
木がまだ一回り細いうちに巻き付いて、そのまま大きなったせいで食い込んだのだろう。ニケはその食い込んだツタを引っ張って見ようとするが、こうなると剥がすのもなかなか難しい。
一見高難易度クエストのように見えるが、ツタには1つ大きな弱点がある。
伸びているところのできるだけ下を切ればいい。
「それでいいんだ。」
そう。あとはこれで、放っておけば枯れる。この調子で1つ1つ邪魔なツタの下を切っていけば・・・まて、このツタ、どこにつながっている!?
「これはちょっとした爆弾解除?」
複数ゴッチャに絡みつくとそうなるわな・・・・・・よし、全部切っておこう。間違いの配線なんてないのだから。
「草系はこれで終わった?」
草でいっぱいになった段ボールは1では足りなかった。気づけば夜逃げの荷物のように増えていて、オレがツタを切っている間にニケが回収忘れの草を集めて、段ボールに押し込み、整理していた。
捨てるのも大変だなこりゃ。木ならまだ、早く処分したい場合は、焚火と言い訳して燃やせるけど。もちろん、キャンプの焚火としても使う。乾燥に2年くらいかかるのがね・・・・・・。ヒノキなら1年でもギリいけるらしい。
「でも草って、また生えるんでしょ?」
うん、だから草むしりや草刈りは定期的に庭の様子を見てやらないと、長くサボるとまた侵略される。これはデイリーミッションのようなもんだから、開拓自体は次のステップに進んだと思っていいよ。
今日はここまでにして、次は木を切れそうなやつから切って、周りをすっきりさせたいが・・・・・・木の本体に近づくまでに、伸び放題の枝がけっこう邪魔だなあ。
木よりも枝を効率的に処分できるかが問題だな。
手持ちの道具も制限があるから、いろいろ考えないと。
とりあえずオレたちは草の入った段ボールを倉庫の空きスペースに押し込むと、家に上がって休むことにした。
・・・・・・今夜、配信枠とってたんだった。先輩の記念ライブ出演の打ち合わせもあったのを思いだした。
これからが、オレの仕事の時間だった・・・・・・。
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