転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
55 / 190

第55話 ダークエルフの活躍

しおりを挟む
 貯水池の毒による汚染は、深刻であった。

 半日が経っているが、すでにエルダーロックの村は、飲み水に事欠く有様だ。

 一応、上流の貯水池から村の手前の貯水池までの水路を遮断したものの、毒の一部はすでに流れ込んでいたので、調査の結果、飲料水としては使用できなくなっている。

 これには村長であるヨーゼフも深刻な悩みとなった。

 ただでさえ元からあった井戸は汚染されていたから、その対策として貯水池を作ったのだ。

 お陰で水には困らなくなったのだが、ここにきて誰かが毒を貯水池に投じて飲めなくしてしまった。

 これでは、また、最初からやり直しだ。

 しかし、そこへ、コウが同居人のララノアなら、なんとかできるかもしれないと提案してくれた。

 これには村長のヨーゼフも希望の光に見えたのは間違いない。

 何しろコウはこの村の英雄としてその実力を認められてきている。

 ヨーゼフも絶大な信頼する村民の一人だったからとても期待するところであった。


「え? 私が!?」

 ララノアは貯水池から戻ってきたコウに、呪詛系の毒で汚染された水を自分の魔法で浄化してほしいと言われて困惑していた。

 なにしろ未だ一人では成功した事がないからだ。

 そう、一人では成功していない。

 ただし、魔力の流れを確認する為に、コウに魔力を体内に流してもらって試したら一度は浄化魔法に成功した事があったのだ。

 その時はコウの膨大な魔力が自分の体内に流れ込む感覚に抵抗があったので、それ以来試していない。

「そう、前回一度だけど成功したじゃない? あれをもう一度試してくれないかな?」

 コウはララノアの手を取ってお願いする。

「……それが成功したら、みんなも助かるのよね? ──……わかったわ、やる!」

 ララノアは本当はあまりやりたくないのだが、自分を快く迎え入れてくれたエルダーロックの村の役に立ちたいと思っていたから、承諾するのであった。


 コウとララノアは完全に汚染されている上流の貯水池にその日の昼、早速、訪れた。

 その場には村長のヨーゼフ、娘のカイナ、医者のドク、髭なしドワーフグループの面々が見守っている。

「ララ、やるよ」

 コウはララノアの右手を握ると、そこから彼女の体内に自分の膨大な魔力を流し込む。

「……」

 ララノアは無言でその魔力を体内に感じると、その大きな胸を揺らす。

 そして、体全体流れ込むコウの魔力を感じながら、大きな貯水池に左手をかざすと、

「『浄化』!」

 と一人では一度も成功していない魔法を唱えた。

 すると、ララノアの頭上に大きな魔法陣が浮かび、貯水池全体が光に包まれる。

 そして、光が収まると、先程まで毒のせいで色が変わっていた水が、透き通っていく。

 これは、毒に汚染される前よりも綺麗になっているのは確かだ。

 上から貯水池の底が見えるのだから間違いないだろう。

 ララノアのはどうやら魔法が成功したらしい事を貯水池の水の色を見て確認すると、探るようにコウを見る。

 そして、

「成功よね……?」

 と自信なさげに聞いてきた。

 コウは、笑顔で応じる。

 その瞬間、ララノアの表には嬉しさのあまり満面の笑みがこぼれ、思わずコウに抱きつく。

「「やったー!」」

 これには友人である村長の娘カイナも反応して、ララノアと二人、同時に歓声を上げた。

「……こいつは驚いたわい」

 医者のドクが水の色を確認して、茫然としている。

 そこへ村長のヨーゼフがドクに水質は大丈夫か念の為確認した。

「大丈夫どころか、これだけ綺麗な水なら、煮沸しなくてもそのまま飲めるかもしれないぞ!」

 とドクはもう安全である事を告げるのであった。


 こうして、村の危機は救われることになった。

 それもララノアというダークエルフと人族の混血の女性によってである。

 ララノアはコウの同居人としてドワーフ達からも認知されていたが、それだけであったので、この事からララノアは良い意味で知名度がさらに上がりそうだ。

「……私、みんなの役に立てたのね……、良かった……」

 ララノアはコウと抱き合い喜んでいたが、落ち着くとようやくそれを実感する事になった。

「これも、ララが日ごろから努力していた結果だよ」

 コウはララが毎日、成功しなくてもずっと練習し続けていたのを知っているから、当然の事だと述べた。

「ううん……。魔法を教えてくれたカイナや魔力を貸してくれたコウのお陰よ。私一人ではどうにもできなったと思う」

 ララノアは冷静になって自分の力だけでは無理だった事を振り返る。

「いや、カイナも日頃から言ってたじゃない。練習なくして魔法の習得はありえないって。魔力は僕が貸したけど、それを操作できたのはララが日頃から練習していたからだよ。──ほら、水がこんなに綺麗なのはその浄化魔法がしっかり機能していたからだと思う」

 コウはララを改めて褒めた。

 彼女は自分同様、いや、自分以上に人から褒められる事無く成長してきた事で自己肯定する気持ちが縮んでしまっているのだ。

 僕は、それを傍で褒めて大きく膨らませてあげればいい。そうする事で彼女は伸びていくだろう。

 コウは、そう判断すると、カイナと一緒にララノアの成功を評価するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

処理中です...