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第10章 新しい力
ファニアの激情
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ファニアがルリアーナ城の廊下を歩いていると、ルイスの部屋から人の声がした。ルイスが誰かと話をしていることは珍しくなく、また客人の訪問でもあったのだろうとファニアは扉の前を通り過ぎる。
(女性の・・声?)
ファニアはその聞き覚えのある声と、部屋の中の男女の声に絶句した。
(リディア様と・・ルイス様?)
ファニアもリディアも、国王陛下を討ちたいという想いをルイスから聞かされた。その後で、リディアが実家の兵力をルイスに託したことも知っている。
ただ、その時に漏れ聞こえた声は、そういった類の話をしている男女の声ではなかった。
(私とリディア様を・・同列に扱って下さるのでは無かったの・・?)
ファニアは扉の前で立ち尽くしたまま、心の中でルイスを責めた。
リディアを、自分よりも特別扱いしているではないか。
リディアの実家は国王の次に力を持つと言われている。そんな彼女とファニアでは、協力できる政治力に圧倒的な差が生まれてしまうのは仕方が無かった。
(初めから、分かっていたこと・・。こんな屈辱を味わうくらいなら、同列などと言わずにリディア様を正室にしていただいたほうが、納得できるのに)
ファニアは廊下で静かに涙を流した。こんなことなら、ルイスを愛さなければ良かったとさえ思った。
逃げ込むように自室の扉を開けて、ファニアはすぐに自分付きの侍女に駆け寄られる。
「いかがされたのですか? ファニア様・・。こちらにいらしてから、随分穏やかになられておりましたのに・・」
「悔しいわ・・。私、リディア様のように殿下のお力になることは出来ないのよ・・」
ファニアはそう言うと侍女にしがみついてわんわんと泣いた。ユリウスの元にいた時には感情を失っていたブルーグレーの瞳は、すっかり人並みの感情を取り戻している。
「政治の絡むことになりますと・・リディア様に敵う方など国内どこを探してもいらっしゃいませんよ。ファニア様の場合は、相手が悪かったのです」
「でも・・ルイス様は・・私の外見もあまりお気に召していただいていない気がするの。婚約されていたルリアーナ王女殿下のような、可憐な方が・・お好きなんだわ」
「何をおっしゃっているのですか。ファニア様ほどお美しい方が、そんな自信を失うなど」
侍女に励まされながら、ファニアは自分の顔を鏡で見た。透き通った薄桃色の肌にブルーグレーの瞳から零れる涙が、まるで宝石のように光っている。
(どこをどうしたら、あの方に愛していただけるの?)
ファニアは、これまで見た目を異性に賞賛されて生きて来た。
選民意識を持った気難しいユリウスまでもが、ファニアの外見に一瞬で心を奪われた。
それがファニアにとっては不運の始まりだったが、比較的女性との噂に事欠かなかったルイスが相手であれば、この外見が気に入ってもらえるはずだと信じていた。
「私・・あの方に、リディア様と同列に扱っていただいていると、勘違いをしていたのよ」
「考えすぎです。同じ側室同士、同列ではありませんか・・」
「違うわ・・違う・・。リディア様は、ルイス様の部屋に・・こんな昼間からルイス様のご寵愛を受けていたもの・・」
侍女はファニアの言葉に何も返すことが出来なかった。代わりに、ファニアと一緒に涙を流していた。
「きっと、ご事情がおありなんです。そうでなければ・・あのルイス様がリディア様を特別扱いするなど・・」
侍女が振り絞るように言うと、ファニアは「そうね」と呟いて、悲しそうな目のまま口元だけで笑った。
(女性の・・声?)
ファニアはその聞き覚えのある声と、部屋の中の男女の声に絶句した。
(リディア様と・・ルイス様?)
ファニアもリディアも、国王陛下を討ちたいという想いをルイスから聞かされた。その後で、リディアが実家の兵力をルイスに託したことも知っている。
ただ、その時に漏れ聞こえた声は、そういった類の話をしている男女の声ではなかった。
(私とリディア様を・・同列に扱って下さるのでは無かったの・・?)
ファニアは扉の前で立ち尽くしたまま、心の中でルイスを責めた。
リディアを、自分よりも特別扱いしているではないか。
リディアの実家は国王の次に力を持つと言われている。そんな彼女とファニアでは、協力できる政治力に圧倒的な差が生まれてしまうのは仕方が無かった。
(初めから、分かっていたこと・・。こんな屈辱を味わうくらいなら、同列などと言わずにリディア様を正室にしていただいたほうが、納得できるのに)
ファニアは廊下で静かに涙を流した。こんなことなら、ルイスを愛さなければ良かったとさえ思った。
逃げ込むように自室の扉を開けて、ファニアはすぐに自分付きの侍女に駆け寄られる。
「いかがされたのですか? ファニア様・・。こちらにいらしてから、随分穏やかになられておりましたのに・・」
「悔しいわ・・。私、リディア様のように殿下のお力になることは出来ないのよ・・」
ファニアはそう言うと侍女にしがみついてわんわんと泣いた。ユリウスの元にいた時には感情を失っていたブルーグレーの瞳は、すっかり人並みの感情を取り戻している。
「政治の絡むことになりますと・・リディア様に敵う方など国内どこを探してもいらっしゃいませんよ。ファニア様の場合は、相手が悪かったのです」
「でも・・ルイス様は・・私の外見もあまりお気に召していただいていない気がするの。婚約されていたルリアーナ王女殿下のような、可憐な方が・・お好きなんだわ」
「何をおっしゃっているのですか。ファニア様ほどお美しい方が、そんな自信を失うなど」
侍女に励まされながら、ファニアは自分の顔を鏡で見た。透き通った薄桃色の肌にブルーグレーの瞳から零れる涙が、まるで宝石のように光っている。
(どこをどうしたら、あの方に愛していただけるの?)
ファニアは、これまで見た目を異性に賞賛されて生きて来た。
選民意識を持った気難しいユリウスまでもが、ファニアの外見に一瞬で心を奪われた。
それがファニアにとっては不運の始まりだったが、比較的女性との噂に事欠かなかったルイスが相手であれば、この外見が気に入ってもらえるはずだと信じていた。
「私・・あの方に、リディア様と同列に扱っていただいていると、勘違いをしていたのよ」
「考えすぎです。同じ側室同士、同列ではありませんか・・」
「違うわ・・違う・・。リディア様は、ルイス様の部屋に・・こんな昼間からルイス様のご寵愛を受けていたもの・・」
侍女はファニアの言葉に何も返すことが出来なかった。代わりに、ファニアと一緒に涙を流していた。
「きっと、ご事情がおありなんです。そうでなければ・・あのルイス様がリディア様を特別扱いするなど・・」
侍女が振り絞るように言うと、ファニアは「そうね」と呟いて、悲しそうな目のまま口元だけで笑った。
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