16 / 49
一章:転生乙女
16 青春の始まりです
しおりを挟む
「、、、、、、見事なものですね」
そんな感想を口にする私の前には、大きな大きな赤煉瓦の建造物がありました。
そこには同じ装いをした方々が大勢入って行かれます。そして私もそんな彼らと同様に、白を基調にデザインされた制服を身に付け、これからそちらの建物へと入る所です。
そうです。こここそがラウグス王国唯一の学舎であり、国中の若者達が集う場ーーーーー王立ラウグス魔導学園なのです。
お父様、お母様、それにルクス君。カヤは無事に目的地へと辿り着く事が出来ました。道中、様々な事がありましたが、それらも踏まえてのお勉強だと、今は思う事にしております。
落ち着きましたら、家族に手紙を出しましょう。色々ご報告しなければならない事もありますが、それ以上に元気にしていますよと、伝えなければですね。
「ーーーここにおられましたか。乙女様」
そう声を掛けていらしたのはこの国の王子様であり、本日から私の同級生となるエーデルトラウト=ラウグス王子でした。
「おはようございます。エーデルトラウト様」
「おはようございます。昨晩はよく眠れたでしょうか?」
「はい。昨日は王宮内の一室を使わせていただき、ありがとうございます。寝室のベッドがとてもふかふかで気持ちよく、長旅の疲れも一気に取れました」
「昨日も仰いましたが、乙女様が良ければこれからもあの部屋をお使いになられて良いのですよ?」
「とても魅力的なお誘いですが、私はこの国にて様々な経験をしたいのです。ここに来る前に、乙女様と呼ばれる前に立てた目標を達成する為にも。その一つが一人で生活をする事なのです。乙女様でなければ必然とそうなる予定でしたし。我儘を言っているのは分かっているのです。迷惑をかけてしまっているのも分かってはいるのですが、、、、、」
何かに囚われて生きていく事はもうしたくありません。いえ、決して私の前世がそうだったという訳ではありませんが、今思うとむしろ前世ではそれを望んで、そのような生き方をしていたのでしょうね。
でも今はあの頃の私と、カヤ=エリュテイアが重なってしまう事が酷く怖いのです。
本当にひどい我儘です。
けれど王子様は私の望みを快く了承し、変わらず笑顔を向けてくれます。
「それでは参りましょう。乙女様」
あの日、あの時、あの場所で、
私は間違えてしまったのでしょう。
それはきっと、殺されても仕方ない程に。
ですがそれも憶測でしかありません。
私にはあの方の気持ちが分かりませんでしから。
そして今の今までそれを理解しようとも思っていませんでした。
しかし確かにあの瞬間、
彼の口から「愛」を聴きました。
激痛に悶える私に、そんな余裕は無かったはずでしたのに。
あの頃のままの私じゃいけない気がするのです。
安全だと思い過ごしてきた籠の中で死んでしまった私は、所詮飛ぶ事の出来ないヒヨコだったのです。
これから先、カヤ=エリュテイアが幸せになる為に、そして素敵な恋をする為に、私は世界を知るのです。羽ばたく為の翼は無くとも、籠の外へと踏み出す足はありますから。
なれば、参りましょう。
「はい。お互いに良き人生を送りましょう!」
そんな感想を口にする私の前には、大きな大きな赤煉瓦の建造物がありました。
そこには同じ装いをした方々が大勢入って行かれます。そして私もそんな彼らと同様に、白を基調にデザインされた制服を身に付け、これからそちらの建物へと入る所です。
そうです。こここそがラウグス王国唯一の学舎であり、国中の若者達が集う場ーーーーー王立ラウグス魔導学園なのです。
お父様、お母様、それにルクス君。カヤは無事に目的地へと辿り着く事が出来ました。道中、様々な事がありましたが、それらも踏まえてのお勉強だと、今は思う事にしております。
落ち着きましたら、家族に手紙を出しましょう。色々ご報告しなければならない事もありますが、それ以上に元気にしていますよと、伝えなければですね。
「ーーーここにおられましたか。乙女様」
そう声を掛けていらしたのはこの国の王子様であり、本日から私の同級生となるエーデルトラウト=ラウグス王子でした。
「おはようございます。エーデルトラウト様」
「おはようございます。昨晩はよく眠れたでしょうか?」
「はい。昨日は王宮内の一室を使わせていただき、ありがとうございます。寝室のベッドがとてもふかふかで気持ちよく、長旅の疲れも一気に取れました」
「昨日も仰いましたが、乙女様が良ければこれからもあの部屋をお使いになられて良いのですよ?」
「とても魅力的なお誘いですが、私はこの国にて様々な経験をしたいのです。ここに来る前に、乙女様と呼ばれる前に立てた目標を達成する為にも。その一つが一人で生活をする事なのです。乙女様でなければ必然とそうなる予定でしたし。我儘を言っているのは分かっているのです。迷惑をかけてしまっているのも分かってはいるのですが、、、、、」
何かに囚われて生きていく事はもうしたくありません。いえ、決して私の前世がそうだったという訳ではありませんが、今思うとむしろ前世ではそれを望んで、そのような生き方をしていたのでしょうね。
でも今はあの頃の私と、カヤ=エリュテイアが重なってしまう事が酷く怖いのです。
本当にひどい我儘です。
けれど王子様は私の望みを快く了承し、変わらず笑顔を向けてくれます。
「それでは参りましょう。乙女様」
あの日、あの時、あの場所で、
私は間違えてしまったのでしょう。
それはきっと、殺されても仕方ない程に。
ですがそれも憶測でしかありません。
私にはあの方の気持ちが分かりませんでしから。
そして今の今までそれを理解しようとも思っていませんでした。
しかし確かにあの瞬間、
彼の口から「愛」を聴きました。
激痛に悶える私に、そんな余裕は無かったはずでしたのに。
あの頃のままの私じゃいけない気がするのです。
安全だと思い過ごしてきた籠の中で死んでしまった私は、所詮飛ぶ事の出来ないヒヨコだったのです。
これから先、カヤ=エリュテイアが幸せになる為に、そして素敵な恋をする為に、私は世界を知るのです。羽ばたく為の翼は無くとも、籠の外へと踏み出す足はありますから。
なれば、参りましょう。
「はい。お互いに良き人生を送りましょう!」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-
はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。
次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。
労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる