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第1話
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魔法使いは無防備である。
魔法使いとは貴族が秘匿する魔法の技術を独占した集団。
平民と貴族の力の差は圧倒的で、魔法使いが平民に負けるということは万に一つもない。
だから貴族が平民を支配する階層社会が生まれた。
ではなぜ無防備なのか、それは魔力に頼り切っているため、いったん魔力切れを起こすとただの人、いやそれ以下の存在になり果てるのだ。
自身の力に過信した魔法使いはたびたび魔力切れを起こし、モンスターあるいは徒党を組んだ平民との戦いで命を落としてしまうのだ。
それが高貴な身分の子弟であったために事態は深刻化し、国王きもいりのプロジェクトとして膨大な予算が組まれることになった。
魔法使いの魔力切れに対する戦力強化計画である。
最初は杖の先に剣を装着することから始まった。
魔力切れの際に槍として使うためだ、だが、魔法使いには接近戦をこなせる技量がないし腕力もない。
だから魔法使いにも戦士としての教育が施される。
しかし多くの魔法使いには不向きであった。それに戦士のような訓練は平民のやることだと貴族のプライドがそれを邪魔した。
やがて、魔法理論に変革がおきた、そもそも杖の形にこだわらなければいい。剣自体に杖としての能力を付与すればよいのではと。
だが長年の伝統から魔法使いの杖そのものの形を否定する動きに多くの貴族は反対した。無骨な剣は平民を思わせるため論外であった。
妥協案として、華美な装飾をほどこした美しい細身の剣、木製の杖と重さも同じ実戦ではほぼ使えないであろう魔法剣が作られた。
これにより、魔法使いは当初の目的を忘れ時間を無駄にした。
だが、先人の教えを再び思い出す事件がおきる。魔法使いが多数死んだのだ。ベヒモスと呼ばれる魔獣の討伐任務において英雄になりたい貴族の子弟たちはこぞって討伐任務に志願した。
しかし高い魔法防御をもつ毛皮に覆われているそれは、魔法使いの攻撃魔法を無力化した。数十名の魔法使いは初手で魔力を使い果たし。
その後無残にベヒモスに蹂躙されたのだった。
魔法使いはもれなく全てが貴族である。まれに平民から魔法適正のあるものが出現するが、それを発見したら、貴族の養子になる、あるいは平民の家族に準貴族として待遇するなどして、身分をあたえられ特権階級として平民からを隔絶させられていた。
その特別な存在である魔法使いが集団で死ぬという損失を王国は再び憂慮した。
王国は本格的な魔剣開発に乗り出す。
――機械魔剣の登場。
時の天才魔法使いであるルカ・レスレクシオンの考案した魔法機械は、文明を大きく変えた。理論に基づき正確な計算と技術があれば誰でも生活に即した魔法が使えるという革命的な発明だった。
これにより、平民の生活水準は大きく向上した。
一部の貴族は平民の生活水準の上昇を憂慮する者もいたが、おおむね、全体の経済力が上がれば自分たちの取り分も増えるという打算から、貴族は魔法機械の平民への供与を歓迎した。
それに魔法機械では強力な攻撃魔法が使えないという安心感からだ。
魔法使い虐殺事件の被害の深刻さに憂慮した国王はかの天才魔法使い、ルカ・レスレクシオンに勅命をあたえた。
――魔法使いの最強の武器を作れと。
天才が作ったのは大きな剣の形をした魔法の杖だった。
その両端には一対の大きなブレードがついている、素材はミスリルを惜しみなく使われており強度は見た目以上にある。
それに随所にルカが発明した魔法機械が使われている。
その性能は以下の通りだ。
アクティブモード。ブレードは両脇に展開し中心の杖があらわになる。
術者から魔力を吸い取り、魔法機械によって増幅された魔法は従来の魔法使いの杖と比較にならないほどに強力になる。
パッシブモード。魔力を消費した術者の為にブレードは閉じられ杖を覆い隠し両刃の大剣となる。
剣の状態になると魔力回復のため、周囲の魔力を吸い取り術者に供給する。
更に自己修復能力を備えた完璧な機構は、魔力増幅の為の機械を通して、魔力の微弱な者でも剣自体に魔力が充填ができるため、数発ならば魔法の使用が可能なほどに魔法の杖として完璧だった。
優秀な魔法使いが使えば、そのシナジー効果は計り知れない、まさに最強の武器だった。
だがしかし、欠点があった。ミスリルが鉄に比べて軽量であったとしても、その重量は屈強な戦士が振るう大剣の10倍はあった。当然魔法使いに使用できない。
結局王国に採用されることはなく試作品を作ったのみで計画は白紙に戻った。
ルカ・レスレクシオンは国王に糾弾されたが、本人は「最強の魔法使いの武器を作れと言われたから作っただけだ、お前らの筋肉がたらんのだバーカ!」と言い放ち、行方をくらました。
結局はその剣は理論のみの現実をしらない愚か者の発明として、コレクターアイテムとしての価値を持ったまま貴族の家を渡り歩いた。
たびたびオークションに掛けられ、時には実業家に渡り、実業家が破産をして財産を作るためにまたオークションに掛けられた。
その剣は確かに性能は完璧だが、実用性の無さ、仮に装備できたとしてもその重量から想定される愚鈍な動きから、あるいはこれを持てるのはベヒモスくらいだろうと嘲笑された。
魔法機械の発明者であるルカ・レスレクシオンが作った最後の迷作として名高い、剣としても杖としても機能しないそれは。――機械魔剣ベヒモスと呼ばれた。
やがて時が経ち、魔法使いたちはまた当初の目的を忘れた。魔法使いは接近戦など必要ないのだ、自分の身の守りは代わりの効く平民の戦士が担えばいいと、結局先人の抱いた危機感は時間と共に忘れ去られた。
魔法使いとは貴族が秘匿する魔法の技術を独占した集団。
平民と貴族の力の差は圧倒的で、魔法使いが平民に負けるということは万に一つもない。
だから貴族が平民を支配する階層社会が生まれた。
ではなぜ無防備なのか、それは魔力に頼り切っているため、いったん魔力切れを起こすとただの人、いやそれ以下の存在になり果てるのだ。
自身の力に過信した魔法使いはたびたび魔力切れを起こし、モンスターあるいは徒党を組んだ平民との戦いで命を落としてしまうのだ。
それが高貴な身分の子弟であったために事態は深刻化し、国王きもいりのプロジェクトとして膨大な予算が組まれることになった。
魔法使いの魔力切れに対する戦力強化計画である。
最初は杖の先に剣を装着することから始まった。
魔力切れの際に槍として使うためだ、だが、魔法使いには接近戦をこなせる技量がないし腕力もない。
だから魔法使いにも戦士としての教育が施される。
しかし多くの魔法使いには不向きであった。それに戦士のような訓練は平民のやることだと貴族のプライドがそれを邪魔した。
やがて、魔法理論に変革がおきた、そもそも杖の形にこだわらなければいい。剣自体に杖としての能力を付与すればよいのではと。
だが長年の伝統から魔法使いの杖そのものの形を否定する動きに多くの貴族は反対した。無骨な剣は平民を思わせるため論外であった。
妥協案として、華美な装飾をほどこした美しい細身の剣、木製の杖と重さも同じ実戦ではほぼ使えないであろう魔法剣が作られた。
これにより、魔法使いは当初の目的を忘れ時間を無駄にした。
だが、先人の教えを再び思い出す事件がおきる。魔法使いが多数死んだのだ。ベヒモスと呼ばれる魔獣の討伐任務において英雄になりたい貴族の子弟たちはこぞって討伐任務に志願した。
しかし高い魔法防御をもつ毛皮に覆われているそれは、魔法使いの攻撃魔法を無力化した。数十名の魔法使いは初手で魔力を使い果たし。
その後無残にベヒモスに蹂躙されたのだった。
魔法使いはもれなく全てが貴族である。まれに平民から魔法適正のあるものが出現するが、それを発見したら、貴族の養子になる、あるいは平民の家族に準貴族として待遇するなどして、身分をあたえられ特権階級として平民からを隔絶させられていた。
その特別な存在である魔法使いが集団で死ぬという損失を王国は再び憂慮した。
王国は本格的な魔剣開発に乗り出す。
――機械魔剣の登場。
時の天才魔法使いであるルカ・レスレクシオンの考案した魔法機械は、文明を大きく変えた。理論に基づき正確な計算と技術があれば誰でも生活に即した魔法が使えるという革命的な発明だった。
これにより、平民の生活水準は大きく向上した。
一部の貴族は平民の生活水準の上昇を憂慮する者もいたが、おおむね、全体の経済力が上がれば自分たちの取り分も増えるという打算から、貴族は魔法機械の平民への供与を歓迎した。
それに魔法機械では強力な攻撃魔法が使えないという安心感からだ。
魔法使い虐殺事件の被害の深刻さに憂慮した国王はかの天才魔法使い、ルカ・レスレクシオンに勅命をあたえた。
――魔法使いの最強の武器を作れと。
天才が作ったのは大きな剣の形をした魔法の杖だった。
その両端には一対の大きなブレードがついている、素材はミスリルを惜しみなく使われており強度は見た目以上にある。
それに随所にルカが発明した魔法機械が使われている。
その性能は以下の通りだ。
アクティブモード。ブレードは両脇に展開し中心の杖があらわになる。
術者から魔力を吸い取り、魔法機械によって増幅された魔法は従来の魔法使いの杖と比較にならないほどに強力になる。
パッシブモード。魔力を消費した術者の為にブレードは閉じられ杖を覆い隠し両刃の大剣となる。
剣の状態になると魔力回復のため、周囲の魔力を吸い取り術者に供給する。
更に自己修復能力を備えた完璧な機構は、魔力増幅の為の機械を通して、魔力の微弱な者でも剣自体に魔力が充填ができるため、数発ならば魔法の使用が可能なほどに魔法の杖として完璧だった。
優秀な魔法使いが使えば、そのシナジー効果は計り知れない、まさに最強の武器だった。
だがしかし、欠点があった。ミスリルが鉄に比べて軽量であったとしても、その重量は屈強な戦士が振るう大剣の10倍はあった。当然魔法使いに使用できない。
結局王国に採用されることはなく試作品を作ったのみで計画は白紙に戻った。
ルカ・レスレクシオンは国王に糾弾されたが、本人は「最強の魔法使いの武器を作れと言われたから作っただけだ、お前らの筋肉がたらんのだバーカ!」と言い放ち、行方をくらました。
結局はその剣は理論のみの現実をしらない愚か者の発明として、コレクターアイテムとしての価値を持ったまま貴族の家を渡り歩いた。
たびたびオークションに掛けられ、時には実業家に渡り、実業家が破産をして財産を作るためにまたオークションに掛けられた。
その剣は確かに性能は完璧だが、実用性の無さ、仮に装備できたとしてもその重量から想定される愚鈍な動きから、あるいはこれを持てるのはベヒモスくらいだろうと嘲笑された。
魔法機械の発明者であるルカ・レスレクシオンが作った最後の迷作として名高い、剣としても杖としても機能しないそれは。――機械魔剣ベヒモスと呼ばれた。
やがて時が経ち、魔法使いたちはまた当初の目的を忘れた。魔法使いは接近戦など必要ないのだ、自分の身の守りは代わりの効く平民の戦士が担えばいいと、結局先人の抱いた危機感は時間と共に忘れ去られた。
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