【完結】カイルとシャルロットの冒険 ~ドラゴンと魔剣~

神谷モロ

文字の大きさ
上 下
80 / 92
第五章 迷宮都市タラス

第80話 敵討ち②

しおりを挟む
 翌日。俺達はさっそく準備にかかる。

 ベヒモスが森を抜けるのは最短で一週間ほど。
 だが奴は道中で魔物を捕食しながら進んでいるようで誤差はあるそうだ。

 そんな状況で待ち構えるのは得策ではないし、ルカが言うにはこの街の城壁では意味がないそうだ。
 最低でもエフタル王国にあった大結界クラスの防御魔法が無ければいけないそうだ。

 だから、俺達がバシュミル大森林に進入しベヒモスを直接討伐する。

 俺達はタラスの街を歩く。ルカも珍しく外出している。

「実はのう、キッチンカーを勝手に改造させてもらったぞ。これから四人旅になるし、場所もバシュミル大森林ときた。装備もそれなりでないといかん。
 セバスちゃんはともかく吾輩たちは素人だ。それにテントも広めのをもう一つ用意しなければな。お主たちも感じていたであろう? 四人用のテントといってもだな、実は四人寝るのは不可能じゃ」

 ……確かに、俺もそれには同感だ。ギリギリ寝れれば良いという物ではない。パーソナルスペースは重要なのだ。
 性別が違えば尚の事。

「ところでキッチンカーを改造ってどこを改造されたのですか?」

「カイル少年よ、さすが男の子じゃのう。気になるか? いいじゃろう。まず最大の改造は動力源じゃ。
 今までは二十番の魔剣のキャリア―的な意図で、吾輩が開発した後期型のキッチンカーは二十番の魔剣のマウントスペースを確保していた。
 いずれは、二十番の量産も視野に入れておったからのう。まあその収納スペースも魔剣自体を改造したため使えぬ。
 だから、そこを潰して動力源は魔石のみにした。魔石はコストはかかるが、それは吾輩のポケットマネーで充分賄えるじゃろう。
 それに、お主たちも結構稼いでおるだろう? 何も問題はない。

 しかし二十番をマウントできなくなったデメリットはある。
 重い魔剣を運ぶというデメリットだ、それでもカイル少年には常にそれを装備して行動できるように訓練の意味合いもある。何事もポジティブに考えねばな。

 だが、おかげでキッチンカーの収納スペースが大きくなった。だから追加で強力な魔法結界発生装置を増設することができた。
 テント周辺にエフタル王城の大結界に匹敵する強力な魔法結界を張れるようにしておいた。
 夜も安心して眠れるし、火を起こしても外部に知られることはないじゃろう。これで旅はずっと楽になるはずじゃ」

 なるほど、それは素晴らしい改造だ、夜寝ているときに、マンイータークラスの魔物の襲撃を受けたら……とてもじゃないが旅は不可能だ。

 俺達はタラスの商店街で一通りのサバイバル用品に追加のテント。そして食料を買う。

 いよいよ出発だ。

 冒険者ギルドのマスター、ローランドさんに事情の説明をすると北門を出る。
 今回の任務は冒険者ギルドには非公開だ。ベヒモスの侵攻を知ってるのはローランドさんだけだろう。
 「ご武運を」とローランドさんは言ったが、すぐに普段の業務に戻った。  
 ベヒモスはスタンピード以上の災厄なのだろう。決して外部に漏れてはならない。そういう意思は伝わった。
 
 平原を歩くと俺達はついにバシュミル大森林に進入する。
 目的はただ一つ、魔獣の王の討伐。ルカが言うにはベヒモスには城壁は意味がないそうだ。
 だから現地までいって先制攻撃をしかける必要がある。

 初日、森を歩いて気付いたが、道がある。それこそギリギリ馬車が通れる幅の道が。

「これって人工的に作られた道ですか?」

「さあのう、それは分からんが吾輩が知る限り、昔から草木が生えない道の様な物はあったそうじゃ。我々はそれを道に使っているだけで自然にできたのだろうて?
 まあ、魔物も人もこの道を使うからのう。だがこの道を使えるのは実力に見合った者だけじゃ、左右の森から襲撃される覚悟が出来た者、あるいは万全の備えをした軍隊とかな」

 しばらくしてセバスティアーナさんが戻ってきた。木の上から気配なく飛び降りてきたので驚いた。
 相変わらずこの人の気配を察知することができない。ニンジャーというクラスの特殊技能という事らしいが……。

「皆さま、今日はこの辺で一泊しましょう。ちょうど近くに小川がありますのでそこでテントを張りましょうか」

 目的地があるわけではないので体力の温存の為に休憩は多くとる。そして訓練もするのだ。
 戦場はここバシュミル大森林だ。ここの地形に慣れないと戦闘どころではない。

 だから道中は魔物を発見する役目はセバスティアーナさんで、討伐は俺とシャルロットが担った。

 現れる魔物はマッドフォレストウルフにブラッドラプトルなど単独行動をする奴らばかりだった。群れで行動する魔物はスタンピードの影響でここにはいない。

 訓練には最適と言える。ベヒモスも単体だし、多対一の戦いに慣れないといけないからだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...