3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

文字の大きさ
上 下
86 / 133
エピソード3

サターン1/13

しおりを挟む
【――次のニュースです。
 最新鋭の宇宙戦艦、ジアース級サターンの竣工式を今週末に控え、一部のファンや関係者の間で静かな熱狂に包まれています。
 様々な問題を抱えた最後の戦艦サターンの完成、これでジアース級戦艦のそろい踏みですね。

 宇宙を守る象徴的な宇宙戦艦を見届ける為、気の早いファンたちは竣工式を前に早めの現地入りをし、まるでお祭りムードのようですね。

 ジアース級戦艦は全長20キロメートルの歴史上最大規模の艦船として注目されています。

 かつてX01-ボイドとの死闘から提唱された新たな装備、スーパータキオン砲を搭載した最強の宇宙戦艦です。

 サターンの完成をもってジアース級は一番艦から数え。
 ジアース、マーキュリー 、ヴィーナス、マーズ、ジュピター 、サターン 、ウラヌス 、ネプチューンの八隻が完成したことになりますね。

 ……さて、ここで現場から中継が繋がりました。

 現場のハレタツさん?

 はい、レポーターのハレタツです。
 現場は今、宇宙戦艦サターンの熱烈なファンが衛星軌道上にあるサターンを写真撮影をしている様子です。

 レポーター「竣工式は週末ですよね? いつから来られたのですか?」
 ミリオタ風の男性A「はい昨日、有給をつかって地球から帰ってきました。いやー、長かったですからねー、サターンは延期に告ぐ延期。土星系出身の俺としては感無量っす!」

 レポーター「すごい盛り上がりですね、忙しいですか?」
 会場関係者の女性「ええ、ほんと。まるでお祭り騒ぎですよ。ショッピングモールにも急きょフードコートを増設したんですよ」 

 レポーター「……週末の竣工式を控え、ますます現場は盛り上がっていってるようです。
 運航ダイヤに乱れが予想されますので、来場予定の方はくれぐれも計画には余裕をもって前倒しでの行動をとってください。以上、現場からでした」

 はい。ハレタツさんありがとうございました。

 では次のニュースです。
 アーススリーのカニ漁問題について政府は改善の兆しがあると発表しました――】

 俺は普段テレビは見ないけどニュースチャンネルだけは真面目に見ることにしている。
 以前の俺はネットのいい加減なニュースを信じて陰謀論に染まってしまった恥ずかしい経験があるからだ。

 ほんと恥ずかしいなぁ、ネットこそ真実! マスゴミは嘘ばかりってか。
 いやいや。百歩譲ってマスコミは嘘も言うけど、有象無象のネット評論家の方が嘘つきの割合が多いと当時の俺は思わなかったな。

 まあ、今は3024年。
 俺は知ってしまったのだ、あのときブイブイ言わせてたネット論客達の悲惨な末路を……。

 結局は金だったのだ。もちろん全てがそうではないけどね。大多数がそうだったって話。
 
 それに比べれば、テレビのが全然マシなんだよな。まあこれもさらに未来では変わるのかもしれないけど……。
 
「ところでアイちゃん。ジアース級戦艦ってさ、アイちゃんの後輩だよね。先輩のツテで見学とか出来ない? すっげーお祭りみたいだし」

『マスター……それはさすがに無理ですよ。
 私はもう軍籍ではありませんし。コネもありません。
 それこそ、マスターなら何とかなるんじゃないですか? スズキの名前を使えば割と融通が利きますよ?』

「いやぁ、さすがにそこまではしたくないけど。
 ああ、でも一度は見てみたいかなぁ。サターンのAI。きっと黒髪セミロングの……何ていうのかな。儚くも健気なセーラー服の美少女戦士」

『……セーラー服の戦士ですか? はて、海軍の女性兵士でしょうか……。
 マスターの弟さんはミリオタと存じておりますが、マスターもミリオタでしたでしょうか?
 ちなみにサターンのAIアバターは一般公募で決まっていますのでいつでも閲覧できますよ?』

 セーラー服の戦士というワードで、海軍が出てくるのはさすがに元戦艦のAIなだけはある。
 だが、まだまだ俺についての理解が足りないな。ふっ……平成生まれの日本人への理解というべきか……。

「いやいや、そう言う事じゃないさ。俺がアイドルオタクになる前のわずかな期間にね。
 思い出のアニメがあってだな。 どれどれ、早速検索しよう。『サターン』、『宇宙戦艦』、『AIアバター』っと……」

 カタカタ、ターン! と、俺は勢いよくキーボードを入力する。

【やあ皆! 僕は宇宙戦艦ジ・アース級六番艦のサターンだよ! ハハッ!
 いろいろ建造までにトラブルがあって、七番艦ウラヌスと八番艦ネプチューンよりも少し遅れちゃったけど。
 遂に完成したんだ。今週末には竣工式があるから皆も会いに来てね! とっておきの秘密も満載! 最新鋭の装備も紹介しちゃうよ! キュルルンサターン! ハハッ!】

 ……俺は画面をそっと閉じる。

「ちがーう! なんだよ! ただのゆるキャラじゃないか! サターンは俺の初恋の二次元だったのに……」

 そう、サターンのアバターはふざけていた。
 丸っこいデザインに、やる気なさそうないい加減な紐のような手足が付いていて。土星の輪をイメージした浮き輪をつけている。

『……マスター。小学生のデザインにそういう言い方は失礼というか、大人げないですよ?』

 小学生っ!……。
 ……く、たしかに、少し言い過ぎた。

 ベクトルは違えどこれはこれで可愛いと思う。
 ほんとごめんね……まじでごめん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

亂世 ~幾千万の声、幾億の無言~

るてん
SF
2041年、台湾を巡る国際情勢は緊迫の度を増していた。 中国軍の異常な動きを察知した台湾参謀本部は、戦争の兆しを確信する。 世界が再び戦火に包まれるのか?沢山の人々の運命が交錯していく。 ※実験的な側面のある小説です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁
SF
1,769年の時を超えて目覚めた古代の女王壱与と、現代の考古学者が織り成す異色のタイムトラベルファンタジー!過去の邪馬壱国を再興し、平和を取り戻すために、二人は歴史の謎を解き明かし、未来を変えるための冒険に挑む。時代考証や設定を完全無視して描かれる、奇想天外で心温まる(?)物語!となる予定です……!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

kabuto

SF
モノづくりが得意な日本の独特な技術で世界の軍事常識を覆し、戦争のない世界を目指す。

処理中です...