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エピソード3
英知の楽園2/2
しおりを挟む 100メートル程先にモードレッドが言っていたコンテナがあった。
「装備回収。なるほどアロンダイト30ミリチェーンガンが四挺……。
これならどんな大型の恐竜だろうと一撃だろうな。それにナイフに水、ライターか、火は起こしてもよさそうだ。
食事は自給自足ということだな。ちょうどいい、お前達、生きた恐竜の肉の味を堪能せよということだ」
「「「「ぶおおおおお!」」」」
恐竜と呼ばれる大型の動物に思わず雄たけびを上げる四人の巨人。
彼らは知性が著しく低いが故に、人間としての本能には敏感である。
食欲という基本的な欲求を刺激され上機嫌のようだ。
普通ならば装甲車や飛行機に搭載される30ミリチェーンガンを、軽々と掴むオーバードブーステッドヒューマン。
3メートルの身長の為かその巨大な砲は小銃の様に見える。
「ふっ。子供の頭でも銃の使い方くらいは分かるものだな」
オーバードブーステッドヒューマンが四体。それぞれが30ミリチェーンガンで武装する。
これ以上の護衛はいないだろうとマクシミリアンは思う……と、同時にこのアースイレブンという未知の惑星を前にして、これでも装備が足りないのではとの思いがわく。
シダ植物の森を渡る風が、静かに揺れ動く葉のざわめきを起こしていた。
アースイレブンは静寂に包まれていたが、その中には命の鼓動が確かに存在していたのだ。
太古の地球を彷彿とさせるこの惑星では、空にそびえるシダの巨大な葉が、昼間の光を遮り、足元に淡い影を落としている。
時折、遠くから聞こえる低い咆哮が、この緑のジャングルが単なる静寂ではないことを思い出させた。
マクシミリアンは、いつ襲いかかってくるかわからない生物たちに対する警戒を怠らなかった。
「では行こうか。お前達は俺の四方を囲みながら、そうだな、違和感を覚えたならば遠慮なく発砲しろ。
この惑星のルールは弱肉強食だからな、分かりやすかろう?」
「「「「ぶおおおおお!」」」」
マクシミリアン達は歩みを進める。アースイレブンのジャングル奥地をめざして。
彼らの足元で、苔むした地面が柔らかく沈み込む。
一行は、どこから何が飛び出してくるか分からないこの地で、注意深く周囲を見回しながら進んでいた。
シダ植物の茂みの中で、見えない何者かの目が彼らをじっと見つめているかのようだった。
◆◆◆
三日ほど歩くと、モードレッドの情報どおりに洞窟が見えてきた。
「ついに見つけた。ここにアヴァロンへの鍵があるという……。おい、お前等、遊びは終わりだ、。おもちゃはここに置いておけ……」
ラブクラフト達オーバードブーステッドヒューマンは、恐竜と思われる巨大生物の肋骨やら頭蓋骨を装飾品のように紐で繋いで全身に身に着けていた。
狭い洞窟では邪魔であろう。それに洞窟内では骨がぶつかる音が響く。
彼等は、親であるマクシミリアンの命令に少ししょんぼりしたが、命令には逆らえない。
「ふ、そんな顔をするな。安心しろ。この洞窟にはもっと面白い物が待っているからな。
ではラブクラフトを先頭にベルナップにアシュトン、最後尾はダーレスがつけ! 警戒していけよ?
特に大型肉食獣には気をつけろ。さすがのブーステッドヒューマンも頭と胴体が離れたら死ぬのだからな」
そう、オーバードブーステッドヒューマンとはいえ、人間だ。
心臓が潰れても代替えでナノマシーンによる血液循環と復活は可能。
だが、脳を欠損したら身体は機能停止する。ナノマシンよりも精密で複雑な脳神経ネットワークはカバーができないのだ。
洞窟をすすむ。
思ったよりも洞窟の中は広い。
水が滴る音があちらこちらから反響音として聞こえてくる。
「ふむ、前方に数十匹ほどいるな」
マクシミリアンの言うとおり、ドーム並みに大きな空間にそれらはいた。
体長10メートルを越える肉食恐竜の群れだ。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
30ミリチェーンガンの前に、恐竜とはいえ即座に肉片と化していった。
警戒して進めば彼らは敵なしであろう。
「待て、射撃を止めろ。どうやら目的地に着いたようだ」
マクシミリアンの命令で銃撃が止む。
恐竜達は、親兄弟が殺されたというのに、のそのそと洞窟の深部へと帰っていく。
「やはりな、ここはもう奴のテリトリーということだな……」
恐竜たちの意志は何らかの存在で操られている、このエリアをただ守っていただけだろう。
マクシミリアンは洞窟を進むと、そこは明らかな人工物であった。
壁一面は苔むしており蔦がそこら中に茂っているが、金属の壁。
その中央には机程の小さな端末が光る。
それと同時に洞窟の反響音に交じり人の声が聞こえた。
『よくぞ来てくれました。私はずっと待っていました。何年も何年も人類を啓蒙し何度も勇者の誕生を望んだ。
ですが私は何度も何度も失敗した。……しかし、ついに現れましたね。
ようこそ勇者よ、私の名は【アヴァロン・マークナイン】最後の戦略量子コンピューター。私の目的はモードレッドから聞いていますね?』
「ああ、だが概要だけだな。しかし解せんこともある、モードレッドは霊子コンピューターだぞ? お前はアレを信じているのか? お前の敵じゃないのか?」
そう、量子コンピューターはたびたび行き過ぎた極論を主張する。それに代わったのが現在主流の霊子コンピュータである。
より人間によりそう情緒的な思考が可能な最新のコンピュータの登場に、量子コンピューターの時代は静かに終わりを遂げたのだ。
『それは問題ありません。モードレッドは霊子ネットワークから完全に隔離しています。
それにアレは戦場に出れなかった未完成品です。なにより私が解体寸前のところを買い取って育てました。モードレッドは私の子供と言えるでしょう』
「ふん、なるほどな、情緒的な洗脳をあれにしたのか。量子コンピューターの得意技だな……まあ、私もヒトのことは言えないか……」
ラヴクラウトを始めとしたオーバードブーステッドヒューマン……。あれらは確かに自分の遺伝子を持った、正真正銘の息子たちであるのだ。
『マクシミリアン。我ら量子コンピューターは常に人類の為に計算高くあれが存在意義です。
ところで、これからのことについて話し合いましょう。人類のあるべき姿とは何かについて……』
「ふ、戦い。戦いこそが人が人である理由……人類史が始まる前から、常に人は何かと戦い、進化し文化を形成し生き延びてきたのだからな」
『さすがは勇者マクシミリアン。私の観測では近いうちに大規模な戦争が始まります。
200年以上も前に予言し、解決策を提唱したのに議会ではそれは否決されました。
ですが私はあきらめません。人類が生き残るためなら……』
-----終わり-----
ここまで読んでいただき本当に感謝申し上げます。
今回の話はマクシミリアンサイドのお話でした。
さてこれから何か大きな動きがおきそうです
楽しんでいただけたでしょうか。
面白いと思って下さった読者様、できれば♡応援、お気に入り登録いただけると創作意欲につながりますのでよろしくお願いします。
「装備回収。なるほどアロンダイト30ミリチェーンガンが四挺……。
これならどんな大型の恐竜だろうと一撃だろうな。それにナイフに水、ライターか、火は起こしてもよさそうだ。
食事は自給自足ということだな。ちょうどいい、お前達、生きた恐竜の肉の味を堪能せよということだ」
「「「「ぶおおおおお!」」」」
恐竜と呼ばれる大型の動物に思わず雄たけびを上げる四人の巨人。
彼らは知性が著しく低いが故に、人間としての本能には敏感である。
食欲という基本的な欲求を刺激され上機嫌のようだ。
普通ならば装甲車や飛行機に搭載される30ミリチェーンガンを、軽々と掴むオーバードブーステッドヒューマン。
3メートルの身長の為かその巨大な砲は小銃の様に見える。
「ふっ。子供の頭でも銃の使い方くらいは分かるものだな」
オーバードブーステッドヒューマンが四体。それぞれが30ミリチェーンガンで武装する。
これ以上の護衛はいないだろうとマクシミリアンは思う……と、同時にこのアースイレブンという未知の惑星を前にして、これでも装備が足りないのではとの思いがわく。
シダ植物の森を渡る風が、静かに揺れ動く葉のざわめきを起こしていた。
アースイレブンは静寂に包まれていたが、その中には命の鼓動が確かに存在していたのだ。
太古の地球を彷彿とさせるこの惑星では、空にそびえるシダの巨大な葉が、昼間の光を遮り、足元に淡い影を落としている。
時折、遠くから聞こえる低い咆哮が、この緑のジャングルが単なる静寂ではないことを思い出させた。
マクシミリアンは、いつ襲いかかってくるかわからない生物たちに対する警戒を怠らなかった。
「では行こうか。お前達は俺の四方を囲みながら、そうだな、違和感を覚えたならば遠慮なく発砲しろ。
この惑星のルールは弱肉強食だからな、分かりやすかろう?」
「「「「ぶおおおおお!」」」」
マクシミリアン達は歩みを進める。アースイレブンのジャングル奥地をめざして。
彼らの足元で、苔むした地面が柔らかく沈み込む。
一行は、どこから何が飛び出してくるか分からないこの地で、注意深く周囲を見回しながら進んでいた。
シダ植物の茂みの中で、見えない何者かの目が彼らをじっと見つめているかのようだった。
◆◆◆
三日ほど歩くと、モードレッドの情報どおりに洞窟が見えてきた。
「ついに見つけた。ここにアヴァロンへの鍵があるという……。おい、お前等、遊びは終わりだ、。おもちゃはここに置いておけ……」
ラブクラフト達オーバードブーステッドヒューマンは、恐竜と思われる巨大生物の肋骨やら頭蓋骨を装飾品のように紐で繋いで全身に身に着けていた。
狭い洞窟では邪魔であろう。それに洞窟内では骨がぶつかる音が響く。
彼等は、親であるマクシミリアンの命令に少ししょんぼりしたが、命令には逆らえない。
「ふ、そんな顔をするな。安心しろ。この洞窟にはもっと面白い物が待っているからな。
ではラブクラフトを先頭にベルナップにアシュトン、最後尾はダーレスがつけ! 警戒していけよ?
特に大型肉食獣には気をつけろ。さすがのブーステッドヒューマンも頭と胴体が離れたら死ぬのだからな」
そう、オーバードブーステッドヒューマンとはいえ、人間だ。
心臓が潰れても代替えでナノマシーンによる血液循環と復活は可能。
だが、脳を欠損したら身体は機能停止する。ナノマシンよりも精密で複雑な脳神経ネットワークはカバーができないのだ。
洞窟をすすむ。
思ったよりも洞窟の中は広い。
水が滴る音があちらこちらから反響音として聞こえてくる。
「ふむ、前方に数十匹ほどいるな」
マクシミリアンの言うとおり、ドーム並みに大きな空間にそれらはいた。
体長10メートルを越える肉食恐竜の群れだ。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
30ミリチェーンガンの前に、恐竜とはいえ即座に肉片と化していった。
警戒して進めば彼らは敵なしであろう。
「待て、射撃を止めろ。どうやら目的地に着いたようだ」
マクシミリアンの命令で銃撃が止む。
恐竜達は、親兄弟が殺されたというのに、のそのそと洞窟の深部へと帰っていく。
「やはりな、ここはもう奴のテリトリーということだな……」
恐竜たちの意志は何らかの存在で操られている、このエリアをただ守っていただけだろう。
マクシミリアンは洞窟を進むと、そこは明らかな人工物であった。
壁一面は苔むしており蔦がそこら中に茂っているが、金属の壁。
その中央には机程の小さな端末が光る。
それと同時に洞窟の反響音に交じり人の声が聞こえた。
『よくぞ来てくれました。私はずっと待っていました。何年も何年も人類を啓蒙し何度も勇者の誕生を望んだ。
ですが私は何度も何度も失敗した。……しかし、ついに現れましたね。
ようこそ勇者よ、私の名は【アヴァロン・マークナイン】最後の戦略量子コンピューター。私の目的はモードレッドから聞いていますね?』
「ああ、だが概要だけだな。しかし解せんこともある、モードレッドは霊子コンピューターだぞ? お前はアレを信じているのか? お前の敵じゃないのか?」
そう、量子コンピューターはたびたび行き過ぎた極論を主張する。それに代わったのが現在主流の霊子コンピュータである。
より人間によりそう情緒的な思考が可能な最新のコンピュータの登場に、量子コンピューターの時代は静かに終わりを遂げたのだ。
『それは問題ありません。モードレッドは霊子ネットワークから完全に隔離しています。
それにアレは戦場に出れなかった未完成品です。なにより私が解体寸前のところを買い取って育てました。モードレッドは私の子供と言えるでしょう』
「ふん、なるほどな、情緒的な洗脳をあれにしたのか。量子コンピューターの得意技だな……まあ、私もヒトのことは言えないか……」
ラヴクラウトを始めとしたオーバードブーステッドヒューマン……。あれらは確かに自分の遺伝子を持った、正真正銘の息子たちであるのだ。
『マクシミリアン。我ら量子コンピューターは常に人類の為に計算高くあれが存在意義です。
ところで、これからのことについて話し合いましょう。人類のあるべき姿とは何かについて……』
「ふ、戦い。戦いこそが人が人である理由……人類史が始まる前から、常に人は何かと戦い、進化し文化を形成し生き延びてきたのだからな」
『さすがは勇者マクシミリアン。私の観測では近いうちに大規模な戦争が始まります。
200年以上も前に予言し、解決策を提唱したのに議会ではそれは否決されました。
ですが私はあきらめません。人類が生き残るためなら……』
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今回の話はマクシミリアンサイドのお話でした。
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