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第5章 おっさん、優勝を目指す
第113話 気迫
しおりを挟む『勝者、ファルシア選手!』
高らかにジャッジを告げる声。第三戦、中堅戦は3年A組、ファルシア=ゲオ・マルクの大完勝という形で幕を閉じた。
「……ごめんなさい先生」
「ああ……いや、その……気にするな」
彼の性格が性格だけに責めることができない。というかここでみんなして彼を責めたら精神崩壊も起こしかねないのであえて悪いコメントは添えなかった。
「―――まぁ、そりゃ勝てないわな。お菓子の杖じゃ」
勝てる勝てない以前の問題にそのようなハプニングが起ころうとは予想すらもしていなかった。
いや、むしろそういう事態も想定の上で……ってそんなの無理に決まっている。
だが別に痛手となるほどの結果ではない。ポロックには悪いが、相手との差があり過ぎた。
たとえ先ほどのようなハプニングが起こらなくとも勝てる確率で言ったらかなり低いだろう。
だが問題は次からの試合だ。
もう我々1年A組は相手に勝ち点二点を先取されてしまっている。
三点先取のこの総合競技では次負ければその時点で敗北が決定する。
要するにもう俺たちには後がなくなったってことだ。
「次で負けちゃうと敗北……ですね」
「ああ、だからこそ彼には意地でも取ってきてくれないと……」
あまりプレッシャーはかけたくはない。
だが勝ち負けがある以上そうも言っていられないのも事実だ。
「―――せめて引き分けでガルシアに回したかったが……」
結果は結果。素直に受け止めるほかあるまい。
『さぁいよいよ魔道技術祭もラストゲームが近づいてまいりました! 次はいよいよ副将戦となります!』
副将戦。ここで負ければ敗北が決まる中、出番を与えられたのはクラスの問題児ガルシアだ。
彼は特に何も言うことなく、リングへ向かおうとする。
「ガルシア」
「ん」
呼んだ声に反応をし、いつものごとく無愛想な表情でこちらを振り向く。
俺は数秒ほど彼とにらめっこをし、最後に一言だけ添える。
「……頼んだぞ」
その一言にガルシアは頷くことはなかったがその鋭く強気な目を見せ、リングの方へ歩いていく。
彼なりの意思表示だったのだろう。ガルシアには決して迷いがなかった。
ただただ自信に満ちており、負の感情は一切感じない。勝利を確信しているかのような雰囲気が彼の中にはあったのだ。
「ガルシアから物凄い何かを感じますね。なんかこう自信に満ちているというかなんというか……」
ハルカも彼の覚悟に気がついたようだ。というかあそこまで闘争心むき出しなら誰でも気づくか……
彼の表情はまるで獲物を追うオオカミのように鋭く、そして類まれなる圧倒的な威圧感が彼の背中を後押ししていた。
「―――あいつなら」
俺はガルシアに密かな期待を抱いていた。素行こそ粗暴なガルシアだが強靭な精神と瞬間に爆発的な力が出せるのは大したものだ。魔技祭までの練習の成果もあり、冷静に物事を考えて行動できるようにもなった。
こういう状況ではプレッシャーに押されて潰れてしまいそうなくらいの精神的負荷がかかっていることは間違いない。常人のメンタルなら文字通り潰れて本来の力は引き出せないだろう。
だがガルシアの表情にはそれらのものがまったく感じない。感じさせないと言っても正しいのかもしゅれないがとにかく清々しい表情でリングへと向かっていった。
まるで「心配は無用だ」と言わんばかりに……
■ ■ ■
『さぁ両者、リングの上に姿を現してきました。1年A組からは先ほどの体術競技で凄まじい力を発揮したガルシア選手。対するは同じく体術競技で激戦を繰り広げたもののガルシア選手に惜しくも敗北したバトス選手です。この総合競技でリベンジはなるのか!?』
熱い解説と共にリング上に姿を現す二人の男たち、バトスとガルシアだ。
この二人は先で行われた体術競技でも一戦交えていた。結果は知っての通りガルシアの勝利。
その影響もあってかバトスの表情はかなり険しく、苛立っているような素振りが見えた。
「……へっへっへ、また会ったなクソ野郎」
「またお前か。ふっ、なら余裕だな」
「……ッッ! 舐めやがってこのクソガキが」
「お前も大して年齢変わらないだろう。こんな簡単な挑発に乗っている所を見ると精神年齢は低いと見えが」
「そんな減らず口を叩くのも今の内だ。俺はもう加減なんてしねぇ、お前には絶望って奴を見せてやるよ」
「ほう……それは楽しみだ」
開幕は先ほど同様に挑発合戦からスタートする。
気迫と気迫のぶつかり合い。傍から見れば口喧嘩にしか見えないが両者とも怒りによる精神的高揚をなかった。
『準備が出来たようです。それではいよいよ総合競技第四戦、副将戦を開始いたします!』
「さぁ……死戦の幕開けだ。餓狼と言われた俺の真の力、たっぷりと味わってもらうぜ……」
どこからでもかかってこいやと言わんばかりの応戦状態を構築するバトス。
対照的にガルシアは小さく身構え、隙を作らない程度の臨戦態勢を整えている。
『それでは副将戦、開始!』
会場内に響く大鐘の音だ。
そしてその瞬間、運命を分ける開始の合図(宣告)の鐘が鳴らされたのだ。
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