元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章 おっさん、優勝を目指す

第109話 ブラックボックス

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 全てはこの一戦で決まる。
 高鳴る鼓動、そして脈拍が徐々に早くなっていくのを感じる。
 そしてこの大観衆がそれらをさらに加速させるのだ。

「レイナード先生、大丈夫ですか?」

 レーナが心配そうに見てくる。それもそのはずで身体の震えが止まらないのだ。
 理由は分からない。もちろんわざとやっているわけでもない。 今までの人生で体感したことない感覚だった。
 
(これが俗に言う緊張感というものなのか?)

 味わったことのない感覚に少々戸惑ってしまう。

『それでは皆さん、大変長らくお待たせいたしました! これより魔道技術祭決勝最終戦、総合競技を執り行いたいと思います!』

 アナウンスが観客を湧かせる。

 時刻は昼頃。気候は快晴で天気による障害の心配はない。

「彼ら、多分本気で来ますね」
「ああ、覇気がさっきとはまるで違う」
「目が怖いです。とくにあのリーゼントの男の子が……」

 対面する相手は歴代から続く絶対強者たち。
 その者たちの背中には例のごとく聖剣が拵えられていた。
 
『えー、では勝負に先立ちましてまずは選手の選定を行いたいと思います!』

(来たな、運命のくじ引きタイム!)
 
 この競技は魔技祭の競技規約に従って行われる特別ルールが適応される。
 それがこのランダム制と呼ばれる選手の選定を任意ではなく、くじ引きによって決めるというもの。
 その上この競技は三点先取制を採用しているため、先鋒戦、次鋒戦、中堅戦、副将戦、大将戦と別々でくじを引かなければならない。
 そして完全運任せなこのルールを適応することによって選手の出場に偏りをなくすことができるという寸法だ。

 ……が、逆に言ってしまえばこのルールは任意の生徒を出せないので誰が選ばれるかは分からないという難点がある。
 主力級の生徒が選ばれる可能性も正直運であり、戦闘能力の低い生徒だけ選ばれてしまうという可能性も十分にあり得る。
 まぁざっくり言ってしまえば運も味方につけろという意図も含まれている。

『それでは両チームの代表者の方、前へ』

 アナウンスに導かれ、俺は指定された場所まで移動する。

 くじ引きを引くのは基本、チームの代表者で1年A組では俺が代表者となる。
 要するにこの勝敗の運命はこの俺自身が握っているということ。今こそ俺の運勢が試される時なのだ。

(相手の代表者はやはりあの変態仮面野郎か……)

 ゆっくりと歩いてくる仮面鬼。
 そしてお互い向かい合わせになり、じっくりと見つめ合う。
 
(相変わらず不気味なやつ)

 仮面を被っているため当然素顔を見ることはできず、ただひたすらに異様な雰囲気しか感じ取れなかった。
 そんなことを思っているうちに大会関係者が両クラスの生徒の名前の入った箱を用意する。
 完全に中身が見えないようになっており、手を突っ込む穴だけが上面にぽっかりと空いていた。

『それではまず一枚目、先鋒戦に出場する選手を引いてください!』

 バトルジャッジの支持と同時に俺と仮面鬼はブラックボックスの中に手を入れる。
 そして思いっきり手を穴から抜いた。

 ―――生徒番号693

 この数字が書かれた紙を関係者渡し、照合。
 すると……

『1年A組、先鋒戦出場者はリーフ選手です!』

 よし! 幸先いいぞ!

 思わずガッツポーズをしてしまう。
 1年側の控え席でもリーフに頑張るよう周りの生徒が鼓舞していた。
 で、対する3年A組の出場者はベルニアというスキンヘッドの男子生徒に決まった。
 
『では次に次鋒戦の選手を引いてください!』


 くじ引きはテンポよく進む。
 そして大将戦までのくじ引きが全て終了し、出場者が確定する。

『出場選手が確定致しました! それでは発表します!』

 バトルジャッジの司会と共に出場者がモニターに映し出される。

『それではまず1年A組から発表いたします。先鋒、リーフ選手。次鋒、セリナ選手、中堅、ポロック選手、副将、ガルシア選手、大将、フィオナ選手です!』

 出場者の顔と名前がモニター越しで紹介される。
 結果はもうこの上ないくらい最高のチーム分けとなった。
 
 バランスも取れており、何より主役級の三人が入ったことが非常に大きかった。
 セリナもこの三人に引けを取らないくらいの潜在能力の持ち主であるし、ポロックも精神面の弱さで不安は残るものの力量でならガルシアの次に匹敵するくらいの腕っぷしを持っているため心配は特にない。
 
「―――後は相手が誰に当たるかによるな……」

 本音を言えば、どうしても一人だけ選ばれてほしくない人物がいるのも事実だった。
 それが今ちょうど俺の視界に映っているルーカス・アルモンドという銀髪銀眼の男だ。
 少々くたびれた感じがある青年で一見すると強そうには見えない。

 だが俺にはすぐに奴の力の推量が分かった。
 理由は彼の中からわんさかと溢れ出ている膨大な量の魔力だ。

 俺は第7位階級の能力開示魔術≪オールアイ≫を使うことができる。
 この能力は相手の五感に自身の神経を潜らせることによって対象者の持つ能力の全てを行使者の脳に記憶させることができるという神経操作系の魔術だ。
 俺は競技開始前にこの術を一人一人に行使し、ステータスを頭に記憶していた。

 10人の聖剣使いを調べたところ平均して第4~5階梯レベルの力が備わっており、あのバトスとかいうリーゼントの男子生徒だけは第6階梯の到達者だった。

 だがあのルーカスという男だけは違った。彼は周りと比べて別格、というかそれこそ天と地の差があるほどの力の持ち主であった。
 階梯で言えば第7~8レベルはある。
 これは神魔団の序列下位の連中に匹敵するレベルの力だった。
 
 そんな周りを圧倒するような力を持つ彼が3年A組の大将戦に出場することが確定し、会場をどよめかせる。

『さぁみなさん、両チームの出場者が決まりました。いよいよ最終戦の開幕となります、開始の合図までしばしお待ちください!』

 大会関係者が最後の準備に取り掛かる。
 俺は一旦、皆の所へと戻り出場する者たちをかき集めた。

「よし、お前ら準備はいいか?」

 俺の問いの五人は頷く。特にフィオナはこの試合に誰よりも燃えていた。

「先生、絶対に勝ってきます! 生徒会長さんに新入生の底力をみせてあげますよ!」
「ああ、期待しているぞ」
「ぼ、ぼぼぼぼくも、ががが頑張りますっ!」

 小太りで真ん丸な顔がチャームポイントのポロックも気合十分。
 ガルシア、リーフ、セリナも勝負に向かう覚悟を持った眼をしていた。

(うん、これなら大丈夫そうだな)

 俺の心の中にあった少しばかりの不安は彼のそのキリっとした表情でかき消された。

「よし、じゃあ準備はいいか? 行くぞ!」

「「「はい!」」」

 五人揃って返事。
 そして俺は一人一人に鼓舞激励すると、彼らの背中を押してアリーナへと送り出した。
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