92 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する
第90話 手紙の主
しおりを挟むラブレター。俺は世間でそのように呼ばれているものをどうやら貰ってしまったようなのである。
で……
「おいレーナ、らぶれたーとは何だ?」
「「え……?」」
一瞬、その場が凍りついたかのように二人はフリーズする。
周りの講師陣もぽかーんとこちらを見つめたまま動かない。
(え、なに? 俺なんかしたか?)
そんな時が止まったかのような雰囲気の中、最初に口を開いたのはレーナだった。
「あ、あの……レイナード。さすがにそれは冗談で言っていますよね?」
「え? 何がだ?」
きょとんとする目でレーナをみる。と、彼女は手で頭を抱え、この上ない位の深く長い溜息を放つ。
「え、え? どういうことなのだ? おいハルカ、お前はらぶれたーなるものを知っているのか?」
「いや……その、知っているも何も……」
思わず苦笑いをするハルカ。というか逆に知らないのと言わんばかりの目線が俺を襲ってくる。
周りの反応を見る限り、知っていて当たり前のものなようだ。
(ラブレター……これが皆の言うそれとしてこの手紙の示す意味は一体なんなんだ?)
だがここは正直に言うしかない。
俺には意味が分かりませんと。そう告白しなければ話が進まなそうだった。
「……す、すまんレーナ。らぶれたーってなんだ? 初めて貰ったので意味が分からんのだ……」
素直にそう告げ、レーナにその意味を仰ぐ。
レーナは少々戸惑いつつも他言を言うことなくゆっくりと説明を始める。
「艶書のことですよ。相手に自らの愛を伝えるための手紙、それがラブレターです」
「……あ、愛を伝える?」
「そうです。レイナードに対しての愛を伝えたいという人がそれを送ったのでしょう」
愛を伝える……か。それはいわゆる俺に対して好意を持っている者がいるという事だよな。
だとしたら俺に面と向かってそういえばいいのに……と思ったがそれができないからわざわざ手紙を送るというまわりくどい行動に出るのだそう。
(まったく、意味が分からん……)
そしてレーナが言うにはこの手紙に記載された時間と場所にその送り主が姿を見せるのではないかとのこと。
そういうことならば行かないわけにはいかない。
俺は講師室にあった時計をすぐに見る。
「今の時刻は午後14時……ざっと後3時間といった所か」
「せ、先生、行くんですね」
「一応な。誰がこんなものを送ってきたのかも気になるし」
「心当たりとかないんですか? こう、自分のことを好意的な目線で見てくる人がいたり……とか」
心当たりか。ざっと考えた所そんな奴は思い当たらない。
可能性があるとしたらオルカ辺りだ。彼女のは時折熱烈な目線で俺を凝視してくる時がある。
それが愛ゆえのものかは不明だが、それ以外に思い当たる節がないのだ。
「フィーネは絶対にない。フィオナやリーフも……あと関わりのある異性と言えばスカーレットやドリル女という事になるが……」
だがあいつらがやるとしたら嫌がらせだな。特に意味もないこういうことしそうだ。
だが二人とも今は色々と事情があって忙しい身だ。
そんなことをする暇はないだろう。
(やっぱりオルカ以外は考えられないなぁ……)
消去法でオルカという結論に至るがその可能性も著しく低い。
いや、考えても何も始まらない。とりあえずこの場所に行けば答えが分かる。それまでは……
気長に待つことにする。
今できるのはそれくらいしかない。
「レーナ、ハルカ、この件で途中仕事を抜けることになるが代わりに頼めるか?」
「私は大丈夫ですよ」
「わ、わたしもです!」
二人とも快く承諾してくれた。
にしても魔技祭前日ともあろう日になんてことだ。俺にも明日に向けての準備等色々あるというのに。
(……これで悪戯とかだったら承知しないぞホントに)
そんなことを思いつつ仕事をしていると、気が付けばもう時計は17時ちょっと前を指していた。
「……そろそろか」
「あ、先生抜けますか?」
「あ、ああ……レーナにもそう伝えておいてくれ」
「りょーかいですっっ! ご武運を!」
「う、うん……」
ビシッと敬礼をするハルカに背を向け、俺は呼ばれた場所へと向かう。
別に戦場に行くわけではないのに、と思ってしまうがある意味戦場か。
もし本当に俺のことを好いていた相手の場合、どう返答しようか……
あ、答えはもちろんノーだ。だが断り方にも色々ある。
思いっきりストレートに行くか、遠回しに否定するか。
(ああ……もう面倒だ)
―――一方、その頃講師室では……
「レーナ先生、もう行きましたよ」
「もうそんな時間? なら気づかないようにしなきゃね」
もちろん尾行しようと数時間前から計画を立てていた。
あのレイナードに告白しようというのだ。当然、どういう輩か知りたいという想いはあった。
「じゃ、行きましょ!」
「うん!」
席を立ちあがり、講師室へ出ようととした時だ。
「ぜひワタクシも一緒にご同行してもよろしいでしょうか?」
「うわっっ! ら、ラルゴ先生一体どこから湧い……姿を現したんですか?」
ハルカが驚きながら後ろを向く。
いきなり背後からラルゴ・ノートリウムが姿を現したのだ。そう、まるで霊のように。
どうやらラルゴも事情を知っているみたいだ。
「ら、ラルゴ先生も行くのですか?」
「ええ、もちろん。先ほどチラッとお話を聞かせてもらいましたが、どうやら面白いことになっているみたいですねぇ」
「は、はぁ……まぁ」
さっきまで講師室にいなかったはずの人間がなぜ今此処にいるのか。というかどこから話を聞いていたのか。
色々疑問が残るが、彼がこういうので仕方なく連れて行くことにする。
「わ、分かりました……行きましょう」
「ありがとうございます。では……」
こうして三人はレイナードをそっと尾行することになったのだ。
そんなこともつゆ知らず、レイナードは……
「待ち合わせ場所はここのはずだがまだいない……か」
待ち合わせ場所である展望デッキに到着していた。
何かイベントがあるたびに此処に来る……そんな気がした。
ハルカの一件もそうだし、仕事に対する意欲が湧かない時にはいつもこの場所に世話になっている。
周りを見渡しても人のいる気配はない。
いつものように静かで安らかな風が俺の身体を透き通っていく。
手元の懐中時計はもう17時過ぎを指していた。
「やはり……悪戯だったか」
そう思い、戻ろうとした時だった。
「……お、もう来ていたのか。意外と早かったなアーク……いや、今はレイナード・アーバンクルス先生と呼んだ方がいいか?」
「お、お前は……」
物陰からひっそりと身を出すその姿は俺の記憶に鮮明に残っていたある人物だったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる