元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第89話 一通の手紙

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「……えっ? 練習禁止? 自由行動?」
「そうです。今日は皆さん、各自で準備をし明日に備えてください」

 唐突の自由、練習禁止宣言でクラスの皆が一同に固まる。
 恐らく皆の予想では明日に向けての最終調整なり予行演習なりをするのかと思っていたのだろう。
 
 だがそれも全てなし! 好きに一日を過ごせというのだ。
 するとここである一人の女子生徒が手を挙げる。

「あの……レイナード先生、ホントに練習は……?」
「なしだ」
「いやでも明日に向けて最後の演習をしておいた方が……」
「であってもなしだ。いいか、これは命令だ。今日は何も考えず、身体を休めることだけを考えろ」

 こう言われ、困惑するA組生徒一同。最初はガヤガヤとざわついたもののレーナの説得によって治まった。
 やる気のある者、特にフィオナたち三人は不満を抱くことだろう。だがこれも練習の内。
 練習で鍛え上げられた身体とは裏腹に魔術多様でいつの間のか削られている精神。自覚して気付けるようなものではないが、勘のいい奴は魔術を使うとすぐに分かる。

 A組のほとんどの生徒は練習による魔術の使い過ぎで精神をごっそりと体内に蓄積された魔力に持っていかれている。周りが騒がしくなっている中、フィオナやガルシア、リーフはそれに気づいているみたいで何も変には思っていない様子。むしろ納得のいく表情を浮かべている。

 やはりこの三人は勘が鋭い。

「……と、いうことで今日はこれにて解散だ。各々祭りを楽しんで来い」

「「「「「はい!」」」」」
 

 ……とそんなわけで俺たちも講師室へ行き、雑務に戻る。


「……あぁ、祭りの最中でも講師は雑務か」
「まぁまぁ、そう言わないの」
「そうですよレイナード先生。魔技祭の後は講師も特別休暇貰えるのでそこまでの辛抱です!」

 何度同じような弱音を吐いたことか、そういうたびにレーナやハルカに慰められる。
 学園内の祭りならともかく国を挙げてのお祭りだというのに当たり前に仕事があるというこのシステム。実はこんな祭りの開催期間中に出勤しているのは役所の人間と俺たちアロナード魔術講師くらいのものらしい。そんな話を先ほど講師同士が話しているのをちらっと聞いてしまい、さらにやる気が激減する。

 唯一の救いはハルカの言う特別休暇だ。
 
(まぁ……祭り期間中でもフル活動してもらえる休暇はたったの一日だけど)

 まさに社畜! まさにブラック! の割にここの学園長様はなぜかアロン祭期間中は長期休暇で学内から姿を消すと言うカオスっぷり。

 そんな状況で仕事に精を出せと言われても無理な話である。

(ああ……毎日が休暇になる日はまだ遠いなぁ)

 そんなことをぼけーっと考えながら仕事をしている最中だった。

「……あ、あのレイナード先生」
「ん、どうした?」

 いきなり声をかけてきたのは一人の若い男魔術講師。確か担当は中等部だったはず。
 話したことはほとんどなく、奥手で影の薄い男だが実力はそこそこあるとエルナー統括講師が言っていた。

「先生、あの……あなた宛てにこんなものが」

 手渡されたのは一通の手紙。ピンクの可愛らしい封筒にハートのシールが張られたものだ。
 あて先は書いてある。だが肝心の送り主の名前が記載されていなかった。

「……なんだこれ。あ、ありがとうな持ってきてくれて」
「あ、いえ。それでは僕はこれで」

 そういうと若い男は早々に去っていく。

「どうしたんですか先生」
「いや、オレ宛ての手紙らしいんだが……」

 俺はハルカとレーナにその可愛らしい手紙を見せる。
 と、ここで二人が、

「「こ、これは!!」」

 いきなり二人が目をギラッとさせてその手紙を凝視する。
 
 な、なんだなんだ。二人とも目が鋭く……いや怖くなったぞ。
 
「……先生。これはとんでもないことになりましたよ」
「ええ……まさかこんなにも早くこの日が来てしまうとは……」
「は、はぁ?」

 二人の言っていることが理解できず、首を傾げる。
 
「ど、どういうことだ二人とも。この手紙は二人にとってそんなにヤバイものなのか?」
「ええ、とっても」
「はい。ものすごく」

 見た感じただの手紙にしか見えない。しっかりと丁寧に封がされ、怪しげな雰囲気はまるで感じない。
 はっ! もしかするとこの手紙、俺には分からない何か危険なモノが入っているとかなのか?

 危険薬物が入っているとか、禁忌の危険級魔道具が入っているとか。
 この可愛らしい封筒はそれらをカモフラージュするための罠。

 レーナとハルカはそれを見破っているのかもしれない。

 ―――ゴクリ……

 思わず息を呑む。そして俺は二人に思い切ってその理由を聞いてみる。

「ふ、二人とも。なんでこれをヤバイものだと言い切れるのだ? オレには全く分からないぞ」

 こういうと二人は思わず「えっ」と驚くような顔を見せる。
 
「……れ、レイナード。ここまで露骨にアピールされて分からないですか?」
「そ、そうですよ。さすがに超絶鈍感なレイナード先生でも既に気付いていらしゃるのかと……」

 いや、全くもって見当がつかないんだが……
 むしろなぜこの手紙一枚でそこまで驚けるのかが知りたいくらいだった。

「す、すまん。分からん」

 ここは正直にそういうしかない。 
 だって本当に分からないだもん。仕方がない。
 
 するとレーナが、

「ならレイナード。それを開けてみれば分かると思いますよ」
「あ、開けるのか? これを?」
「開けないと分からないじゃないですか。特にレイナードは」

 いや俺は単純に中に危険なモノが入っているかもしれないと危惧しているから躊躇しているのだが……

 だが二人の言う通り、開けないことには何が入っているかは分からない。
 もしかしたらトラップの可能性もある……が、

(ええい。もうどうとでもなれ!)

 俺はシールを取り、ゆっくりと封を切る。

 そして中を慎重に覗きこむと中には一枚の紙が入っていた。

「……か、紙?」

 見る所他に危険な臭いは全くしない。同封されたものは他になく、紙切れ一枚だけが中に入っていた。
 そしてその紙には何者かが書いたとされるメッセージが記述されていたのだ。

 そこに書かれていたのは……

『レイナード・アーバンクルス殿。本日17時ちょうど。本館展望デッキで待っています。お忙しい中だとは思いますが、大事な話をしたいのでよろしくお願い申し上げます』

 丁寧な草書体で書かれたその手紙はよほど達筆な人間が書いたと推測できる。
 だが相変わらず送り主の名前は書かれておらず、書かれていたのは俺の名と本文のみ。

「どういうことなのだろうかこれは……」

 一人頭を悩ませる俺をレーナとハルカがじーっと見つめる。

「分かりましたかレイナード。そういう意味ですよ」
「は、はぁ……」
「レーナ先生。これは分かっていないご様子ですよ」

 分かるも何もさらに謎が深まったんだが? 
 再度手紙に目を通すがやはり分からない。
 
 そんな表情を浮かべ、ただぼーっと手紙を見つめる俺にレーナは「はぁ……」っと溜息を漏らす。

 そしてそれを見ていたハルカは我慢できなくなったのか俺の耳元に顔を寄せ、小声で話す。

「先生、それはどう考えても”ラブレター”ですよ」
「ら、らぶれたーだと!?」

 俺のその声は講師室に響き渡り、一気に周りの講師たちの目線をこちらに向けてしまった。
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