元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
76 / 127
第4章 おっさん、祭りに参加する

第75話 眠る驚異

しおりを挟む
「実戦形式ということで1対1の決闘デュエルでいいんだな?」
「は、はい! 大丈夫です!」
「ハンデとして創兵クリエイトポーンを使ってもいいんだぞ?」
「だ、大丈夫です! 一人で戦います!」

(ほう……大人相手にやる気だな)

 俺とオルカは学園の地下演習場にいる。彼女から実戦形式での指導を申し込んできたからだ。形式は1対1の決闘(デュエル)ということになった。魔術や武器使用、常識の範囲内ならなんでもありのルールだ。
 オルカは地下演習場にある武器庫から片手剣を持ち出す。

「……準備、できました」

 オルカは片手剣を握りしめ足を開き、ぐっと構える。
 
(片手剣を使ってくるか。魔術も相当なものだと聞いているが……)

 オルカが初等部に入って早1ヶ月。この短期間で彼女はとてつもない名声をあげた。さっきもオルカが言ってくれたように中等部への編入も決まっている。
 初等部に入って1ヶ月の女の子が飛び級で中等部に入るなんてアロナードの歴史上、前代未聞の出来事らしい。
 
 ちなみに俺も同じような経験をしたことがある。俺は初等部で学校を卒業し、神魔団に入ったわけだがその前は中等部への飛び級編入を薦められたことがある。
 だが俺は学校自体を嫌悪、否定していたので断って組織に入った。今のオルカは正にその時にあった出来事と同じことが起きているのである。

「先生も手加減なしでお願いします。勉強の成果……全力で出します!」
「ああ、全力でこい。オレが受け止めてやる」

 しかしながらオルカは俺と違い勉強熱心な生徒だ。
 ガキの頃からひねくれていた俺とは違い、オルカは全うに知識を吸収しようとしている。理論なんて学術なんてくだらないと思っていた当時の俺とは大違いだ。

「……それでは、行きますよ」

 ひとときの間が緊張感を駆り立てる。
 そしてオルカは普段のイメージがガラッと変わるくらいの雄叫びをあげ、向かってきた。 
 
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 初速から速い。一歩踏み込んだ瞬間、あっという間に生まれる爆速で一気に懐へ入り込まれる。

「ソード、《シャイン・ブレイド》!」
「むっ……!」

 気を抜きすぎていた。間一髪、彼女の攻撃を防ぎきる。

「……さ、さすがレイナード先生です。一撃で決めるつもりでしたが甘過ぎました」

 講師相手に一撃で決めるつもりだったのか……さすがだ。
 確かに自分と比べて格上の相手と対峙する場合、長期戦になれば不利になるのは己だ。オルカはそこをしっかりと把握した上で神速の一撃を繰り出した。戦い方としては最も正しい選択だ。
 それを初等部の子が計算しつつ行動に移している。正直、凄まじい成長力だ。
 
 俺は思わず感心してしまう。

 今の動きを見てすべて分かった。確かに彼女はもう初等部の器を遥かに超越している。正直高等部の下位クラスの連中よりいい動きをしているといっても過言ではない。
 俺ですらさっきの一撃はかなり危なかった。気を抜いていたとはいえ対人で脅かされたのは生まれて初めてだ。つい防御に力を入れてしまった。
 このレベルなら初等部の講師陣がお手上げなのも納得だ。

「さすがだなオルカ。噂通りの強さだ」
「そ、そんな……強いだなんて」

 オルカは決して自分の実力を鼻にかけたりしない。常に謙虚でひた向きで学ぶことを忘れないといった武人のような子だ。

(それはあのゲッコウによる影響でもあるのか? 奴はオルカを奴隷の中でも特別扱いにしていたらしいし……)

 何がともあれ気は抜けないということは承知した。俺もほんの少しだけ力を入れることにする。

「続きをやろうオルカ。どんどんかかってこい」
「わ、分かりました! ……では参りますよ!」
 
 またもオルカが前へ一歩踏み出した瞬間、凄まじい俊足で一気に距離を詰められる。
 動き自体は視認できたが普通の人ならまず無理だろう。おそらく消えて見えるはずだ。

「《アイス・バニッシュ》!」
「ちっ、氷結魔術か」

 足元が氷によって覆われ、身動きができなくなる。
 そしてオルカは立て続けに攻撃をしかける。

「ソード、《グラン・ブレイク》!」

 オルカの小さな身体から繰り出される俊敏な一撃。剣先に込められた魔力で俺を貫こうと刃を向けてくる。
 
 だが―――

「発動、《ジ・グラヴィティ》」
「えっ、身体が!」

 俺は辺り一帯の重力を捻じ曲げる古代魔術を発動させる。

「み、身動きが……取れない」

 そりゃそうだ。これは俺が十数年前に魔王を対峙した時に行使した牽制用の下位魔術。人類史に残る7人の異端魔術師の一人が使ったというものだ。人間はもちろん、魔王ですらかなわなかったこの術ではどんな相手だろうと歯が立たない。

(だがオレに魔術を使わせるとは……正直驚きだ)

 オルカの予想外の力に思わず力を解放してしまう。
 下位魔術で牽制用であるとはいえ古代魔術なのには変わりない。これを使えるのは世界でも指折りの人間しかいないのだ。ちなみに神魔団の連中は全員古代魔術を行使することができる。
 言うなれば俺たちのような別格の魔力と力量を持ったものしか使えない術式といったところだ。
 
「うっ、負け……負けません!」

(……立ち上がる? そんなバカな!)

 数分もの間魔王さえも封じ込めたこの術を彼女は数秒で立ち上がるまでになる。そして剣を握りしめ、ジリジリと俺のもとへと近づく。

「負けない……私は絶対に負けない!」


 なんという執念だろうか。俺は今までこんなにも力に抗ったものを見たことがない。
 人であろうが魔族でだろうが相手の絶大な力を知れば竦んでしまうものだ。だが彼女は違う。
 その絶大で崇高な力を知ってもなお、立ち上がり剣を構えている。これは並大抵の精神ではない。
 鋼の精神、堅牢な精神、いやそれでは生ぬるいくらいだ。

「一撃……一撃だけでもいい。私は……」

 この瞬間、オルカは重力がねじまがった空間の中で走り出す。
 そして剣を横に向け、正面から突進をかけてくる。

(この重力下で走れるだと!?)

 驚く間もなかった。彼女は驚異的な速さで詰め寄ってくる。

(まずいな、ここで術式を解除すれば重力変化の反動でオルカの身体が……)

 だがその心配をすることはなかった。考えている間に彼女の剣先は俺の腹部一歩手前のところでピタリと止まる。

「お、オルカ……?」

 呼びかけると彼女は上を向き、ニッコリと笑う。
 
「……やっぱり、さすがレイナード先生です。私の力じゃ到底足元にもおよばな……」

 ―――バタッ

「お、おいオルカ!」

 オルカは燃え尽きるかのように地面に倒れこむ。俺はすぐさま術式を解除、治療へあたる。
 そして治療の最中、俺は目を瞑るオルカの姿を見て確信した。

 ……この子は恐らく近い将来とんでもない存在となるだろう。この眠った驚異が目覚めたとき、どうなるか分かったものじゃない、と。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...