元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第73話 仮面鬼

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「……なるほどそいつがここ3年の魔技祭で優勝をしているのか」
「はい。3年前に突如として現れた天才講師、名目上では3年A組の担任講師ですが普段は学園に姿を出すことはめったにありません」
「普段は顔を出さない? どういうことだ?」
「説明がしづらいのですがいわゆる非常勤、通年で教えるような方ではないということです」
「ということはこの時期になると顔を出す魔術講師ってことか?」
「そういうことになりますね。魔技祭が終わった瞬間姿を消してしまいますが……」

 これは先ほどミキが言っていた”伝説”の話だ。毎年この時期になると突如姿を現す男、そしてそいつが3年のA組を率いて魔技祭の舞台に現れ、華麗のごとく優勝をもぎ去っていくらしい。
 これがもう3年もの間続いている。

「そんなにすごいやつなのか?」
「ええ、それはもう。毎年優勝はA組だって言われるくらいですからね」

 そいつは知らなかった。自分のクラスのデータ分析に気を取られてしまって周りを見渡すことを怠っていた。
 俺は今こうして言われるまでその存在を知らなかったが巷ではかなりの有名人らしい。特に熱狂的な魔技祭ギャラリーでは知らない人間がいないくらいだ。
 
「そいつを倒さなきゃ優勝は無理ってことだな」
「はい。それに今年のA組の生徒の質もかなりのものだとお聞きしていますし、その能力を最大限にまで引き出せる仮面鬼マスク・ド・デーモンはやはり天才的な指導力を持った方なのでしょうね」
「ん、仮面鬼?」
「ああそれは熱狂的なファンの方が命名した二つ名です。いつも顔をスッポリ隠す悪魔デーモンのような仮面を身に着けていることからそう言われています」

 ミキは話しながら俺にコーヒーのおかわりがいるかと身振りで問いかける。
 俺は首を振り、ゆっくりと椅子から立ち上がる。

「なぁミキ、その仮面鬼とやらは魔技祭当日に現れるのか?」
「え? あ、はいそうですよ。学園で見かけたことはないですねぇ」
「そうか、分かった。とっくに退勤時間を過ぎているのに悪かったな。レーナのことすごく助かった」
「いえいえ! それが私のお仕事ですから!」
「じゃ、お疲れ様な」
「はい、お疲れ様です!」

 医務室を後にし、一服しに屋上の展望デッキへ。
 そして展望デッキでスカーレットに貰った葉巻を一本、口にくわえて火おこしの魔道具で火をつける。

「ふぅ……ん、確かにこのシガー美味いな。スカーレットが好むわけだ」

 俺は葉巻などめったに吸わないが、これは中々ハマりそうなものだった。
 
「……にしても少し考えないとな。目先の敵ばかりに気を取られては優勝なぞ……」

 葉巻を口にくわえ、夕焼け色に染まった王都の街並みを眺める。
 日没を迎える夕日が王都をさらに映えさせており、ここから見る景色は何度見ても絶景と言える。
 何かに迷ったらとりあえずここに来てみる。俺にとってはそういう場所だ。

「もう時間はさほどない。やることもまだ多い。気が遠いなまったく」

 自らの忙しさに少し不満を募らせる。
 
(そろそろ仕事に戻るか……)

 俺が後ろを振り向き、戻ろうとしたとき一人の男が俺の目に入った。

(ありゃ……なんだ?)

 何か地面を見つめながら何かを探しているようだ。
 俺は近づき、話をかけてみることに。

「おい、どうしたんだ?」
「はい? どなたです?」

 俺はその男の姿を見て驚愕する。なんと顔全体をフェイスマスクで覆っており、前すら見えているのか怪しいくらいだった。
 明らかに変質者、というか正常者のようには見えなかった。

「……俺は魔術講師をやっているものだが何かあったのか?」

 地面を見ながらあたふたする男に俺は優しく問いかける。

「あの……えっと、その……仮面が」
「仮面?」
「はい。わたくしの仮面がどこかに消えてしまったのです。あなた様は何か仮面らしきものを見ませんでしたか?」

 俺はそれを聞いてさらに驚愕する。なぜかといえばその探している仮面がその男の頭の上に乗っていたからだ。

 そりゃ地面探しても見つからないのは当然だろう。なぜならお前の頭の上にそれがあるのだから。

「あ、あのぉ……」

(こいつわざとやっているのか? それとも本当に……)

 外見変質者、行動も変質者とくるともう追放してもいいんじゃないかと思うようになってくる。
 だがそれだけではあまりに情報不足だ。
 とりあえずこのバカに……

「おい、それならお前の頭の上にあるやつがそうじゃないのか?」
「頭の……上?」

 俺が仮面の在り処を指摘すると男は頭に手を置き手探り始める。
 まさかとは思うが純粋に気づいていないのだろうか…… 
 そう思った矢先だった。

「あ、本当だ。ありました!」

 っておいマジかーい!

 男は秒速で仮面を身に着け、パッパと服についた砂利を払う。
 
「ありがとうございます。おかげで見つけることができました!」
「お、おう……よかったな」

 この雰囲気だと本当に頭の上にあったのは盲点だったらしい。自分で身に着けておいて気づかないとは……ある意味すごいな。
 
「あの……お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「ん、俺か? レイナードだ」
「レイナードさんですね! すみません、お騒がせいたしました」
「いや、大丈夫だ」

 男は深々と俺に頭を下げる。
 
「ではでは! わたくしはこの辺で。またお会いできるといいですね!」
「あ、ああ……」

 男はそう一言をいうとまるで流れ星のように颯爽と走り去っていく。
 
(変な奴だ……)

 はぁ~っとため息をし、俺が講師室へ戻ろうとした時だ。俺は先ほどの男がつけていた仮面に何か違和感を感じた。

(ん……待てよ。あいつのバカさ加減に気を取られていてあまり注目していなかったがやつがつけていた仮面……デーモンみたいな感じじゃなかったか?)

 俺は先ほど起こった出来事をもう一度思い返す。記憶を振り絞り、何気なくみていた仮面に焦点を当てると……

「やっぱりだ。あいつのつけていた仮面は……間違いなくデーモンだった!」

 疑惑は確信へと変わる。
 
 あんな奴が……天才だと……?

 あのバカみたいな行動をする奴と比例しないその能力に俺は疑念を抱かずにはいられなかった。
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