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第4章 おっさん、祭りに参加する
第65話 三番勝負 其の二
しおりを挟む第一回戦、料理対決はレーナが勝利を収めた。
そして時がたつ間もなく第二回線が始まろうとしていた。
「次なる勝負は学問対決です!」
「学問だ……?」
「そうです! 講師たるもの生徒に教えられるだけの知識を持たなければなりません。そのための対決です」
先ほどの負けが響いたのかよりハルカのやる気度が増している気がする。対するレーナも燃えてきたようですっかりノリノリだ。
そしてもう一人の審査員枠ラルゴはというと……
「う、うぅぅぅ目の前に邪気が……邪気を感じます……!」
先ほどから変な言葉を口にしながら魘されていた。
よほどハルカの料理が凄まじい威力を発揮したのだろう。もうかれこれ2時間以上この状態である。
(これからはハルカに料理はさせないようにしよう……絶対に)
俺は彼の犠牲を得て心に深く誓った。
そしてハルカは俺たちにルールを説明する。
「―――以上が第二回戦のルールです」
「なるほど、クイズ形式ってことか。回答権は先に手を挙げた方が得られると」
「そうです。そしてこれが私が持ってきた出題範囲です」
手渡されたのは一冊の薄い冊子。中を開くと事細かくびっしりと手書きで問題が書かれていた。
だがここでふと気付く。
「おい、これだとハルカが有利にならないか? 自分で書いた問題なら全問把握済みじゃないか」
だがハルカはふふふと笑いながら、
「それがですね先生。それを書いたのは私ではなくラルゴ先生です」
「ん? それはどういうことだ?」
聞く所、ハルカがラルゴと王都で会った際に無理言って問題を作るように頼みこんだそうだ。
そして出来上がったのがこの冊子。内容もラルゴ本人しか知らないらしくハルカはまったく中身を見ていないという。
「これなら公平ですよね。生憎ラルゴ先生は具合悪いみたいですし」
(おいおい誰のせいでああなったと思ってるんだ?)
でも確かにそれなら公平と言える。そしてその問題文は俺が読むこととなった。
「さて、じゃあそろそろ始めましょうか」
「はい! 一魔術講師として知識勝負で負けるわけにはいきません!」
お互い気合いは十分。俺は冊子を開き、第1問の問題を読み上げる。
「じゃあ読むぞ。第1問、我々B組との予行演習初日の際、レイナード先生の履いていたパンツの柄はなんで……ってなんじゃこりゃぁぁぁ!」
「はい先生! 答えは水玉柄です!」
「答えるなぁぁぁぁぁぁ!」
「レイナード……なんか意外ですね」
「おいレーナ、その意味深な笑みは何だ?」
即答するハルカとニヤニヤが止まらないレーナ。
そしてその時、急に生き返ったかのようにラルゴが起き上がる。
「ふふふふ、見る限りですと第二回戦は始まっているようですねぇ……」
「おい、ラルゴ。これはどういうことだ?」
「知識ですよ。講師たるもの学問を知るだけでは意味がありません。普段接している身内や人との関係をよく知ってこそ真の指導者に……」
「くたばれ」
「ぐはっっっ!」
―――バタッ
俺の放った右ストレートは見事ラルゴの頬をえぐることに成功。そして彼は再び深い眠りにつくこととなった。
「くそっ、くだらん問題を作りやがって……とりあえずこれは破棄だ!」
「えぇぇぇぇぇ!? それじゃあ問題が出せないじゃないですか!」
「問題ならオレが出してやる。それなら文句はないな?」
「えっ、まぁ……先生がいいならそれでいいですけど……」
「よし決まりだ。じゃあ出すぞ……」
だがそうはいっても何の問題を出せば良いのか全く分からない。なぜなら俺は講師になるための教育を受けたことがないからだ。その上もっと言ってしまえば俺自身の学問上の知識は初等部で止まっている。
初等部卒業後、俺はすぐに神魔団へと入ることになったからだ。
(こいつらの言う学問ってあの教科書とかいう分厚い書物に書かれているくだらない魔術の歴史とかを指すんだよな)
正直今までも授業でさえ開いたことはなかった。当たり前のように自習をさせ、後は質問タイム。教科書を見せながら解説を乞う生徒もいたが俺は見ることなく指導をしていた。
だって頭痛くなるじゃん? あんなの見てたら数日で禿げ上がるわ。
魔術なんて所詮は感覚を上手く使えるか使えないか。この能力が使えるようになれば才能有り無し関係なく魔術本来の力の90%が出せる。才能うんたらって話は残りの10%が埋められるかどうかの話だ。要するに努力さえすれば誰でも魔術なんて高水準で扱えるようになるってことだ。
「まぁそれができないからって話なんだがな……」
「レイナード先生?」
「ん? ああ、悪い。考え事をしていた」
最近はこういうことが多い。魔技祭で勝利を手にするにはどうするか、そればかり考えてしまう。
「じゃ、気を取り直して問題を出すぞ。じゃあ……」
俺はたった一つだけ二人にクイズを出す。
「―――問題は以上だ。分かったか?」
「「「「「はい!」」」」」
二人とも出題と同時の即座に手を挙げる。見た感じ若干ハルカの方が早かった。
「じゃあ、ハルカ。答えてみろ」
「――――ですよね?」
「うむ、正解だ」
「やったぁぁぁ!」
ハルカは両手を挙げて喜ぶ。レーナも答えが分かっていたようで悔しがる表情を見せていた。
「いいか。それは生徒だけの問題じゃない。そういうところを一番しっかりとしないといけないのは指導者の方だ。魔技祭の時にはそのことを忘れないでほしい」
「大丈夫です。それだけは自信がありますから!」
「私も同意見です」
「そうか。それなら安心だ」
一瞬、答えが出るか不安であったがどうやら心配しすぎだったようだ。
よって二回戦はハルカの勝利に軍配が上がった。
「レーナさん。次はいよいよ最後の対決です。明日、学園の演習場で待ってますから!」
「分かったわ。顔洗って待っていなさい!」
二人は再び火花を散らし合う。
(はぁ……ま、この争いさえなければいいんだがなぁ。上手くはいかんか)
「う、うう……私は何を……」
寝かせていたラルゴが再度起き上がる。
少し眩暈がするらしく頭を押さえていた。
「あれ? もう終わっちゃいましたか?」
「ああ、もう勝負はついたぞ」
「そ、そうですか……せっかくとっておきの問題があったので紹介しようと思ったのですが……」
「とっておき?」
「はい。レイナード先生の彼女さんの話です」
……え?
「かの……じょ?」
「レイナード……に?」
空気が先ほどと比べ180°変わる。
「あ、お二人とも知らなかったのですか? ああ……こりゃ失敬、失言でしたね。今の話は聞かなかったこと……」
「レイナード先生どういうことですか?」
「私も是非聞きたいですぅ~ふふふふふ」
「お、おい何のことだ……」
二人がすぐさま俺の元へ顔を近づけてくる。
(やばい……こりゃ殺される……)
ハルカはどう考えてもご立腹な様子。レーナに関しては完全に目が逝ってしまっていた。というか怖すぎて目すら合わせることができなかった。
「いつ彼女なんて作ったんですかぁ?」
「そうですよ。レイナードにはそんな時間はなかったはずです。ふふふふふ」
「ちょ、お前ら何を! てかラルゴてめぇ……」
「え? 違うのですか? 昨日のあの少女は」
「あの少女……だと? 何のことだ!」
まるで心当たりがない。必死に思いだそうとするが二人の怒涛の質問攻めによって考える余裕すらなかった。
「先生、覚悟はできていますか?」
「レイナード……歯を食いしばってくださいね」
「お、おい……やめろ、やめろぉぉぉぉ!」
弁解する隙もなかった。
そして俺はこの後、数時間に渡る説教を受けることになった。
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