元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第64話 三番勝負 其の一

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「―――で、なんで俺の家なんだ?」
「仕方ないじゃないですか。ここ以外でやれる場所がないんですから」
「そんな勝負、お前たちで勝手にやればいいじゃないか」
「それじゃあ意味ないんです! しっかりとレイナード先生のいる前で勝負をするからこそやる必要があるんですよ」
「私もそれに関してはハルカと同じ意見です」
「レーナ、お前まで……」

 二人の女魔術講師は互いに火花を散らしあっていた。
 そして俺はその勝負ごとに巻き込まれた被害者だ。
 ラルゴもそうだが……まぁなんかこいつはこいつで楽しそうな顔をしているから放っておくことにする。
 
「それでハルカ。勝負とは具体的に何をするの?」
「三番勝負です」
「三番勝負?」
「はい。内容は料理、学門、そして最後は決闘デュエルです」
「……分かりました。では早速やりましょうか」

 互いに冗談抜きでドンパチやるみたいだ。表情が真剣そのもので普段はあまり顔に出ないレーナも珍しくおもむろに出ている。
 猫耳もさっきからそわそわと動いており、普段のような落ち着きが見られなかった。

(なんでそこまでするんだろうか……)

 俺は訳が分からなかったが、こうなった以上もう止めることはできない。
 俺は黙って二人を見守ることにする。

「それでレイナード先生?」
「ん? なんだハルカ」
「今回の勝負、レイナード先生に最終的な審査をしていただきたいと思っています」
「それは俺が勝負の勝ち負けをつける、ということか?」
「はい。お願いします」

 ということは二人の勝負の行方は俺次第ということになるのか。
 俺の判断によっては今後二人と講師生活をするにあたって大きな影響を及ぼす可能性がある。
 ここは……しっかりとしなければならないな。自分のためにも彼女らのためにも。

「分かった。でもお互いケガだけはするなよ?」
「分かっています。じゃあレーナ先生、勝負を始めましょうか!」
「臨むところです!」

 この瞬間、二人の戦いの火ぶたは切って落とされた。
 そしてまず最初の勝負内容は……

「料理です! どちらが先生の舌を唸らせられるかどうか……それで勝敗をつけましょう」

 第一回戦は料理対決。二人とも早速準備に取り掛かる。
 ちなみに審査は俺とラルゴだ。

「いやぁレイナード先生。なんだか楽しくなってきましたねぇ~」
「それはお前だけだ。オレから言わせればただのとばっちりだ」
「でも羨ましいですよ。二人の華が自分を賭けて勝負をするなんて実に美しいではありませんか!」

 はぁ……こいつもこいつでよく分からない。
 なぜこうも俺の周りには変な奴が集まるのだろうか。
 唯一俺が知り合った人物の中でまともなのがオルカくらいだな。
 一番最年少の女の子が一番マシだなんてろくな人付き合いをしていないなと思う。
 
 それにしてもさすがレーナだ。料理に関してはかなり手際がいい。
 対するハルカは少しもたついているようだが、決して遅いわけではなかった。
 そして数十分後、二人の料理は完成した。

「レイナード、ラルゴ先生お待たせしました。肉じゃがです」

 まずはレーナの料理からだ。
 うむ、相変わらず見た目も美味しそうだ。

 俺とラルゴは同時に一口、料理を運んでいく。
 
「うん、流石レーナだな」
「すごく美味しいですね。このホクホクした芋といい甘い汁がしみ込んだ野菜、そして脂がのったお肉。どれも絶妙なバランスではまってしまいそうです」
「あ、ありがとうございます!」

 嬉しそうな表情を浮かべるレーナ。
 やはり安定した優しい味だ。何度食べても飽きない。
 そして次に出てきたのはハルカの料理だ。

「どうぞ先生方、お召し上がりください」

 見た所、すごく美味しそうな感じだ。
 クロードの特産品をたっぷり使ったチキンスープのようだ。

「それでは私からいただきますね」

 ラルゴはそういうとスプーンでスープをすくいあげ、口に流し込んでいく。
 すると、

「……! これは……!」
「ん? どうした?」
「い、いえ……な、なんでも……ない……です」

 ラルゴの顔がみるみる青白くなっていく。
 そして首の辺りを抑え、まるで苦しんでいるかのような仕草をする。

「ら、ラルゴ先生? 味の方は……」
「あ……はい。と、とてもおい……しい……ですよ」

(おいおい顔面蒼白になりながら言っても説得力皆無だぞ?)

 もうどう見ても明らかに苦しそうだった。
 しかしたまに天然な所があるハルカは、

「そ、そうですか……よ、よかったぁ~」

(おぉぉい!)

 あまりの天然さに思わず声が出そうだった。
 そしてとうの本人はラルゴの姿を見ても何も気にしている様子はなくホッとため息をついている。

「う、うう……」

 ラルゴは苦しそうに唸りをあげながら俺の近くまで寄ってくる。
 そしてハルカの目を盗み、俺にそっと耳打ちをする。

「れ、レイナード先生……あれは食べないほうがいい……です……よ。あれは……食せるものでは……ないです」

 そう言い残すとラルゴはそのままバタッと気絶する。

「お、おいラルゴ!」

 ハルカの料理を食べた時点でもう限界だったのだろう。より一層、顔色の青白さが増していた。

 結局ところ、この勝負は何の迷いもなくレーナに軍配が上がった。
 俺は直接口にはしていないが、あとでハルカの料理の匂いをかぐと凄まじいほどの薬品臭がした。
 恐らくハルカは料理を科学か何かと勘違いしていたのだろう。
 ハルカは元研究者で頭脳明晰だ。だがそれ故に料理にも科学的要素を混合してしまう。
 よってこのような殺人兵器が出来上がったわけだ。

(こりゃ……さすがにあのバカが気の毒だな)

 自分が食さなくて良かったと思う反面、ラルゴへの少しばかりの同情が心中で渦巻いていたのだった。
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