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第4章 おっさん、祭りに参加する
第62話 追跡者
しおりを挟むカーテンから漏れた強い日差しが俺を目覚めさせる。
少し頭痛がして関節に痛みがある。
俺たちはあの後、夜遅くまで晩酌をしており寝たのはほんの数時間前だ。
(二日酔いか? 頭が……)
それにしても身体が重い。なんだか誰かに潰されているかのようだ。
(身体が動かん……どうなっている?)
俺はそっと目を開けると目の前にレーナの姿が。
「……!?」
俺の上でうつ伏せで寝ているレーナ。すやすやと寝息を立て、熟睡している。
(どうなっているんだこれは……)
昨日の記憶がごっそりとない。レーナと共に晩酌していたのは覚えているが酔いが回ってから俺がどうなっていたかは全く記憶にない。
ちなみに俺はそこまで酒に強いわけではない。対するレーナはすごく強かったのでグイグイといっていたが俺はすぐにバテた。
(飲みすぎだったか……)
とりあえずこのままじゃ身動きが取れないのでレーナを起こすことに。
「レーナ、起きてくれ。動けない」
「ん、んんん?」
俺の声に反応してレーナがそっと目を開ける。
そして目の前にある俺の顔をみるなり慌ててその場から離れる。
「え、あっ、ご、ごめんなさいレイナード!」
「あ、ああ……」
「私一体どうなって……確か布団で寝ていたはずなのに……」
そうなのか? 確かに横を見ると布団がしっかりと敷かれてある。
そこで寝ていたにも関わらず俺の腹の上で堂々と熟睡なすっていたということは相当な寝相の悪さだ。
「寝相……悪いのか?」
「ふ、普段はそんなことないんですよ!? た、たまたまですたまたま」
顔面を真っ赤にされながらそう言われても説得力は皆無だ。
いつもキチンとしているレーナも日常はそんな感じなのか……意外だ。
「と、とりあえず何かご飯作りますね」
「お、おう……」
寝起きというのに素早い行動だ。
時刻は昼前。あっという間に食事の支度が出来上がった。
「お、おお……これまたすごいな」
寝起きとは思えない豪勢な食事の数々。
家事の腕前に関してはホントに尊敬する。一人暮らしを始めて結構経ったが未だにまともな料理も作れない上、部屋は散らかり放題だ。
(彼女のこういうところは見習うべきだな)
「ん? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。いただきます」
俺はレーナの料理を一口、二口と次々と口の中に入れていく。
やはり美味しい。毎日でも作ってほしいくらいだ。
「ど、どうでしょうか?」
「うん。すごくおいしいよ。流石レーナだ」
「そうですか……よかったぁ。あるものだけで素早く作っちゃったので味に不安がありましたが」
「いや、こちらこそすまん。食材不足で」
いやしかし昨日同様、何もない所からここまでのご馳走が作れるのはもはや才能だ。
恐らく食材は一種類か二種類くらいしか使われていない。しかしちょっとしたアレンジでこうも変わるとは本当に驚かされる。
冗談抜きで我が家の専属メイドとして雇いたいくらいだ。
「ごちそうさまでした」
寝起きだというのに難なく完食。いつもはあまり食さない俺だが今回は胃が求めているかのように平らげることができた。
「すまんなレーナ。今日は家まで送ることにしよう」
「そ、そんな……お気を使わなくても」
「いや、家主であるのに何もできないのは結構つらいものだ。せめて送り迎えだけはさせてくれ」
「そ、それなら……」
レーナは俺にある提案をする。
「か、買い物か?」
「はい。王都で少し行きたい所があって……ぜひ付き添いできてほしいな~って」
そんなことでいいのか。もっと他に要求されるかと思ったが……
でもまぁ彼女がそういうなら俺は別に構わない。
こうして俺たちは王都へ買い物に出向くことになった。
* * *
「―――らっしゃいらっしゃい! 今日も新鮮な魚はいってるよぉ~!」
「―――ねえねえお姉さん方、ちょっとうちの店見ていかない?」
「―――お姉ちゃん美人さんやねぇ~どや、うちの店きてくれたらサービスしたるで!」
相変わらず活気に満ちた所だ。それになぜか俺たちにぐいぐいと迫ってくるものが多い。
女性は俺の所へ、男性はレーナの所へ。
何を基準にして商売客を選んでいるのか実に疑問だ。
「ここはホントに楽しいところですよね。いつも活気で溢れていて」
「まぁうるさすぎるがな」
こう横に歩いていると前にレーナと買い物をしに来たのを思い出す。
確かあの時は変人魔剣姉弟の家へ行く前の出来事だった。
あの時もやはりレーナは注目の的だった。確かに彼女は美人だ。この不自然な猫耳を除けば……だが。
「わぁ~ねえねえ見てくださいレイナード! これすごく綺麗ですよ!」
そこに並べられていたのは青く光り輝く結晶のついた華美なネックレスだった。
「ん? ああ、深海結晶のネックレスか」
「深海結晶?」
「そうだ。イグニス帝国の結晶鉱山で取れる希少結晶だ。まるで海のように青く澄んだ色をしているためそう呼ばれている」
「お、兄ちゃんよく知っているねぇ。これは特別なルートを経て手に入れた最高級の深海結晶を使っているんだ」
「へ、へぇ……レイナードは物知りですね」
「まぁ昔は世界を渡っていた時期もあったからな」
俺の全盛期時代は団長の指令で色々な所へ遠征に行ったのを今でも覚えている。
そしてそこで色々なものを見たり聞いたりした。なので結構色々なことを知っているのだ。
「でもちょっと高いなぁ……やっぱり高級品は手が出せないです」
「まぁ希少価値の高いものだからねぇ……値下げしてあげたいけどできないのよ」
「仕方ないですね。行きましょうかレイナード」
「あ、ああ」
確かに値は高い。それも俺の給料一か月分に相当する金額だ。
だが……
「なぁおじさん、これ一個くれないか?」
「お、男買いだねぇ~毎度ありぃ!」
これで今月の給料はおさらばだな。
まぁ仕方ないか。
「どうしたんですかレイナード? 早く行きましょ~」
「ああ、すぐ行く」
俺がレーナの元へ戻るその時であった。
すぐ背後で何かしらの違和感を感じた。
(ん? 誰だ?)
市場に入った時から何となく不信感があったが、やはり誰かにつけられているようだった。
「行くぞレーナ」
「え、ちょ、レイナード?」
とりあえず人のいない所まで誘きよせるか……
何者かわからない以上、こんな人の多い所でどんぱちやるわけにもいかない。
俺はレーナの手を引っ張り、裏の路地へと駆け込んだ。
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