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番外編
どんぐりころころ
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庭のイチョウは黄色く染まり 樫の木からはどんぐりが落ちてくるようになった。
参拝者の邪魔にならぬよう 石畳の上を竹箒で掃いていく。
コツンと目の前にどんぐりが落ちてきて、鎮雄は幼い頃の慈海を思い出した。
+++
『どんぐりころころ どんぐりこー! おうちにたまってさぁーたいへん! どうじょがでてきてこんにちはー ぼっちゃんいっしょに あしょびましょー!』
全体的に間違えてる歌詞を元気に歌いながら どんぐり拾いをしている慈海に 対し内心ではツッコミを入れつつ 微笑ましく眺めた。
『あ! ぼうし ついてるでっかいのみちゅけた!』
嬉しそうに 小さな手にはやたら大きく見えるどんぐりを 大事そうに俺へ持ってくる。
『ちんゆーちんゆー! みて!』
『わぁ 大きくて艶々でお帽子もついてて 坊ちゃんはどんぐりを見つける天才ですね』
思い付く限りの褒め言葉を並べてやると、慈海は嬉しそうにドヤ顔で俺にプレゼントだと言って差し出してくれた。
『いいんですか? ありがとうございます』
『いつも ちんゆー がんばってるから ごぼうび!』
『ふふ、ご褒美ですか? ふふ、ふふふ、ありがとうございます。嬉しいです』
幼稚園の年長組に上がって すっかりお兄さんになったと思う反面、未だに言い間違えやどこか拙い話し方が残っていて ついつい笑ってしまう。
『うれしい? ほんと? やった!』
きらきらとした瞳で上目遣いに見上げてくる姿は、自分にもなにか欲しいと言わんばかりに期待のこもった顔だった。
『ふふ、さぁ お部屋に戻って坊ちゃんにもおやつを差し上げましょうね』
抱き上げてやると、首に小さく柔らかい腕がぎゅっと絡まってくる。
『ちんゆーだいすき』
『ふふ、私も大好きですよ 坊ちゃん』
小さな命の尊さに心が浄化される気持ちになっていると、その日 慈海は俺の頬に唇を寄せた。
『小学校になったら ご褒美に デートしてね?』
キス と言うよりは顔をくっ付けただけの様ではあったものの、初めてされたその行動と耳をくすぐるセリフに一瞬頭が追い付かなかったのだった。
+++
「ただいま」
ぼーっと掃き掃除をしていると 坊ちゃんが高校から帰って来て背後に立っていた。
「坊ちゃん おかえりなさい」
ほんの少しだけ驚いたものの 坊ちゃんへ微笑んでやると小さく頷いてから、1枚の紙切れを差し出して「これみて」と呟いた。
「これは……試験結果ですか? へぇー、学年1位! 凄いじゃないですか」
各科目 95点以上 否、ほぼ満点だ。遅くまで部屋の電気が付いていたのを知っているが故に感動して労いの言葉をかけてやったが、慈海は今ひとつ物足りないといった表情をした。
「俺、めっちゃ頑張ったんだけど」
伺うような、なにか物欲しそうな期待がこもった態度に既視感を覚えてピンと来た。
「ああ、ご褒美が欲しいんですね? ふふ」
あの頃に比べれば随分と大人になったが、まだまだ 子供なのだと微笑ましくなったのだった。
参拝者の邪魔にならぬよう 石畳の上を竹箒で掃いていく。
コツンと目の前にどんぐりが落ちてきて、鎮雄は幼い頃の慈海を思い出した。
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『どんぐりころころ どんぐりこー! おうちにたまってさぁーたいへん! どうじょがでてきてこんにちはー ぼっちゃんいっしょに あしょびましょー!』
全体的に間違えてる歌詞を元気に歌いながら どんぐり拾いをしている慈海に 対し内心ではツッコミを入れつつ 微笑ましく眺めた。
『あ! ぼうし ついてるでっかいのみちゅけた!』
嬉しそうに 小さな手にはやたら大きく見えるどんぐりを 大事そうに俺へ持ってくる。
『ちんゆーちんゆー! みて!』
『わぁ 大きくて艶々でお帽子もついてて 坊ちゃんはどんぐりを見つける天才ですね』
思い付く限りの褒め言葉を並べてやると、慈海は嬉しそうにドヤ顔で俺にプレゼントだと言って差し出してくれた。
『いいんですか? ありがとうございます』
『いつも ちんゆー がんばってるから ごぼうび!』
『ふふ、ご褒美ですか? ふふ、ふふふ、ありがとうございます。嬉しいです』
幼稚園の年長組に上がって すっかりお兄さんになったと思う反面、未だに言い間違えやどこか拙い話し方が残っていて ついつい笑ってしまう。
『うれしい? ほんと? やった!』
きらきらとした瞳で上目遣いに見上げてくる姿は、自分にもなにか欲しいと言わんばかりに期待のこもった顔だった。
『ふふ、さぁ お部屋に戻って坊ちゃんにもおやつを差し上げましょうね』
抱き上げてやると、首に小さく柔らかい腕がぎゅっと絡まってくる。
『ちんゆーだいすき』
『ふふ、私も大好きですよ 坊ちゃん』
小さな命の尊さに心が浄化される気持ちになっていると、その日 慈海は俺の頬に唇を寄せた。
『小学校になったら ご褒美に デートしてね?』
キス と言うよりは顔をくっ付けただけの様ではあったものの、初めてされたその行動と耳をくすぐるセリフに一瞬頭が追い付かなかったのだった。
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「ただいま」
ぼーっと掃き掃除をしていると 坊ちゃんが高校から帰って来て背後に立っていた。
「坊ちゃん おかえりなさい」
ほんの少しだけ驚いたものの 坊ちゃんへ微笑んでやると小さく頷いてから、1枚の紙切れを差し出して「これみて」と呟いた。
「これは……試験結果ですか? へぇー、学年1位! 凄いじゃないですか」
各科目 95点以上 否、ほぼ満点だ。遅くまで部屋の電気が付いていたのを知っているが故に感動して労いの言葉をかけてやったが、慈海は今ひとつ物足りないといった表情をした。
「俺、めっちゃ頑張ったんだけど」
伺うような、なにか物欲しそうな期待がこもった態度に既視感を覚えてピンと来た。
「ああ、ご褒美が欲しいんですね? ふふ」
あの頃に比べれば随分と大人になったが、まだまだ 子供なのだと微笑ましくなったのだった。
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待って‼️ニヨニヨが止まらないんだけど🤤🤤
坊っちゃん張り切りすぎて空回りしてんの
可愛すぎかっ‼️o(*≧∀≦)ノ
母性がくすぐられたじゃん🤣
ちょっと昭和感あるの、恋愛もDTっぽくて
ハート鷲掴みなんですけど?💕
ニヨニヨして頂けて幸せです♡
昭和レトロな恋人に合わせて頑張ってる平成坊ちゃん可愛かろう!?(?)
いつもありがとうございます♡
う腐腐腐∩^ω^∩
このお話、🦍っこりして、和んじゃうねえ!
ちんまくて、可愛いのに、要所で見せるスパダリ感🤤💕
たまんねー
さぁ!今から共に行こうぜ!
🦍ン🦍ンへ!!!
楽しんで貰えて嬉しいなー♡
でも伏🦍がわかんないやー🤔に……も……?んー、🦍へ🦍へ?ん〜なんだろう?(棒)
おショタなのにかっこいい坊ちゃんと 戸惑っちゃうけど癒されてる凛ちゃんの構図が好きです(◦`꒳´◦)ᵎᵎw
さらり様
このお話は泣いちゃうからーーー😭😭😭
朝からまた見返しちゃダメだったwwww😂
坊ちゃん………切ないよぉー😭
号泣しながら書いたやつを編集しながら号泣しておりました😂 😭
現在ほのぼの(?)ドエロ温泉旅行編を制作中ですのでよろしくお願いいたします🙇♀️