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1年生編3月
◆その想いは、ひそかに
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「あら、珍しいお客だこと」
色づいた桜が窓からかすかに見え隠れする日当たりの悪い美術室。春休みにわざわざ訪ねてくるような生徒はいない。……一度だけ宮本侑希が顔を出してきたが、アレは一般の生徒と一緒にするのも違うのでカウントしない。
「生徒会の用事かしら、シルヴィア」
「校内でその名前を出すのはやめていただけます?」
藍子は涼しげな声と共に笑う。
「ココは私のテリトリーよ。問題ないでしょう」
「……美術室内だけにしてくださいね」
「はいはい。それでわざわざ何の用?」
藍子が美術教師であっても、美術室にいる確率はとても低い。そんな彼女をわざわざ捕まえに来たのだから、涼子は気まぐれでここに来たわけではない。
「お願いがあって伺ったんですわ」
「ふぅん。わざわざ私に? 魔法でなんとかすればいいじゃない」
「私が魔法を使うより、教師であるあなたにお願いした方が楽だと思いまして」
今さら「なるほどね」と藍子は頷きながら、
「生徒のクラス分けは教師たちの独断ですもんね。いっそのことカイに全てやらせれば?」
「カイにそんな細かい調整ができるわけないですわ」
「それもそうね。分かったわ。前回同様私のクラスで二人共面倒をみるから」
涼子は少しだけ眉間にしわを寄せ、藍子の本来の名前を一度だけ呼んだ。
「はいはい。あなたの方も適当に理由つけておくわよ。まったく、これなら生徒として学校にいた方が気持ちが楽ね」
「結果的に魔法を使わない方が楽なこともあるんだから仕方ないですわ」
「魔法を使った方が楽なこともやらない魔女はいるけどねぇ」
用は済んだとばかりに涼子は建付けの悪いドアに手をかける。その背中をひっかくように、藍子は言葉をさらにかける。
「人間と魔女は絶対に相容れないわ」
「分かっています。私はそうゆうのじゃないんです」
ぴしゃりとドアを閉めて出ていきたかったが、引っかかって格好悪い音と共にドアは半分で止まってしまう。
「もう!!!」
乱暴に指を鳴らし、建付けの悪さを一瞬で直す。
これこそとっとと魔法で直しておけばいいのに、と悪態をつきながら本来の用事がある生徒会室に向かった。
色づいた桜が窓からかすかに見え隠れする日当たりの悪い美術室。春休みにわざわざ訪ねてくるような生徒はいない。……一度だけ宮本侑希が顔を出してきたが、アレは一般の生徒と一緒にするのも違うのでカウントしない。
「生徒会の用事かしら、シルヴィア」
「校内でその名前を出すのはやめていただけます?」
藍子は涼しげな声と共に笑う。
「ココは私のテリトリーよ。問題ないでしょう」
「……美術室内だけにしてくださいね」
「はいはい。それでわざわざ何の用?」
藍子が美術教師であっても、美術室にいる確率はとても低い。そんな彼女をわざわざ捕まえに来たのだから、涼子は気まぐれでここに来たわけではない。
「お願いがあって伺ったんですわ」
「ふぅん。わざわざ私に? 魔法でなんとかすればいいじゃない」
「私が魔法を使うより、教師であるあなたにお願いした方が楽だと思いまして」
今さら「なるほどね」と藍子は頷きながら、
「生徒のクラス分けは教師たちの独断ですもんね。いっそのことカイに全てやらせれば?」
「カイにそんな細かい調整ができるわけないですわ」
「それもそうね。分かったわ。前回同様私のクラスで二人共面倒をみるから」
涼子は少しだけ眉間にしわを寄せ、藍子の本来の名前を一度だけ呼んだ。
「はいはい。あなたの方も適当に理由つけておくわよ。まったく、これなら生徒として学校にいた方が気持ちが楽ね」
「結果的に魔法を使わない方が楽なこともあるんだから仕方ないですわ」
「魔法を使った方が楽なこともやらない魔女はいるけどねぇ」
用は済んだとばかりに涼子は建付けの悪いドアに手をかける。その背中をひっかくように、藍子は言葉をさらにかける。
「人間と魔女は絶対に相容れないわ」
「分かっています。私はそうゆうのじゃないんです」
ぴしゃりとドアを閉めて出ていきたかったが、引っかかって格好悪い音と共にドアは半分で止まってしまう。
「もう!!!」
乱暴に指を鳴らし、建付けの悪さを一瞬で直す。
これこそとっとと魔法で直しておけばいいのに、と悪態をつきながら本来の用事がある生徒会室に向かった。
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