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先んじられれば人の制するところになるわ
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「此度のことは、ひとえにコリアンダー公爵閣下の常軌を逸した行為が原因の混乱であり、非は全てコリアンダー公爵閣下にあり、パイイ大公閣下にはありません。どうか、コリアンダー公爵閣下には、正当なお裁きをを。しかれども、高等法院で大々的に裁かれると国内の不安もたかまりましょう。どうか、国王陛下御自ら、叱責と処分を断行されることがよろしいかと。このまま放置されていては、パパイ大公閣下の不満が爆発してしまい、大変なことになりましょう。コリアンダー公爵家程度であれば、かりに暴発しても比較にならないかと。」
こんなことを国王陛下に言上したのは、カーキ公爵、ゼハンプリュの父親である。まったく娘可愛さのあまり、大公様の、多分、要請と圧力で、大公様自ら、こんなことを言いだすと不味いから、第三者、客観的な立場からの者の発言として演出しようとしたのね、きっと。
カーキ公爵は、保守派の巨魁だから、微温的ながらも一貫して進歩的政策を進める国王陛下、ミカエル様とは馬があわないのよね、もともと。それでも、結構金儲けでもやりてのカーキ公爵は、他方面に投資をしたりして、大体は成功させているから、経済の発展、社会の動向もわからないことはないのよね。ゼハンプリュに似た、怖くなるほど、のオーラ、と端正な顔立ち、力が漲っている感じの引き締まった中背の、この人は、内心では疑問も湧いていたでしょうね。
「コリアンダー公爵とコリアンダー公爵家はいいとしてもだ、ピール公爵家もいるんだぞ。そのようにうまくいくまい。」
国王陛下の言葉は、想定問答とうり。
「しかし、ピール公爵は、コリアンダー公爵とは結婚なっさってはおりません。全てコリアンダー公爵の思い上がりの結果であり・・・、」
と、困った挙句、それを言いだしてくる始末。
「ゼハンプリュはどうなるのか? 公爵はまさか、大公閣下に、彼女を側室にして、ピール公爵デュマを正妻として迎えさせるつもりなのではないだろうね。」
と国王陛下が指摘した。これも事前に想定問答の練習をしてきたことよ。でも、国王陛下、ミカエル様もなかなかうまく応対するようになった、と感心したわ。王妃ガマリアは、政治には口出しはしない、お淑やかな、慎み深い王妃を演じているわ。実際、公の場所で彼女はしゃしゃり出ることはないし、発言もしないようにしているけど、いつでも。そして、不安そうに二人のやり取りを見ていたわ。そして、言葉に詰まるカーキ公爵。話によると、愛人ならともかく、公式な妻として自分の娘以外の女を迎え入れるなど、しかも田舎者の馬鹿力女など言語道断とか言ったとか・・・あんの糞おやじが。カーキ公爵家の方が元々地方からの新参者で、ピール公爵家、コリアンダー公爵家はカーキ公爵家は政争を勝ち上がって地位を上げるのを脇に、政争を嫌って、その場から離れた経緯があるのよね。
え?カーキ公爵と国王陛下とのやり取りがよくわかるのはどうしてかって?じっくりと、すっかり見ちゃっているのよね。王宮には隠し扉は、隠し部屋がいくつもあるのよね。その一室を、王の間、謁見の間にある、借り受けて、サムロとともに一部始終を見ているというわけ。声も、特殊な配管があって、よく聞こえてくるのよね。この部屋の目的、もともとの、が分かるというもの。でも、のぞき窓が小さいものだから、サムロと二人で見ると、体をずっと密着しているから、なんか・・・彼の息も少し荒くなっているし、指先の動きも怪しくなってきた。とはいうものの、カーキ公爵もさすがに娘がないがしろにされるようであり、娘が二人妻となり寵愛を競い合わなければならない状態にはしたくなかったから、その後は言葉が少なくなって、竜頭蛇尾のように会見は終わってしまった。政治力をいろいろな方法で駆使し、その影響力が強いカーキ公爵だけど、公式には役職などにはついていないから、延々と国王陛下と話をしているわけにはいかないのだ。ほどなくして会見は終わり、疲れた表情のカーキ公爵は退席したわ。ミカエル様、国王陛下はその倍は疲れた表情だったけど。
「こ、これはピール公爵閣下、コリアンダー公爵閣下ではありませんか?」
隠し扉のもう一つの出口から出て、廊下を迂回して、急ぎ足で、カーキ公爵の先回りをして、あたかもカーキ公爵を待っていたかのようにたたずんでいたわ、私達は。その姿を見て、動揺を抑えながら、カーキ公爵は、疑わしそうに私達を見たわ。
私達は、人のいい田舎者の顔でにっこり笑ってやったわ。
「たまたまこのようなところでお会いできるとは、奇遇ですね。」
「もし、よろしければお話をさせていただけませんか。」
と借りている部屋に案内したわ。
そこで私達は、こんこんと・・・脅しつけたわ。露骨な表現もさることながら、回りくどい表現でも、気概を加えるような表現は使わなかったわ。このまま、パパイ大公様の側にいて、引きずられるのはカーキ公爵家のためにも、カーキ公爵自身にも不利益だと、こんこんと説明してやったわけ。まあ、これで私達の方に寝返るなんて考えてはいないし、期待もしていないけど、迷う、時間を無駄にする・・・それで十分。
パパイ大公様には悪いけれど、大公様が次々くりだしてくる攻勢は、全て遅いの、私達が先んじているのよね。効果は、期待どおりには上がらない。そうなっているけど、大公様はわかっていないと思う。
そして、私達はカーキ公爵との会談を終わったあと、災難に見舞われることになった。もちろん、人為的なものである。
こんなことを国王陛下に言上したのは、カーキ公爵、ゼハンプリュの父親である。まったく娘可愛さのあまり、大公様の、多分、要請と圧力で、大公様自ら、こんなことを言いだすと不味いから、第三者、客観的な立場からの者の発言として演出しようとしたのね、きっと。
カーキ公爵は、保守派の巨魁だから、微温的ながらも一貫して進歩的政策を進める国王陛下、ミカエル様とは馬があわないのよね、もともと。それでも、結構金儲けでもやりてのカーキ公爵は、他方面に投資をしたりして、大体は成功させているから、経済の発展、社会の動向もわからないことはないのよね。ゼハンプリュに似た、怖くなるほど、のオーラ、と端正な顔立ち、力が漲っている感じの引き締まった中背の、この人は、内心では疑問も湧いていたでしょうね。
「コリアンダー公爵とコリアンダー公爵家はいいとしてもだ、ピール公爵家もいるんだぞ。そのようにうまくいくまい。」
国王陛下の言葉は、想定問答とうり。
「しかし、ピール公爵は、コリアンダー公爵とは結婚なっさってはおりません。全てコリアンダー公爵の思い上がりの結果であり・・・、」
と、困った挙句、それを言いだしてくる始末。
「ゼハンプリュはどうなるのか? 公爵はまさか、大公閣下に、彼女を側室にして、ピール公爵デュマを正妻として迎えさせるつもりなのではないだろうね。」
と国王陛下が指摘した。これも事前に想定問答の練習をしてきたことよ。でも、国王陛下、ミカエル様もなかなかうまく応対するようになった、と感心したわ。王妃ガマリアは、政治には口出しはしない、お淑やかな、慎み深い王妃を演じているわ。実際、公の場所で彼女はしゃしゃり出ることはないし、発言もしないようにしているけど、いつでも。そして、不安そうに二人のやり取りを見ていたわ。そして、言葉に詰まるカーキ公爵。話によると、愛人ならともかく、公式な妻として自分の娘以外の女を迎え入れるなど、しかも田舎者の馬鹿力女など言語道断とか言ったとか・・・あんの糞おやじが。カーキ公爵家の方が元々地方からの新参者で、ピール公爵家、コリアンダー公爵家はカーキ公爵家は政争を勝ち上がって地位を上げるのを脇に、政争を嫌って、その場から離れた経緯があるのよね。
え?カーキ公爵と国王陛下とのやり取りがよくわかるのはどうしてかって?じっくりと、すっかり見ちゃっているのよね。王宮には隠し扉は、隠し部屋がいくつもあるのよね。その一室を、王の間、謁見の間にある、借り受けて、サムロとともに一部始終を見ているというわけ。声も、特殊な配管があって、よく聞こえてくるのよね。この部屋の目的、もともとの、が分かるというもの。でも、のぞき窓が小さいものだから、サムロと二人で見ると、体をずっと密着しているから、なんか・・・彼の息も少し荒くなっているし、指先の動きも怪しくなってきた。とはいうものの、カーキ公爵もさすがに娘がないがしろにされるようであり、娘が二人妻となり寵愛を競い合わなければならない状態にはしたくなかったから、その後は言葉が少なくなって、竜頭蛇尾のように会見は終わってしまった。政治力をいろいろな方法で駆使し、その影響力が強いカーキ公爵だけど、公式には役職などにはついていないから、延々と国王陛下と話をしているわけにはいかないのだ。ほどなくして会見は終わり、疲れた表情のカーキ公爵は退席したわ。ミカエル様、国王陛下はその倍は疲れた表情だったけど。
「こ、これはピール公爵閣下、コリアンダー公爵閣下ではありませんか?」
隠し扉のもう一つの出口から出て、廊下を迂回して、急ぎ足で、カーキ公爵の先回りをして、あたかもカーキ公爵を待っていたかのようにたたずんでいたわ、私達は。その姿を見て、動揺を抑えながら、カーキ公爵は、疑わしそうに私達を見たわ。
私達は、人のいい田舎者の顔でにっこり笑ってやったわ。
「たまたまこのようなところでお会いできるとは、奇遇ですね。」
「もし、よろしければお話をさせていただけませんか。」
と借りている部屋に案内したわ。
そこで私達は、こんこんと・・・脅しつけたわ。露骨な表現もさることながら、回りくどい表現でも、気概を加えるような表現は使わなかったわ。このまま、パパイ大公様の側にいて、引きずられるのはカーキ公爵家のためにも、カーキ公爵自身にも不利益だと、こんこんと説明してやったわけ。まあ、これで私達の方に寝返るなんて考えてはいないし、期待もしていないけど、迷う、時間を無駄にする・・・それで十分。
パパイ大公様には悪いけれど、大公様が次々くりだしてくる攻勢は、全て遅いの、私達が先んじているのよね。効果は、期待どおりには上がらない。そうなっているけど、大公様はわかっていないと思う。
そして、私達はカーキ公爵との会談を終わったあと、災難に見舞われることになった。もちろん、人為的なものである。
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