酒涙雨で終わりにしようか?君の心臓を天に捧ぐから。

蘇 陶華

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眷属の王

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振り返れば遠い日。白夜狐と呼ばれた太古にあった国。八百万の神は、全国に、広がり数多の眷属達が使えていた。仕える神が多ければ、眷属も多い訳で、白夜狐もその中の1人だった。まだ、経験値も低く、眷属としては、力も弱かったが、彼を引き立ててくれた巫女がいた。巫女の引き立てを受けて、白夜狐は、能力を開花し、眷属達を束ねる立場まで、上り詰めていった。が、やはり、どこにも、足を救おうとする輩は、いるもので、巫女を気に入った神が居た。眷属である白夜狐が叶う訳がなく、巫女は、その神に輿入れする事になった。白夜狐に心を許している巫女は、輿入れを拒み、白夜狐と海の向こうへと逃げる約束をしていた。待ち合わせの岬に現れたのは、白夜狐などではなく、他の眷属達だった。岬の洞窟に拉致された巫女は、悲嘆にくれ、自死を選択してしまう。白夜狐が、駆けつけた時は、すでに遅かった。他の眷属達に、捕まり、身動きが取れずにいたのに、巫女には、恐れをなして逃げていったと告げられていたのだ。約束を守るため、彼は、巫女の遺灰持ち、追っ手をかわしながら、海を渡る。白夜狐は、何年も、巫女の遺灰を抱え、大陸を横断していった。が、彼女を失った悲しみは、深く、真冬が、白夜狐を見つけた時には、消滅しかかっていた。
「どうか、このままにしてほしい」
いつ消えるか、わからない白夜狐を真冬は、引き留め、再び、八百万の神の国に戻ってきた。国外に逃亡した罪は、重く、何年もの思い罰を受けたが、空虚感の彼は、それをこなし、乗り切った。真冬が支えとなり、眷属の務めを守り続けていった。まさか、大陸を渡っていった巫女が、魔女の魂を抱えて、現れるなんて。
「もう、繰り返さない。そう言いなさい」
真冬は、キリアスも、犀花も、何者か知っていた。
「ようやく、眷属として、ここまで、戻ってきたのよ。」
「こうなってしまったのは、僕が原因だった」
「いいえ。私達は、拒む事は出来なかった。彼女は、おとなしく供物として、輿入れすれば、何も起こらなかった。柊雨。間違った時間を戻す事はできないけど、ただす事はできる。キリアスも犀花も、終わりにしてあげなさい」
白夜狐の姿は、あの神々しい眷属の姿ではなく、一人の冴えない少年の姿に変わっていた。
「どうしても、キリアスと犀花に生きる選択はないというなら」
白夜狐は、手のしている神けんの刃先をそっと胸にあてた。
「僕の生きる時間を、犀花に渡そう。僕は、十分、この時代を生きた。こうして、犀花が、戻ってきてくれたんだ。それで、いい」
「何を言っているの?」
白夜狐は、神剣を刃先を静かに、左胸に沈めた。
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