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命の灯を凍らせよ
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犀花が、意識を失った瞬間、地に沈む白夜狐の姿が目に映った。
「どこかで、見覚えがある」
地に落ちながら、白夜狐の姿は、人間の姿に変容していくのだ。冴えない少年の姿。眼鏡をかけたら、誰かに似ている。そう、あれは、柊雨。
「柊雨!」
叫んだが、声にならなかった。黒衣の騎士は、黙ったまま、阿黄を後ろに乗せると、雲の中を駆け抜けていく。濃い雲の塊と抜ける青い空の中を抜けている間に、聞き慣れた女性の声が研ぎて途切れに聞こえる。争うような声。犀花の目の前では、馬の首から下がったランプの中で、青い炎が揺れている。消えそうになりながら、やっと、燃えている。どこかで、見た事がある。犀花は、炎を見ていると意識がどこかに、飛びそうだった。炎に、意識を奪われそうになりながら、やっと、黒衣の騎士から、解放されたのは、見知らぬ鳥居が幾千も並ぶ山の頂上だった。
「あなたは・・・」
顔を見ようにも、顔はなく、ただのフードと衣服だけが浮かび上がっているだけdった。どこが、顔なのか、わからないのに、フードの中から声だけが響いてくる。
「そこに、横になるように」
山の頂上には、寂れた管理棟があり、そこは、祀られている社の管理棟の様だった。誰もいないのを亜黄が確認すると、中に入り、寝台を見つけると、そこにあった毛布を敷いた。
「少し、休むように」
「休んだ方がいいよ」
亜黄は、犀花に気を使った。
「どうして、あなたは、白夜狐を裏切ったの?」
亜黄は、不満そうな顔をした。
「裏切った訳ではない。最初から、違かっただけ」
思い鎖の音がして黒騎士が壁を背にして、座り込む様子が見えた。太くて長い鎖が、片足の自由を奪うように絡みつき、その先には、鉄の大きな玉が見えた。
「彼は、何者?」
「本当に、忘れたんだね」
亜黄は、寂しい顔をし、黒騎士の側に佇む黒馬に目をやった。首元に下がるランプの中で、青い炎が踊っている。
「綺麗な炎でしょ」
亜黄は、黒馬の側に立ち鼻先を撫でた。
「僕らが、どんな想いでここまで、お連れしたか、覚えてないんですよね」
黒馬の瞳が、犀花を責めていた。
「さっき、何かを思い出しかけたけど」
何か、心の中で、湧き上がってきた思いがあった。だが、白夜狐が地に沈む姿を見た時に、その思いは、沈んでいってしまった。この沈んだ思いは、なんなのか・・・
「僕が、犀花を楽にしてあげるんだよ」
亜黄は、黒馬のランプを取り外し、犀花の目の前に、差し出した。
「さぁ・・・戻っておいで」
青い炎は、燃え上がり、犀花の、体へと吸い込まれていった。
「どこかで、見覚えがある」
地に落ちながら、白夜狐の姿は、人間の姿に変容していくのだ。冴えない少年の姿。眼鏡をかけたら、誰かに似ている。そう、あれは、柊雨。
「柊雨!」
叫んだが、声にならなかった。黒衣の騎士は、黙ったまま、阿黄を後ろに乗せると、雲の中を駆け抜けていく。濃い雲の塊と抜ける青い空の中を抜けている間に、聞き慣れた女性の声が研ぎて途切れに聞こえる。争うような声。犀花の目の前では、馬の首から下がったランプの中で、青い炎が揺れている。消えそうになりながら、やっと、燃えている。どこかで、見た事がある。犀花は、炎を見ていると意識がどこかに、飛びそうだった。炎に、意識を奪われそうになりながら、やっと、黒衣の騎士から、解放されたのは、見知らぬ鳥居が幾千も並ぶ山の頂上だった。
「あなたは・・・」
顔を見ようにも、顔はなく、ただのフードと衣服だけが浮かび上がっているだけdった。どこが、顔なのか、わからないのに、フードの中から声だけが響いてくる。
「そこに、横になるように」
山の頂上には、寂れた管理棟があり、そこは、祀られている社の管理棟の様だった。誰もいないのを亜黄が確認すると、中に入り、寝台を見つけると、そこにあった毛布を敷いた。
「少し、休むように」
「休んだ方がいいよ」
亜黄は、犀花に気を使った。
「どうして、あなたは、白夜狐を裏切ったの?」
亜黄は、不満そうな顔をした。
「裏切った訳ではない。最初から、違かっただけ」
思い鎖の音がして黒騎士が壁を背にして、座り込む様子が見えた。太くて長い鎖が、片足の自由を奪うように絡みつき、その先には、鉄の大きな玉が見えた。
「彼は、何者?」
「本当に、忘れたんだね」
亜黄は、寂しい顔をし、黒騎士の側に佇む黒馬に目をやった。首元に下がるランプの中で、青い炎が踊っている。
「綺麗な炎でしょ」
亜黄は、黒馬の側に立ち鼻先を撫でた。
「僕らが、どんな想いでここまで、お連れしたか、覚えてないんですよね」
黒馬の瞳が、犀花を責めていた。
「さっき、何かを思い出しかけたけど」
何か、心の中で、湧き上がってきた思いがあった。だが、白夜狐が地に沈む姿を見た時に、その思いは、沈んでいってしまった。この沈んだ思いは、なんなのか・・・
「僕が、犀花を楽にしてあげるんだよ」
亜黄は、黒馬のランプを取り外し、犀花の目の前に、差し出した。
「さぁ・・・戻っておいで」
青い炎は、燃え上がり、犀花の、体へと吸い込まれていった。
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