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眷属よ。結界を強めよ!
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白夜狐は、地に落ちる瞬間、犀花の目とあった様な気がした。この地に現れた忌み嫌われる存在。昇華させるべき魂を背負った少女が、この地に現れるのを、誰も知らなかった訳ではなかった。
「この地は選ばれた」
護摩を焚き、五月に行う生誕祭で、主は言った。
「四方を海に囲まれ、八百万神が守る国だからこそ、封印できると考えられ、絹の道を通り運ばれてきた。」
「何を、運んできたのです?」
「炭だよ」
「炭?」
白夜狐は、顔を顰めた。
「元は、骨だ」
主の顔が、護摩壇から昇る炎と重なる。
「はるかに遠い話だ。何処に置いても、災いが絶えない。太陽神の力を借りようとした事もあったが、炭となっても、力を抑える事は出来なかった。大陸に渡っていた私らの先祖が引き受けてきた。」
「わざわざ、災いを運んできたので?」
「四方を海に囲まれ、四神が囲む地は、他になかった。この地には、お前が知っている通り、数多の神が眠り、そして、生まれた地でもある。引き受け、沈めるしかなかった」
護摩焚きは、最高潮に達し、周りの参加している者達は、一心不乱に頭を垂れ、祈りを捧げている。
「なんなんです?」
犀花が背負う者の魂の正体は?と白夜狐は、聞きたかった。
「稀代の魔女と聞いた」
「魔女?」
白夜狐は、笑った。
「ピンと来ないな。おじい」
「我ら的に言えば、邪術を操る者であろう。だが、決して、その程度ではない。炭と化して、力は、収まったが、幾つもの国を混乱に陥らせた」
「混乱に陥るのは、世の常でしょう」
足が痺れたのか、白夜狐は、足を投げ出した。
「見てきたわけではない。誰も。何があったかもわからない。ただ、魔女の魂を受け継いだ少女がいる。それだけでしょ」
足をトントンと、叩き血流を促す。
「俺らは、変わらず、社を守る。代々、変わらず、前神達の眠っている墓陵をね」
「話は、終わっておらん!」
白夜狐が立ち去ろうとしたので、主は、引き留めた。
「無理はするな。敵う相手ではない。変わった予兆があれば、離れるのだ。」
「わかってるよ。おじい」
白夜狐は、振り返る。
「おじいも、気をつけろよ。俺らと、関わるなと言われてるんだろう」
禿頭の後ろまで、赤くなってある時は、白夜狐を見上げる。
「事態が、事態なんだから、手を結ぶ事もあるだろう。まぁ、何か、情報が欲しかったら、また、来るがいい」
主は、護摩焚きをしている屋根裏から、そっと下を覗き込む。下では、延々と、炎が踊り狂い中を赤々と照らし続ける。寺の中で、白夜狐は、梁の上を駆け上がると、主に、小さく頭を下げた。
「また、くるよ」
主は、白夜狐に、微笑むと、また、闇の中へと消えていった。
「この地は選ばれた」
護摩を焚き、五月に行う生誕祭で、主は言った。
「四方を海に囲まれ、八百万神が守る国だからこそ、封印できると考えられ、絹の道を通り運ばれてきた。」
「何を、運んできたのです?」
「炭だよ」
「炭?」
白夜狐は、顔を顰めた。
「元は、骨だ」
主の顔が、護摩壇から昇る炎と重なる。
「はるかに遠い話だ。何処に置いても、災いが絶えない。太陽神の力を借りようとした事もあったが、炭となっても、力を抑える事は出来なかった。大陸に渡っていた私らの先祖が引き受けてきた。」
「わざわざ、災いを運んできたので?」
「四方を海に囲まれ、四神が囲む地は、他になかった。この地には、お前が知っている通り、数多の神が眠り、そして、生まれた地でもある。引き受け、沈めるしかなかった」
護摩焚きは、最高潮に達し、周りの参加している者達は、一心不乱に頭を垂れ、祈りを捧げている。
「なんなんです?」
犀花が背負う者の魂の正体は?と白夜狐は、聞きたかった。
「稀代の魔女と聞いた」
「魔女?」
白夜狐は、笑った。
「ピンと来ないな。おじい」
「我ら的に言えば、邪術を操る者であろう。だが、決して、その程度ではない。炭と化して、力は、収まったが、幾つもの国を混乱に陥らせた」
「混乱に陥るのは、世の常でしょう」
足が痺れたのか、白夜狐は、足を投げ出した。
「見てきたわけではない。誰も。何があったかもわからない。ただ、魔女の魂を受け継いだ少女がいる。それだけでしょ」
足をトントンと、叩き血流を促す。
「俺らは、変わらず、社を守る。代々、変わらず、前神達の眠っている墓陵をね」
「話は、終わっておらん!」
白夜狐が立ち去ろうとしたので、主は、引き留めた。
「無理はするな。敵う相手ではない。変わった予兆があれば、離れるのだ。」
「わかってるよ。おじい」
白夜狐は、振り返る。
「おじいも、気をつけろよ。俺らと、関わるなと言われてるんだろう」
禿頭の後ろまで、赤くなってある時は、白夜狐を見上げる。
「事態が、事態なんだから、手を結ぶ事もあるだろう。まぁ、何か、情報が欲しかったら、また、来るがいい」
主は、護摩焚きをしている屋根裏から、そっと下を覗き込む。下では、延々と、炎が踊り狂い中を赤々と照らし続ける。寺の中で、白夜狐は、梁の上を駆け上がると、主に、小さく頭を下げた。
「また、くるよ」
主は、白夜狐に、微笑むと、また、闇の中へと消えていった。
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