ガラスの靴は、もう履かない。

蘇 陶華

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彼がいたから、ここまで来れた。

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莉子が救急搬送された頃、綾葉は、架の態度から、何かが起きたと感じていた。お腹の子供は、認知してもらえるとしても、不遇の人生を送るのではないかと、心配していた。自分の生活は、架が、責任を持ってくれるという。優秀なピアニストに育てたいという思いは、自分も架も同じだったが、これからの環境を考えると、難しい事はわかっていた。
「何が、望みなの?」
突然、現れた心陽葉、綾葉に聞いた。
「過去の関係を求めても、架の気持ちは、あなたにないわよ。気づいていた筈」
「そんな事ないわ」
架は、自分との時間を愛しんでいてくれる。お互いを認め合い、レッスンに費やした日々が、自分達を支えている。
「人の気持ちは変わるの。架は、あなたを踏み台にして、自分に合う女性を見つけるの」
自分は、妊婦を相手になんて、酷い事を言うのだろう。心陽葉、思ったが、怒りが湧き起こり止められない。過去の関係を引きずり、架を巻き込んでいる事が許せない。もう、過去の女性なのに。ずるずると関係を続け、子供まで、作った。
「莉子に子供ができないから、あなたの子供を認めたのでしょうけど、周りが、認めるかしら?」
「どういう事ですか?」
「架は、莉子を離さない。それは、そうね。会社の強い後ろ盾ですもの。子供ができないから、あなたの子供を養子として、受け入れたとしても、他の女性が莉子の代わりに、現れたら、どうなのかしら?」
心陽の発言に綾葉の顔色が変わった。
「架に、他の女性ですって?」
「架が、どういう人間なのか、あなたが良く知っているはずよ。自分が傷ついている時は、相手が、傷ついていても、構わない人よ。今、彼がどんな思いでいるか、わかるの?」
綾葉は、次第にお腹が、張ってくるのがわかった。息が荒く、目眩を起こしかけていた。
「子供は、諦めなさい。きっと、幸せになれない。あなたには、あなたにあった、生活があるはず」
「あなたは、どうなの?」
「私は、架に近い世界の人間なのよ」
心陽葉、自身に満ち溢れている。
「架の才能は、私が伸ばしてみせる。誰にも、架の人生を壊す事は、許さない」
「架は、自分の手が治る事を望んでいない」
綾葉は、自分だけが、架の思いを理解していると思っていた。心陽に、自分が1番に理解者だと言いたかった。
「どうして、治そうとしないのか、考えた事あるの?」
心陽の言葉は、冷たかった。
「諦める理由が欲しかったのよ。架は、本当は、ピアノが好きなのよ。誰も、わかっていない。勿論、莉子もね。彼女も、見えていないの。」
これ以上、綾葉と言い争っても、どうにもならない。心陽葉、携帯を取り出すと、綾葉に言った。
「これから、架に逢うの。自信を失っているから、いいタイミングだわ」
「あなた・・・一体、架とは、どういう?」
心陽は、笑った。
「昔は、彼が居たから、頑張れた・・・。これからも、そうしたいのよ」
お腹が張って、跪く、綾葉を鼻で笑って、心陽は、ヒールを鳴らしながら去っていった
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