うりふたつ

片喰 一歌

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メイカイ

メイカイ【5】

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「じゃあ、あなたはどうして……」

「ちょっと無理言って我儘を通してもらってさ」

「我儘?」

「そう。……ねえ。俺が死んでから、こっちではちょうど半年くらい?」

「そうですね。そのくらいです」

 彼が亡くなったのは、桜が散って少しした頃だった。今年は、花火の音も金木犀の香りも、すべて私をすり抜けていってしまったような気がする。

 彼を喪った傷が癒えないまま、ずっと春に囚われていた私は、季節の移ろいに胸を躍らせることも出来ずに秋を迎えたのだろう。

「人間界と冥界は時間の流れが違ってね。正確にはわからないけど、こっちでの半年は向こうの三年くらいに相当するかなあ。とにかく結構長い間、俺は死神として働いてるんだよ。これって……神助けに相当するよね」

「……つまり、あなたは冥界神に恩を着せた?」

「その通り! だけど、ちょっと人聞きが悪いなあ。結果としてはそうなったけど、俺の願い事を叶えてくれようとしたのはハーさんのほうだよ」

「つかぬ事をお聞きしますが、ハーさんというのはもしかして」

「そう、さっき出てきたハーデース様のことだよ。本人の希望もあって、ハーさんって呼んでるけど」

 突然飛び出してきた冥界の神のニックネームは、彼が別世界の住人であるという事実を突き付けるには十分すぎる代物だった。せいぜい数十センチ程度の距離も、やけに遠く感じられる。

「ああ……わかる気がします。あなたは、率先して人助けをするくせに、ちっとも見返りを求めないから」

 それを利用する人も恩返しをしたい人も眼中になく、救うだけ救って去っていく残酷なヒーロー。そう考えると、彼は生前から十分に人間離れした存在ではあった。

「ハーさんも似たような事言って聞き出してきたなあ。『君自身には、なにか願いはないのか』って。でも、あくまで雑談って感じで……だから、俺も深く考えずに『付き合っていた恋人の夢を叶えたかった』って答えたけど。『やっぱり他人のことじゃないか』って笑ってたよ。その時は、叶えてくれるような素振りなんて見せなかったけど。今思うと、それも計算のうちだったのかもね」

「戻ってきた理由と経緯についてはわかりました。でも、まだわからないことがあって……。どうしてそんな別人みたいに饒舌なんですか? 昔はもっと無口でしたよね?」

 非現実的であるということを除けば、彼の言をすぐに信じられなかった第一の理由はそれだった。
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