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第3章 おかしな町のおかしな住人
第4話 町名の由来
しおりを挟む「あっは♡♡ これからまた楽しくなりそう!! よろしく、お隣サン♪」
彼女も案理のほうに手を伸ばし、にぱっと笑った。
「ええ、よろしくね」
「そんでそんで? 教えてほしいことって何かな何かな~? あたしに答えられることだったらいいんだけど!」
「ええと。いくつかあるのだけど、まずは町の名前――――というか読み方ね。漢数字の四に尾行の尾、それに都と書くらしいというのはわかったの。でも、私の知識では『しびと』としか読めなくて……」
案理はカナタ宛の郵便物を翳した。そこには彼女の言った通りの地名が表記されている。
「合ってるよ? 四尾都町って書いて、しびとちょう。初めて他の人の口から聞いたけど、確かになかなかぎょっとする語感だね~。でも、話す機会もそんなないし忘れてたな~。書くときめんどくさいだろうし、もっと簡単な地名がよかったな~!」
事も無げに言う彼女は肝が据わっているのか、過度に楽観的な性格なのか。
「やっぱり不気味よね? 不気味というか縁起が悪そうというか……。どうしてこんな響きの名前にしたのかしら…………」
案理の視線はいまだ手元の郵便物にとどまっている。睨み続けていると、字面も響きに負けず劣らず気味の悪いものに思えてくる。
「でもさ、東洋占術のひとつに紫微斗数っていうのもあるし――……って、言うだけじゃ漢字わかんないよね。紫に微妙の微、一斗缶の斗で紫微斗数って書くんだけど」
四本の尾を持つ巨大な魔物が町の地下深くに眠っているのでは――――という非現実的すぎる妄想は、隣人の声によって掻き消された。
「そんな占術が……? あなた、物知りね」
「別に普通だよ~。ていうか、実際、お隣サンの考えてるみたいにあんまいい由来じゃない可能性だってあるし!」
「え」
「元は合戦場だったとかでたくさん死者が出たから、死人町。もしくは、合戦場のすぐそばで遺体を打ち捨てる場所として使われてたから、死人町。――ていうのを漢字だけ変えてみました~とか?」
「…………ありえそうな話ではあるわね。でも、それならそうと、もう少し上手くカモフラージュしてほしいと思わない?」
軽佻浮薄なイメージに反して隣人は自分よりよほど博識かつ聡明であるようだと反省し、案理は居住まいを正した。
「アハハハッ!! それはそう! でもさ、『龍』だの『蛇』だのかっこよさげな字が地名に入ってたら災害の多い土地だ――みたいなの、聞いたことない?」
彼女の挙げた二つの漢字は、かっこいいというよりも中学二年生頃に大体の少年少女が得る感性を基準によしとされるもの――のような気がしなくもなかった。
「それに比べたら親切だと言いたいの? 確かにそうかもしれないけれど……」
「ごめんごめん。怖がらせちゃったね! でも、四尾都町の由来はcivilだったと思うよ? どうしても思いつかなかったとかで。『町×町』とか昔の歌手みたいな命名だよね。悪いとは言わないけど、あたし的にはグッとくるって感じでもないな~」
「町……。私はむしろそれを聞いたら無難でいい名付けのように思えてきたけれど……。だからって最後を『と』に変える必要はなかったでしょうに……! 『る』のままで何がいけなかったというの?」
「あたしに言われても権限ないし、変えらんないけどね~」
(やっぱりこの人……見覚えがある……。この顔、一時期毎日のように見ていたもの…………。だけど、いつ? どこで?)
話している彼女を見て、案理はなにかを思い出しそうになったが、ざわめき出した記憶を集めても集めても次の瞬間には散り散りになってしまう。
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