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第3章 おかしな町のおかしな住人
第3話 永遠の愛を誓う教会
しおりを挟む「話が早くて助かる~! そうそう。そういうのに飢えてたの。いわゆる恋バナ……ってやつ?♡」
「……あら? お友達はいないの?」
彼女の話し方から近所のマダムたちとは懇意にしているのだろうと予想していた案理は、ぱちぱちと音のしそうなまばたきをした。
「いたよ? たくさんいた。でも、今はいない。そんだけ!」
明るく笑って両腕を広げた彼女だが、よく見ると眉毛が下がっていた。
(カナタさんも言っていたけれど、『住人の入れ替わりが激しい』せい?)
「あたしも楽しみにしてるんだ~♪ 『永遠の愛を誓う日』が早く来ないかな~って♡♡ まぁ、ここの人たちどこもラブラブだから、ライバル多すぎていつになるかわかんないんだけどね!」
「永遠の愛を誓う日?」
聞き間違いでなければ、彼女は『ダンナくんと二人暮らし』と証言していたはずだ。案理は結婚を連想させるワードを復唱した。
「うん! この住宅街のド真ん中にさ、教会があんの!」
「教会?」
案理の声が尖る。永遠の愛というワードと教会という場所はともに結婚というイベントを連想させるものの、彼女の話が急に飛躍してしまったように思われたせいだ。
「そう! ……っていっても、挙式上げるのに使われるような普通の教会じゃなくて、なんかすごい教会なわけよ!! そこではね、定期的に行われる住人投票で第一位に選ばれたカップルだけが『永遠の愛を誓う権利』を与えられて、誓いの儀式を開けるんだよ♡♡ 憧れる~♡」
彼女は興奮した様子で捲し立てている。
「…………その儀式というのは結婚式のようなものだと思っていればいいのかしら? でも、結婚式そのものではないから、すでに式を挙げていてもいなくても関係ない……ということ?」
話が読めてきた案理は、確認のためにいくつか質問をした。
(お互いの名前を書いた錠を掛けると永遠に結ばれるとか、一緒に鐘を鳴らすと幸せになれるとか、ああいったパワースポットのようなものがこの町には存在しているということ?)
町の奇妙さは増していく一方だが、普通の女子高生らしい感性を持っている案理は、多少の胡散臭さを感じていたとしてもおまじないやジンクスじみたものにも興味をそそられずにはいられなかった。
「そうそう♡ 理解バッチリじゃん♪ でね、永遠の愛を誓った人たちは別の場所に引っ越すの。ずっとずっと二人で幸せに暮らせるんだってけど、どんな素敵なトコなんだろーね♡♡ リゾート地とか?♡ お隣さんはどんなトコだと思う?♡♡」
「なんとなくわかってきたわ。住人投票というのは、この町でいちばんラブ――……こほん、アツいカップルを決定するためのもので、あなたが仲良くしていた人たちは投票で一位に選ばれて、永遠の愛を誓ったあと、みんな別のところへ行ってしまったのね?」
「ん、そう…………。みんなの幸せはあたしの幸せ……とまでは言えないけど、本当に嬉しいよ? 一位に選ばれたのも素直におめでとうって思ってるし、みんなにも伝えたけどさ、寂しいもんは寂しいんだってば~……」
再び眉を八の字にした彼女は、今にも泣き出しそうな声を出した。
「あなたのお友達の代わりにはなれないけれど、せっかくお隣に住んでいるのだし、私とも仲良くしてくださらない? 私も越してきたばかりで心細いし、教えていただきたいこともあるから」
届かないことはわかっていたが、今度は案理のほうから彼女に手を差し伸べた。
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