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#14〜『愛・補完計画』始動‼︎〜

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「カッコいいですね。斎藤さん」

 斎藤さんの話(斎藤さんの話は前回を見てね)を聞いて、思った事が言葉に出てしまった。

「はぁ? 褒めても何も出ねぇぞ。出るとしたらあっしの笑みだけよ」

「それで十分です」

 実際に出てるのは笑みでは無く、ニヤケ顔だった。実際に話を聞いて、僕にそれが出来るかと言われれば、それはまた別問題。果たして僕に、後輩を守る事が出来るだろうか。守るだけでは無く、教える事も含めて、僕に同じ事が出来るだろうか。

「どうやったら斎藤さんやRUIさんの様に、部下を守る事が出来るのでしょうか」

「それは部下を持った時に考えたら良くね? それこそ人間十人十色だし、あんたにした事が他の人を教える時に通じるかっつったら?」

「まぁ……相手によりますかね」

「でしょ?」

 それもそうだ。『今悩むべき問題かどうか』と、言われると、『部下を守る事が出来るかどうか』と言う問題は、今悩むべき問題では無い。斎藤さんが言う様に、それこそ部下を持った時に悩むべき事で、今、僕が問題視するのは、問題視するべきなのは何か別にある様な気がする。

「それよかさぁ、『部下を守る事が出来る人間になる』って決めちゃった方が現実的じゃね? そっちの方が前向きっしょ」

 それだ。今問題視すべきなのは、事よりも、様にしておく事だ。

「んじゃま、とりあやってみますか」

「はぁ……何をでしょうか?」

「ちょい待ち、今場所取っから」

 斎藤さんはミーティングをする個室の予約を取り、RUIさんに何か話をした後、僕を個室に来るように言い残して席を立った。

「失礼します」

 10分後、僕は個室の前に立ち、ノックをした後部屋に入る。

 普段は会議用に机が並べられていたが、今は全て壁際に寄せられ、2脚の椅子が向かい合わせに並べられている。

 部屋の中にはRUIさんもいた。斎藤さんと何やら話している。

「あぁ、来たし。おつ~」

「お疲れ様です。あの……一体何が始まるのでしょうか?」

「んと、今からあんたが将来的にどうなりたいかを、ここにいるあっしと、ルイルイが全力でサポートをするって言う企画」

「はぁ……」

 僕には斎藤さんが言った事の意味がよく分からなかった。

「つまりはこう言う事です。安達さんが『想い描く理想の自分』と、『現実の自分』とのギャップを洗い出し、理想の自分に近づけるように、私と、キラさんがサポートしよう。と、言う事です。理想の自分に近づくのはエネルギーが必要です。それに加え、『自分を変えよう』と、一人で頑張っても時間がかかりますし、それに『変わっていく自分』に気が付かず、途中で挫折してしまうのが殆どです。なので今日から、私達はチームとして、安達さんの成長をサポートします」

 すかさずRUIさんがフォローに入る。斎藤さんが言った2、3行の説明では意味がわからなかったが、ここまで説明されてやっと主旨が見えてきた。

「あんがとルイルイ。じゃさ、チーム名何にする?」

 それ必要? チーム名必要?

「ん~、そうですねぇ。今の安達さんを『子猫』として、『子猫育成プロジェクト』と言うのはどうでしょう? 略して『コネプロ』」

 なんだかコネでプロ入りした人みたいな言い方だな。それにそのネーミングには、色々問題がありそうだ。

「こう言うのは? 安達の理想を『神』として、それを引きずり降ろそうって訳っしょ? ならさ、『神降ろしプロジェクト』略して『神プロ』」

 今度は凄く大層なネーミングがブッ込まれて来た。

 なんだ『神降ろしプロジェクト』って‼︎ 宗教か何かか⁉︎ オカルト番組で立ち上がりそうな企画だな‼︎ 絶対見るわその番組‼︎

「安達は? なんかねぇの?」

「はぁ……」

 お二人の様な挑戦的なネーミングは思い付きませんが。

「AI……AI(安達勇)補完計画」

「……ギリギリじゃね」

「凄く大きな計画ですね。カッコいいです」

 その後、少し改良を加え、ネーミングが決定した。

 その名も『愛・補完計画』。

 テンションが上がった人間の思考に恐ろしさを感じつつ、僕の成長計画が始動した。
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