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#15〜将来の夢は特に無いです〜
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「では、プロジェクト名『愛・補完計画』の内容を決めて行きましょう」
「ウィーっす」
「安達さん。将来の夢はありますか?」
急に恥ずかしいお題のフリが来た。将来の夢? 考えた事も無い。小さい時は『正義の味方』とか、『ゲームクリエイター』など色々考えていたのだが、今は何も考えていない。
「はぁ……特に無いです」
とでも答えるしか無いだろう。本当に何も無い。夢も無ければ希望もない。あるのは自分に対しての絶望だけ。
待てよ、希望の対義語が絶望なら希望を持っていなければ絶望はしないのではないか? 何故希望を持ていないのに絶望はある? 対義語って、コインの表と裏みたいなものだろ? 表と裏、どちらかでも持っていなければ、それはコイン自体を持っていない事になるのでは無いのか?
「安達さん?」
「あ、はい」
RUIさんが不思議そうに僕を見ている。どうやらまた考えにふけっていてしまった様だ。
「安達さん。何を考えていたのですか?」
「何を……と、言いますと?」
「あんたさぁ、時々ボーッとすんじゃん? それって、何か考えてる時っしょ? 脳の全リソースを考えている事に持ってかれてっから、ボーッとするんじゃね?」
「はぁ……」
まぁ、確かにその通りなのだが。何を考えていたのかと尋ねられれば、何を考えていたのだろうかと自分でも思う。
「その考えていた事を少しでも話して頂ければ、私達も安達さんの事をもっと知れると思うのです」
「だから遠慮なく話してみ?」
話せと言われても……
「私の予想ですが、今考えていた事は、先程私が質問をした『将来の夢』についてでは無いでしょうか?」
当たらずも遠からず、と言ったところか。正確にはそこから派生して、希望と絶望について考えていました。
「『将来の夢は特に無い』と、安達さんは仰いましたよね? その後に考え事をするとなると、思い当たる夢があるのでは? 例えば、過去に持っていた夢について、とか」
本当に感が良いと言うか、思考を読むと言うか。凄い人だ。いや、女神か。
「過去に思い描いていた夢があるなら、教えていただけますか? ちなみにですが、私の子供の時に描いていた夢は『プリキュアになる』でした」
そんな恥ずかしい事をさらりと暴露してしまうとは……RUIさんのメンタルは鋼で出来ているのだろうか。
「マジで⁉︎ あっしもプリキュアになりたかった⁉︎」
「本当ですか⁉︎ 奇遇ですね⁉︎」
女性二人で盛り上がった。僕は置いてけぼり感を半端なく感じつつ、さらりと恥ずかしいと思ってしまう事を暴露する二人が、とても凄い様にも感じた。
「で、安達の小さい時の夢は何?」
「は……?」
突然のキラーパス。キラさんだけに、殺しに来るには得意なのか? 話さないと本当に殺されそうだ。
「せ……正義の味方です」
「良いじゃん⁉︎ 正義の味方‼︎ 良い夢持ってんじゃん‼︎」
「そうですね。素晴らしい夢だと思います。話して下さり、ありがとうございます」
ほ、褒められた。男なら、一度は夢見る正義の味方。成長すればする程、知識を入れれば入れる程、その夢は薄れ、到達不可能な『夢物語』になる。『正義の味方』は、現実をまだ受け止められていない、子供の戯言だと僕は思う。
「その『正義の味方』を、将来の夢として掲げて行きましょう」
「え……ちょ、ちょっと待ってください⁉︎」
「どうかしましたか? 何か問題でもありますか?」
あるに決まっているでしょう⁉︎ 問題しか無いですよ⁉︎
「は、恥ずかしいですよ‼︎ 大の大人が『正義の味方』を目指すなんて⁉︎」
「大の大人が本気で目指す方が、カッコいいとあっしは思うけど?」
「そうですよ。その夢を叶える為に、私達は何でも協力します。もし、その夢を笑う人がいたのなら、私が成敗してくれます」
「でも『正義の味方』なんてフワフワした事、どうやって目指すと言うのです⁉︎ そもそも『正義』とは何ですか⁉︎」
「それはこれから決めて行く事です」
「……誰が?」
「安達さんと、私達が」
「じゃま、とっとと始めんべ」
斎藤さんが、ホワイトボードを僕の前に運ぶ。黒のマーカーで『愛・補完計画第1章、正義とは』と書いた。
どうやら本気で『正義』について議論するらしい。安達さんが、僕の目を見てニッコリと笑う。不安いっぱいの僕を見透かす様に笑い、こう言った。
「では初めましょう『正義』について、とことん話し合いましょう」
「ウィーっす」
「安達さん。将来の夢はありますか?」
急に恥ずかしいお題のフリが来た。将来の夢? 考えた事も無い。小さい時は『正義の味方』とか、『ゲームクリエイター』など色々考えていたのだが、今は何も考えていない。
「はぁ……特に無いです」
とでも答えるしか無いだろう。本当に何も無い。夢も無ければ希望もない。あるのは自分に対しての絶望だけ。
待てよ、希望の対義語が絶望なら希望を持っていなければ絶望はしないのではないか? 何故希望を持ていないのに絶望はある? 対義語って、コインの表と裏みたいなものだろ? 表と裏、どちらかでも持っていなければ、それはコイン自体を持っていない事になるのでは無いのか?
「安達さん?」
「あ、はい」
RUIさんが不思議そうに僕を見ている。どうやらまた考えにふけっていてしまった様だ。
「安達さん。何を考えていたのですか?」
「何を……と、言いますと?」
「あんたさぁ、時々ボーッとすんじゃん? それって、何か考えてる時っしょ? 脳の全リソースを考えている事に持ってかれてっから、ボーッとするんじゃね?」
「はぁ……」
まぁ、確かにその通りなのだが。何を考えていたのかと尋ねられれば、何を考えていたのだろうかと自分でも思う。
「その考えていた事を少しでも話して頂ければ、私達も安達さんの事をもっと知れると思うのです」
「だから遠慮なく話してみ?」
話せと言われても……
「私の予想ですが、今考えていた事は、先程私が質問をした『将来の夢』についてでは無いでしょうか?」
当たらずも遠からず、と言ったところか。正確にはそこから派生して、希望と絶望について考えていました。
「『将来の夢は特に無い』と、安達さんは仰いましたよね? その後に考え事をするとなると、思い当たる夢があるのでは? 例えば、過去に持っていた夢について、とか」
本当に感が良いと言うか、思考を読むと言うか。凄い人だ。いや、女神か。
「過去に思い描いていた夢があるなら、教えていただけますか? ちなみにですが、私の子供の時に描いていた夢は『プリキュアになる』でした」
そんな恥ずかしい事をさらりと暴露してしまうとは……RUIさんのメンタルは鋼で出来ているのだろうか。
「マジで⁉︎ あっしもプリキュアになりたかった⁉︎」
「本当ですか⁉︎ 奇遇ですね⁉︎」
女性二人で盛り上がった。僕は置いてけぼり感を半端なく感じつつ、さらりと恥ずかしいと思ってしまう事を暴露する二人が、とても凄い様にも感じた。
「で、安達の小さい時の夢は何?」
「は……?」
突然のキラーパス。キラさんだけに、殺しに来るには得意なのか? 話さないと本当に殺されそうだ。
「せ……正義の味方です」
「良いじゃん⁉︎ 正義の味方‼︎ 良い夢持ってんじゃん‼︎」
「そうですね。素晴らしい夢だと思います。話して下さり、ありがとうございます」
ほ、褒められた。男なら、一度は夢見る正義の味方。成長すればする程、知識を入れれば入れる程、その夢は薄れ、到達不可能な『夢物語』になる。『正義の味方』は、現実をまだ受け止められていない、子供の戯言だと僕は思う。
「その『正義の味方』を、将来の夢として掲げて行きましょう」
「え……ちょ、ちょっと待ってください⁉︎」
「どうかしましたか? 何か問題でもありますか?」
あるに決まっているでしょう⁉︎ 問題しか無いですよ⁉︎
「は、恥ずかしいですよ‼︎ 大の大人が『正義の味方』を目指すなんて⁉︎」
「大の大人が本気で目指す方が、カッコいいとあっしは思うけど?」
「そうですよ。その夢を叶える為に、私達は何でも協力します。もし、その夢を笑う人がいたのなら、私が成敗してくれます」
「でも『正義の味方』なんてフワフワした事、どうやって目指すと言うのです⁉︎ そもそも『正義』とは何ですか⁉︎」
「それはこれから決めて行く事です」
「……誰が?」
「安達さんと、私達が」
「じゃま、とっとと始めんべ」
斎藤さんが、ホワイトボードを僕の前に運ぶ。黒のマーカーで『愛・補完計画第1章、正義とは』と書いた。
どうやら本気で『正義』について議論するらしい。安達さんが、僕の目を見てニッコリと笑う。不安いっぱいの僕を見透かす様に笑い、こう言った。
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