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#9〜ギャル上司、仕事を語る〜
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「えーと、トリア何から話す?」
いや、僕に聞かれても困るっす。自分の席に座り、隣が僕の上司『斎藤 季楽里』さん。斎藤さんはギャルでした。僕はギャルと関わっていい思い出がありません。オタクだと言われ、迫害された思い出しかありません。以上。
「って言うか~、安達……だっけ? あんたさぁ、口あんの? 話してくんなきゃ話進まないんだけど。あぁ~……マジメンディ」
足を組む斎藤さん。スカートが短いから、足を組めばスカートの中が見えそうになるんですけど。こんな肉食系の女子とコミュニケーションとか無理っすよ。
「あんたさぁ、ギャルに嫌な思い出でもあんの? 超テン下げじゃん」
バイブスって何だ⁉︎ もう異国の言葉すぎて意味がわかりません‼︎ お手上げっす‼︎
「あのさぁ~、誤解なきよう話すけど、あっしとそこいらのギャルを一緒にしないでくれる? あっしは、いや、他のギャルもか……中途半端にギャルやってるやつと違ってさぁ、プライド持ってギャルやってんだわ。それ傷つけられたらソクサレなんで」
意味がわからん。せめて理解できる言葉で話してくれ。だから僕は、お得意十八番で答えるしかなかった。
「はぁ……」
「おっ‼︎ 言葉発した‼︎ マジウケる‼︎ ワラー‼︎」
話しただけでウケられても。しかも話してないからね。『はぁ』としか言ってないから。息を吐いたら声が出ちゃったレベルだよ。
「ほら‼︎ 他に話してみ‼︎ この勢いでドンドン話してみ‼︎ あっしがすべて受け止めてやんよ‼︎」
なんかもう凄くグイグイ来る‼︎ こちとら病み上がりだよ‼︎ なんなら現在進行形で病んでるよ‼︎ そんな話せないよ、虫の息だよ‼︎ 鳴き声は『はぁ~』オンリーだよ‼︎
「ん~……ムズイ……攻略ムズイ……ちょっと待ってな‼︎」
そう言って、斎藤さんは席を立ち、RUIさんの元へ歩いて行った。
何だ、何を話すんだ? 僕の悪口か⁉︎ 出勤初日でトラブルは嫌だぞ。立ち直れないぞ。悪いのは僕だけど。
「よし‼︎ じゃあ行くべ‼︎ ほらあんたも、ぼーっとしてないで行くよ‼︎」
斎藤さんが僕の手を掴み、引きずる様に歩いて行く。
「ちょ……ど、どこ行くんですか……?」
あまりの急展開に普通に話せた。
「い・い・と・こ・ろ。はーと」
マジか。僕はギャルゲーの主人公か。なぜこうもフラグが立つ。良いところってどこだ⁉︎ 気になるぞ⁉︎
とまぁ、斎藤さんに連れられて、着いたのはコンサートホールだった。フラグは当然立っていない。
「ここで音楽でも聞いて、リラックスしよ。あんた緊張しすぎだっつーの」
「え、いい……のでしょうか……」
「良いに決まってんじゃん‼︎ ルイルイの許可ももらったし~、さ‼︎ 入るべ‼︎」
また僕の手を引っ張り中に入る。本日のコンサート演目は、楽団によるクラッシックだった。
静かに中に入り、二人で並んで音楽を聴く。これって仕事なのかと、いささか不安に感じ始めた時、斎藤さんが小声で話しかけて来た。
「コンサートってさ、色んな楽器あんじゃん? これってどれが欠けても良い音楽にならない訳。これって組織も同じでさ、誰が欠けても良い仕事が出来ない訳よ。ここまでオケ?」
僕は小さく頷いた。
「んでさ、それぞれ出す音がちげーから、指揮者が上手くコントロールする訳。うちらの部署で言うと、その役目がルイルイね。オケ?」
僕は小さく頷いた。
「ルイルイはあんなのほほんキャラだけどさ、天才なんだわ。空気読むことっつうか、相手を見極める事っつーか、その辺が天才的なんだわ。対してあっしは天才じゃねぇ。相手の事も、自分の事も話して行きたいし話して欲しい。じゃなきゃ良い音楽はできねーだろ?」
僕は小さく頷いた。
「組織っつー集団の中でさ、自分がどの役割で、どれだけ出来るかなんてもんはやってみないとわかんないじゃん? だからそこまで気を張らなくてもさ、一人で音楽やってる訳じゃねーんだし、一人で大きな音だそうとしなくても、皆んなで綺麗な音を出す方が大切なんじゃね? だからさ、あんたの事、もっと教えてよ。あっしの事も覚えてくれよ。先ずは二人で音を奏でようぜ。ディオだよ、ディオ」
「斎藤さん。それを言うならデュオです」
「あははは、その調子」
僕の横にいる人は、見た目は派手でチャラいけど、とても心に染みる言葉をくれた。
コンサートの終了が夕方だったので、今日はそのまま解散し、帰宅した。
明日から少しずつでも慣れていこうと思う。
いや、僕に聞かれても困るっす。自分の席に座り、隣が僕の上司『斎藤 季楽里』さん。斎藤さんはギャルでした。僕はギャルと関わっていい思い出がありません。オタクだと言われ、迫害された思い出しかありません。以上。
「って言うか~、安達……だっけ? あんたさぁ、口あんの? 話してくんなきゃ話進まないんだけど。あぁ~……マジメンディ」
足を組む斎藤さん。スカートが短いから、足を組めばスカートの中が見えそうになるんですけど。こんな肉食系の女子とコミュニケーションとか無理っすよ。
「あんたさぁ、ギャルに嫌な思い出でもあんの? 超テン下げじゃん」
バイブスって何だ⁉︎ もう異国の言葉すぎて意味がわかりません‼︎ お手上げっす‼︎
「あのさぁ~、誤解なきよう話すけど、あっしとそこいらのギャルを一緒にしないでくれる? あっしは、いや、他のギャルもか……中途半端にギャルやってるやつと違ってさぁ、プライド持ってギャルやってんだわ。それ傷つけられたらソクサレなんで」
意味がわからん。せめて理解できる言葉で話してくれ。だから僕は、お得意十八番で答えるしかなかった。
「はぁ……」
「おっ‼︎ 言葉発した‼︎ マジウケる‼︎ ワラー‼︎」
話しただけでウケられても。しかも話してないからね。『はぁ』としか言ってないから。息を吐いたら声が出ちゃったレベルだよ。
「ほら‼︎ 他に話してみ‼︎ この勢いでドンドン話してみ‼︎ あっしがすべて受け止めてやんよ‼︎」
なんかもう凄くグイグイ来る‼︎ こちとら病み上がりだよ‼︎ なんなら現在進行形で病んでるよ‼︎ そんな話せないよ、虫の息だよ‼︎ 鳴き声は『はぁ~』オンリーだよ‼︎
「ん~……ムズイ……攻略ムズイ……ちょっと待ってな‼︎」
そう言って、斎藤さんは席を立ち、RUIさんの元へ歩いて行った。
何だ、何を話すんだ? 僕の悪口か⁉︎ 出勤初日でトラブルは嫌だぞ。立ち直れないぞ。悪いのは僕だけど。
「よし‼︎ じゃあ行くべ‼︎ ほらあんたも、ぼーっとしてないで行くよ‼︎」
斎藤さんが僕の手を掴み、引きずる様に歩いて行く。
「ちょ……ど、どこ行くんですか……?」
あまりの急展開に普通に話せた。
「い・い・と・こ・ろ。はーと」
マジか。僕はギャルゲーの主人公か。なぜこうもフラグが立つ。良いところってどこだ⁉︎ 気になるぞ⁉︎
とまぁ、斎藤さんに連れられて、着いたのはコンサートホールだった。フラグは当然立っていない。
「ここで音楽でも聞いて、リラックスしよ。あんた緊張しすぎだっつーの」
「え、いい……のでしょうか……」
「良いに決まってんじゃん‼︎ ルイルイの許可ももらったし~、さ‼︎ 入るべ‼︎」
また僕の手を引っ張り中に入る。本日のコンサート演目は、楽団によるクラッシックだった。
静かに中に入り、二人で並んで音楽を聴く。これって仕事なのかと、いささか不安に感じ始めた時、斎藤さんが小声で話しかけて来た。
「コンサートってさ、色んな楽器あんじゃん? これってどれが欠けても良い音楽にならない訳。これって組織も同じでさ、誰が欠けても良い仕事が出来ない訳よ。ここまでオケ?」
僕は小さく頷いた。
「んでさ、それぞれ出す音がちげーから、指揮者が上手くコントロールする訳。うちらの部署で言うと、その役目がルイルイね。オケ?」
僕は小さく頷いた。
「ルイルイはあんなのほほんキャラだけどさ、天才なんだわ。空気読むことっつうか、相手を見極める事っつーか、その辺が天才的なんだわ。対してあっしは天才じゃねぇ。相手の事も、自分の事も話して行きたいし話して欲しい。じゃなきゃ良い音楽はできねーだろ?」
僕は小さく頷いた。
「組織っつー集団の中でさ、自分がどの役割で、どれだけ出来るかなんてもんはやってみないとわかんないじゃん? だからそこまで気を張らなくてもさ、一人で音楽やってる訳じゃねーんだし、一人で大きな音だそうとしなくても、皆んなで綺麗な音を出す方が大切なんじゃね? だからさ、あんたの事、もっと教えてよ。あっしの事も覚えてくれよ。先ずは二人で音を奏でようぜ。ディオだよ、ディオ」
「斎藤さん。それを言うならデュオです」
「あははは、その調子」
僕の横にいる人は、見た目は派手でチャラいけど、とても心に染みる言葉をくれた。
コンサートの終了が夕方だったので、今日はそのまま解散し、帰宅した。
明日から少しずつでも慣れていこうと思う。
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