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第一章 今、天使って言った?
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☆
「萌ちゃん、本当に私、気分が悪いとかじゃなくて……」
心配させちゃったかな。
そう思いながら私の手を握る萌ちゃんに声をかけると、急に萌ちゃんが振り向いた。
「美優ちゃん、響子先生の髪が短くなっていること、気づいたの?」
「え? 萌ちゃんも気づいていたの?」
「あらあ、本当にそうなんだ……」
萌ちゃんは、何か考え込むように首をかしげた。
「萌ちゃん?」
「美優ちゃんには私の力、効きにくいのかな。ちょっと、いい?」
そういうと萌ちゃんは、熱を測る時みたいにしてこつんと額を合わせた。
と、合わせた額から、白い光があふれるのが目のはしに見えた。電気のあかりとは違う、もっと柔らかい光。額のあたりから見えているのに、全然まぶしくない。
「え、なに、これ? 萌ちゃん、どうやったの?」
額を離した萌ちゃんに聞くと、萌ちゃんは目を見開いた。
「まあ」
「何が? ねえ萌ちゃん、今何したの? 光ってなかった?」
「これは、私の手には負えないなあ……」
謎めいたことを言った萌ちゃんが、ふらり、と倒れかける。
「萌ちゃん?!」
その体を支えると、萌ちゃんは顔をあげて笑った。
「ごめんね、少し寄りかからせて。それより、どこかへ行きましょう。ここにいて先生に見つかったらいけないから」
私は、そっと様子をうかがうけど、第二音楽室から聞こえてくるピアノの音は途切れずに続いている。授業中の校舎内は、しん、としていた。
私は、まだ少しふらつく萌ちゃんと一緒に、よたよたと歩いてその場を離れた。
☆
「えーと、なんて言えばいいのかな」
校舎の中から見えない裏庭のすみっこに二人で腰を下ろすと、萌ちゃんは言葉を探すようにゆっくりと話しはじめた。
「私ね、こう見えても子供じゃないの」
「は?」
「こんななりだけどね、実は私、産まれたのはもう何十年も前なのよ」
「な……なんじゅうねん?!」
「美優ちゃん、声大きい」
萌ちゃんは、思わず叫んでしまった私の口をあわててふさぐ。
そうだ、今はまだ授業中だった。
私は、ひそひそと、でもちょっと興奮して言った。
「嘘?! だってどう見たって……」
「うん。コドモよね。でも本当なの。私、天使なんだ」
はい?
「……今、天使って言った?」
「そう」
ちちち、と何かの鳥の声が聞こえる。私たちのいる中庭は、ぽかぽかとお日様があたたかい。
……えーっと。
「萌ちゃんが、天使?」
こくりとうなずく萌ちゃんの顔はとてもまじめで、私をからかっているようには見えなかった。
「天使って、あの、白い翼があって神様のお使いの……?」
「そうね。だいたいはそれで間違ってはいないわ」
はにかむように笑う萌ちゃんは、いつも通りの優しい萌ちゃんだった。
「萌ちゃん、本当に私、気分が悪いとかじゃなくて……」
心配させちゃったかな。
そう思いながら私の手を握る萌ちゃんに声をかけると、急に萌ちゃんが振り向いた。
「美優ちゃん、響子先生の髪が短くなっていること、気づいたの?」
「え? 萌ちゃんも気づいていたの?」
「あらあ、本当にそうなんだ……」
萌ちゃんは、何か考え込むように首をかしげた。
「萌ちゃん?」
「美優ちゃんには私の力、効きにくいのかな。ちょっと、いい?」
そういうと萌ちゃんは、熱を測る時みたいにしてこつんと額を合わせた。
と、合わせた額から、白い光があふれるのが目のはしに見えた。電気のあかりとは違う、もっと柔らかい光。額のあたりから見えているのに、全然まぶしくない。
「え、なに、これ? 萌ちゃん、どうやったの?」
額を離した萌ちゃんに聞くと、萌ちゃんは目を見開いた。
「まあ」
「何が? ねえ萌ちゃん、今何したの? 光ってなかった?」
「これは、私の手には負えないなあ……」
謎めいたことを言った萌ちゃんが、ふらり、と倒れかける。
「萌ちゃん?!」
その体を支えると、萌ちゃんは顔をあげて笑った。
「ごめんね、少し寄りかからせて。それより、どこかへ行きましょう。ここにいて先生に見つかったらいけないから」
私は、そっと様子をうかがうけど、第二音楽室から聞こえてくるピアノの音は途切れずに続いている。授業中の校舎内は、しん、としていた。
私は、まだ少しふらつく萌ちゃんと一緒に、よたよたと歩いてその場を離れた。
☆
「えーと、なんて言えばいいのかな」
校舎の中から見えない裏庭のすみっこに二人で腰を下ろすと、萌ちゃんは言葉を探すようにゆっくりと話しはじめた。
「私ね、こう見えても子供じゃないの」
「は?」
「こんななりだけどね、実は私、産まれたのはもう何十年も前なのよ」
「な……なんじゅうねん?!」
「美優ちゃん、声大きい」
萌ちゃんは、思わず叫んでしまった私の口をあわててふさぐ。
そうだ、今はまだ授業中だった。
私は、ひそひそと、でもちょっと興奮して言った。
「嘘?! だってどう見たって……」
「うん。コドモよね。でも本当なの。私、天使なんだ」
はい?
「……今、天使って言った?」
「そう」
ちちち、と何かの鳥の声が聞こえる。私たちのいる中庭は、ぽかぽかとお日様があたたかい。
……えーっと。
「萌ちゃんが、天使?」
こくりとうなずく萌ちゃんの顔はとてもまじめで、私をからかっているようには見えなかった。
「天使って、あの、白い翼があって神様のお使いの……?」
「そうね。だいたいはそれで間違ってはいないわ」
はにかむように笑う萌ちゃんは、いつも通りの優しい萌ちゃんだった。
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